従来比2倍のメモリ容量、フィンテックなど“新世代”のミッションクリティカル需要を狙う
HPE、ミッションクリティカルx86サーバー「Superdome X」新機種
2016年09月01日 07時00分更新
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は8月30日、99.999%の可用性を実現するミッションクリティカルシステム向けx86サーバー「HPE Integrity Superdome X」の新モデルを発売した。1OSに割り当て可能なメモリ搭載容量が従来比2倍の24TBになり、CPU間通信速度は33%向上している。
Superdome Xは、高い信頼性と可用性が求められるミッションクリティカル用途向けに、2014年12月に国内発売されたx86サーバープラットフォーム。18Uサイズの筐体に最大8台のサーバーブレードを搭載しており、複数のブレードを統合して1システムとして(1OS配下で)扱うこともできる。このとき、複数のブレードをまたぐCPU間通信は、独自チップセット「XNC2」とクロスバーファブリックを介して高速に処理される。
HPEが古くから商用UNIX領域で培ってきたミッションクリティカルシステム向けのRAS(高信頼/可用性/保守性)機能が盛り込まれているのが大きな特徴で、特別なスキルを必要とせず、LinuxやWindows Serverといった汎用的なサーバーOSを「99.999%(年間停止時間約6分)」の高い可用性で稼働させることができる。
今回発売された新モデルでは、新しいサーバーブレードとクロスバーファブリックモジュールが採用されている。
新しいサーバーブレードは、「インテル Xeon E7 v4ファミリー」CPUを1ブレードあたり2つ搭載する。これにより、1システムに割り当て可能なコア数は最大384コア、またメモリ容量は最大24TBとなった。従来モデル比で、コア数は約1.3倍、メモリ容量は2倍となり、「SAP HANA」などのインメモリアプリケーション分野で、より大容量のメモリを必要とするワークロードもカバーしている。
また新しいクロスバーファブリックモジュールにより、ブレード1枚あたりのクロスバー帯域は100GB/秒と、従来比で約33%向上している。これにより、同一システムをより少ないCPUコア数で稼働させることが可能になり、TCO削減に貢献する。
HPE Integrity Superdome Xの最小構成価格(税抜)は、2851万7000円から。
フィンテックやオンラインゲームなど「新世代のミッションクリティカル」に適合
発表会では、2014年発売以後のSuperdome X導入顧客における実績や市場戦略、特徴的な機能のデモなどが披露された。
そもそも一昨年、HPEがSuperdome Xを投入した背景には、金融機関や通信事業者、運輸業者などが必要としたミッションクリティカルシステムとは異なる「新世代のミッションクリティカルシステム」市場が拡大している、という実態があった。新世代のミッションクリティカルシステムとは、具体的にはフィンテック、オンラインゲーム、IoT 2.0(機械が自律制御を行うIoTシステム)、SNSといったシステムを指している。
こうした新世代のミッションクリティカルシステムにおいても高い可用性が求められるが、その一方で、携わるエンジニアの世代が若くメインフレームや商用UNIXシステムなどの知識や運用経験がない、インフラ専門のエンジニアに人員を割けない、事業展開スピードが速いといった点で“旧世代”との違いがあった。こうした課題を解消すべく、「誰でも使える」ミッションクリティカルインフラ製品として投入されたのがSuperdome Xだった。
HPEでAPACJ ミッションクリティカルサーバー テクノロジーエバンジェリストを務める山中伸吾氏は、「新しいミッションクリティカル市場が、特にアジア市場で立ち上がっている」と現状を語った。山中氏によると、アジア市場においては昨年で2割、今年は4割ほどが“新世代”のシステム構築を目的としてSuperdome Xを導入しているという。「日本市場も同様の傾向がある」(山中氏)。
一方で、従来メインフレームやUNIX機がカバーしてきた“旧世代”システムの出荷は減少傾向にある。山中氏は「近年は下げ止まっている」としながらも、その落ち込みを“新世代”システムがカバーしてくれるものと期待を述べ、実際にかなりカバーし始めていると語った。