テープドライブ事業が成功するも
赤字のHDD部門をMaxtorに売却
DECのディスクストレージ部門の買収後、社内組織はHDDG(Hard Disk Drive Group)とDLSG(DLT&Storage Systems Group)に分けられたのだが、このHDDGとDSLGの売上(Revenue)と営業利益(Net income)をインターネットアーカイブから探した結果がこちらである。
| HDDGとDSLGの売上と営業利益 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| HDDG | DSLG | |||||
| 年号 | 売上 | 営業利益 | 売上 | 営業利益 | ||
| 1995年 | 32億7998万ドル | 8168万ドル | ||||
| 1996年 | 40億8716万ドル | -1億2543万ドル | ||||
| 1997年 | 45億9144万ドル | 4105万ドル | 7億2801万ドル | ??? | ||
| 1998年 | 46億1544万ドル | -5286万ドル | 11億8980万ドル | 2億2366万ドル | ||
| 1999年 | 35億9932万ドル | -1億5253万ドル | 13億 274万ドル | 1億2299万ドル | ||
| 1999年 | 33億1158万ドル | -1億 477万ドル | 14億1888万ドル | 1億4561万ドル | ||
1995/1996年のDLSGの業績が不明で、また1997年の損益も当該ページがアーカイブから落ちているのでわからないのだが、全般的に売上そのものはDSLGの方がずっと小さいものの、利益ははるかに多く、HDDGの赤字をDSLGで埋めるような構図になっている。
さすがにこうなってくると、「そもそもHDDビジネスを継続する意味があるのか?」という議論になることは避けられない。最終的に2001年、QuantumはHDDGをMaxtorに売却する。より正確に言えば、Quantum CorporationからDSLGを分離、残った会社とMaxrotが合併した形だ。
合併は株式交換(Quantum1株とMaxtor1.52株を交換)で実施され、売却金額は23億ドル相当とされた。存続会社はMaxtorで、実質MaxtorがQuantumのHDDGを買収したことになる。
この合併後に、残ったDSLGが改めてQuantum Corporationと名称を変更して現在に至る。こちらはその後もさまざまなテープドライブ関連メーカーを買収してラインナップを充実させつつ、現在も健在である。
2016年の売上げは4億7600万ドルと、2000年頃に比べるとだいぶ減ってはいるが、HDDなどに比べれば新規参入の障壁は高く、バックアップの必要性がなくならない限りは需要があるため、まだまだ生き残っていけると思われる。
Quantumの怪作
Bigfoot
Quantumと言うと、1996年に投入されたBigfootの名前を挙げる人が多い。3.5インチHDDが全盛になった時期に、低価格向けにあえて5.25インチのプラッタを利用した怪作である。
画像の出典は、“Wikipedia”
考え方としては、低価格向けHDDを作るのにあえて5.25インチプラッタを利用することで、容量を増やせることと、速度を稼げるメリットがある。
前者は、記憶容量はプラッタの面積にほぼ比例するので、理論上では2.25倍、実質的にも2倍近くまで1枚のプラッタの記憶容量を増やせる。この結果、同じ記憶容量を確保するのに、3.5インチの場合よりも少ない枚数のプラッタで構成できるので低価格化できる。
後者は、アクセス速度(読み書きの速度)は周速度に比例するので、プラッタを大型化すると回転数が同じなら周速度はその分向上する。逆に言えば周速度を一定に保つと、回転数を落とせるので、その分モーターの能力が低い低価格のものを使える。
もちろん回転数を落とすとアクセス時間(正確には回転待ち時間)が増えるので実効性能は落ちるのだが、低価格向けにはプラッタとヘッドを減らせるのが効果的、という判断である。
ところが実際はどうだったか?というと、まずそもそも3.5インチが全盛(もう5.25インチのHDDはほとんど壊滅していた)時期なので、5.25インチのプラッタそのものがすでに高くつくことになった。
また外側のケースは当然大型化した分価格が若干上がり、結局ヘッドの数を減らせるくらいしかメリットがなかった。
少なくとも市販価格では3.5インチの低価格HDDとほとんど変わらない。というより、あまりに品薄すぎてわずかながらプレミアが付く有様で、全然安くなかった。おまけに製品そのものの入荷があまり多くなかった。結果、「怪作」呼ばわりされて終わってしまった。
あるいは、Fireballシリーズは一部の製品のコントローラーのチップが焼けるという不具合があって「なるほどそれでFireballなのか」と酷い言われようだった。
筆者が昔お守りをしていたSPARCワークステーションに入っていたSCSI版のProDriveは、だいぶモーターがいかれかかっていたようで、一度動きだすとちゃんと動くのだが、最初のスピンアップができない状況だった。
そこで電源とSCSIケーブルをつないで通電状態のまま円を描くように振り回し続けると、なにかのはずみでスピンドルが回り、その後正常にブートするという、そういう稀有な体験もさせてもらった。
そういうQuantumなのだが、不思議といまだに悪い印象は一切なく、その意味ではMaxtorに買収されてラインナップがほとんど消えてしまったのはやはり残念である。

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