さくらの熱量チャレンジ 第3回
「さくらのIoT Platform」の進んできた1年をキーパーソンに聞く
小笠原、江草、山口の3人が語った「さくらのIoT」の軌跡と奇跡
2016年09月09日 08時00分更新
Webエンジニアも組み込みエンジニアも容易にIoTの開発が可能になる「さくらのIoT Platform」。現在、α版の実証実験を進めている小笠原治さん、江草陽太さん、山口亮介さんの3人に、さくらのIoT Platformが生まれた背景とそのチームメイキングについて聞いた。
DMM.makeでの経験と田中社長との妄想で生まれたさくらのIoT Platform
さくらのIoT Platformは、DMM.makeを立ち上げた小笠原さんがさくらインターネットに出戻るところからスタートしている。さくらの創業者としてインターネット畑で育ってきた小笠原さんは、長らくDMM.makeでハードウェアの事業をやってきたが、多くのハードウェアの人がネット嫌いであることに気づく。一方で、ABBALabでいろんなハードウェアスタートアップに投資してきたので、さくらのIoT Platformみたいなものが求められていたことも理解していたという。「彼らの製品が売れれば、さくらのサービスが売れることもわかっていた。その前提があったので、サービスをやりたいと社長の田中さんにお願いしたんです。だって彼らは困ってるんですもん」(小笠原さん)。
田中さんとはもともと「モノのTwitterっていいですよね」とか、「データセンターのすべてをAPI化しようぜ」みたいな話で盛り上がり、基本的な思想は合致していた。 小笠原さんは、2015年3月に行なわれたさくらの全体会議で、ABBALabの活動を全社に話し、そこから田中社長とIoT事業についてディスカッションを続け、事業コンセプトを作る。 「田中さんとはいろいろ悪巧みをしたんですよ。1分間に1つユーザーがデータを預けてくれたら、1人あたり年間52万個のデータが生まれる。そうすると、たとえば2040年の東京では年間6.4兆個のデータが生まれることになる。データ預けるのに0.01円もらえたら、640億円の事業が生まれる。高いかと思いきや、月額500円以下程度。自分の大事なデータを安心して預けられる情報銀行みたいなものができたら、1人月額500円もらえて、東京だけで売り上げ5倍になるじゃんみたいな仮説ができた」(小笠原さん)
さらにさくらのサーバーを使ってくれるユーザーが、預かった血糖値のデータから今の健康情報を1円で提供できたら、こういう預けていただいたデータを処理して価値を生んで買っていただく事業が出てきたら、100倍の6.4兆円の産業が生まれるかもねとか。「ランニングシューズとかから得たデータを使って、今100g痩せたよって言われたら、もう少し走ろうかなって思うじゃないですか。データのセンシングと価値を生むフィードバック。しかもスマホを介在させないで、操作なしでデータをとれる世界がいいよねと」(小笠原さん)と2人の妄想は拡がる。
絵に描いた餅をリアルにする江草さんとの出会い
こうした妄想は昨年の夏以降、具体的なサービスへと昇華していく。「この2人だと結局しゃべって終わり。これでは単なる妄想なので、デザイナーに入ってもらって、まずは事業イメージの絵を描いてもらった」(小笠原さん)。これがモノ、ネットワーク、モノゴトの3つのマトリクスでサービスコンセプトを示す現在のさくらのIoT Platformの原型となる。
次に入ったのはプロトタイプを実証できるエンジニア。この段階では、当時さくらインターネットの研究所に所属していた松本直人さんが入り、とにかく動くことを検証した。そして、最後に経営企画室の2人に入ってもらって、事業計画を起案した。「当時のフェローってなんの権限もなくて、予算0円の人です。権限を持って戻ってきたようなイメージが社内にあったんですけど、これは大きな間違い。創業者の1人だった影響力をフル活用しただけ(笑)」(小笠原さん)とのこと。この結果、昨年の10月の役員会でさくらのIoT Platformの事業計画が正式に通ったという。
予算が付いたことで、実際に絵に描いた餅をリアルにする人材が必要になった。そこで見つかったのが現執行役員の江草陽太さんだ。「あっ、いると(笑)。本当、IoTの全部の課題を理解しているエンジニアの江草さんに出会えたのは奇跡。まさに衝撃だったんです」と小笠原さんは振り返る。「絵を作っている頃から、IoTをやるらしいとは聞いていたのですが、組み込みや通信モジュールをやらないとできないじゃんと思っていた」ということで小笠原さんと意気投合した江草さんは、さくらのIoTの開発を一手に担うことになる。
そして、同じくエンジニアとして駆り出されてきたのが、アルバイトとして江草さんといっしょに働いていた関根隆信さんだ。江草さんは「すごく優秀で、適応が速い。こういう技術があるよと伝えると、そこからの成長が速いんです」と評する。そして小笠原さんは「関根君のいやな顔が、僕はいやじゃないんですよ(笑)。『それやるのー?』という顔をするんですけど、やるのわかっているから、いやじゃない」と語る。
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