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待機電力ゼロを実現する新たなコンピューターの実現へ

産総研、室温で動作する全単結晶TMR素子を開発

2016年09月20日 19時14分更新

文● 行正和義 編集/ASCII.jp

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開発したTMR素子断面の電子顕微鏡写真

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は9月20日、新たに単結晶のみからなるトンネル磁気抵抗(TMR)素子を開発したと発表した。

 磁場を加えることで電流の流れを制御するTMR素子は、現在HDDの超高密度化に利用されているが、不揮発性メモリーといった用途に利用するにはさらに大きなMR比(抵抗の変化率)を持つことが重要となる。高いMR比を示す半導体の組み合わせとしては、強磁性半導体を電極に、非磁性半導体を障壁層とした全単結晶TMR素子が有望とされていた。しかし全単結晶TMR素子は極超低温では高いMR比を示すものの室温ではMR比がほぼゼロとなり利用できなかった。

今回開発した単結晶Ga2O3膜作製方法 

 産総研・スピントロニクス研究センターでは、独自に開発した成膜プロセスを用い、単結晶の鉄の上に酸化マグネシウム膜、その上に単結晶の単結晶酸化ガリウムの膜を成長させた。この手法で用いられたTMR素子は室温でも92%と極めて高い値となり、トランジスターとしての利用が可能となる。産総研では、今後ゲート構造を設計・動作実証を行ない、縦型スピン電界効果型トランジスターの開発を目指すという。

 産総研では、縦型スピン電界効果型トランジスターによるTMR素子は待機電力ゼロで動作するノーマリー・オフ・コンピューターの重要な技術となり、コンピューターをはじめとしたIT機器の大幅な省電力化が期待できるとしている。

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