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一部の人間のデータの抱え込みは機会損失

顧客データの分析を一変させるAdobe Analytics

2016年08月04日 12時15分更新

文● 吉田ヒロ

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 アドビ システムズは8月3日、東京・丸ノ内にあるJPタワーホール&カンファレンスにて「Adobe Marketing Cloud Data Driven Forum 2016」を開催した。

 最初に登壇したのは同社の代表取締役社長である佐分利ユージン氏。

アドビ システムズ代表取締役社長である佐分利ユージン氏

 「Adobe Marketing Cloud」は、Photoshopに代表される「Adobe Creative Cloud」、Acrobatに代表される「Adobe Document Cloud」と並ぶ、同社の3本柱のCloudソリューションの一角を占める製品群。オンラインストアなどの顧客体験の向上や顧客データ分析などに役立つツールがそろっている。

 佐分利氏はそれを踏まえ、「デジタル時代の課題とチャンス」として顧客データの扱いが非常に重要であると解説。

 例えば、Adobe Marketing Cloudの顧客の1社で、米国のメジャーリーグ各球団の出資によって設立されたMLBアドバンスド・メディア社は、スマホアプリでこれまでにないユーザー体験を提供しているとのこと。オンラインでチケットを購入して席に着くと顧客情報に応じて座席のアップグレードが通知されたり、球場に空席があると試合経過とともにチケットの料金が下がったり――など、臨機応変なシステムの構築が可能になるとのこと。

 さらに、魅力的な顧客体験を構成する4大要素として「説得力がある」「パーソナライズされている」「役に立つ」「いつでもどこでも」を挙げた。

 正確な情報が掲載されており、閲覧するユーザーの属性や知識レベルに応じて訴求内容を変え、その結果としてユーザーにとって役立つ情報が得られ、PCやスマホ、タブレット端末など閲覧する端末を選ばない——というのが重要のようだ。

 現在、国内でAdobe Marketing Cloudの製品群を活用している企業として、三越伊勢丹ホールディングス、KDDI、全日本空輸(ANA)、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(TSUTAYA)、トレンドマイクロ——などを紹介した。

 海外の顧客である米マスターカード社のビデオでの紹介もあった。同社では、従来は15〜20カ所に分散していた顧客データなどを探し当てて収集する作業に時間を費やしていたが、現在ではデータの収集ではなく分析により多くの時間を掛けられるようになったことを強調していた。データを深く分析することで、よりパーソナライズされた的確な情報を顧客に届けられ、購入意欲も高められる。

 続いて、米アドビシステムズ社でAdobe Analyticsマーケティング担当のシニアディレクターを務めるジェフ・アレン氏が登壇。

米アドビシステムズ社 Adobe Analyticsマーケティング担当シニアディレクターを務めるジェフ・アレン氏

 Adobe Marketing Cloudには、ウェブサイト分析ツールの「Adobe Analytics」を筆頭に、パーソナライズされたクロスチャネルのキャンペーンの設計・運営に役立つ「Adobe Campaign」、ウェブサイトやモバイルアプリのA/Bテストなどが可能な「Adobe Target」、顧客情報のプロファイル構築に使う「Adobe Audience Manager」などの8種類のツールがあり、さまざまなユーザー情報を分析するのに役立つこと紹介。

 アレン氏は、オンラインストアでの体験をクルマの運転にたとえて分析手順を解説した。クルマの速度などに相当するのがサイトの訪問者数やPV、クリック率であるとし、目的に達成するためには、どのようなことが必要かを紹介。オンラインショップの場合、訪問者やPVを伸ばし購入につなげるには、購入までの経路の見直し、ユーザー別にカスタマイズされた詳しい情報(セグメント情報)などが重要であることを強調していた。そのうえ、ユーザーが購入にいたらなかった原因を究明するために、A/BテストやUXのボトルネックを洗い出す作業が必要であることも紹介。そして、ユーザー属性に応じた商品の提案や次回につなげる施策などが必要であると紹介。

 会員登録がないユーザーがサイトにアクセスしても、得られる情報はアクセスした時間と利用しているウェブブラウザーの種別、どこからウェブサイトにアクセスしてきたかというおおまかな内容だけ。ユーザー別にパーソナライズされた情報を提供するには不十分で、性別も趣味もわからない。しかし、Facebookの情報、リアル店舗での購入情報、アンケート情報、他社が収集したデータなどが組み合わさると、各個人の趣味などもウェブサイト側が把握できるようになり、より最適化された情報を提供できるとしている。

 アレン氏は、社内での一部の人間による、データの囲い込みに注意するべきだとも発言。社内でデータを分析できるスタッフが少ないと、集めた顧客データを共有することが難しくなり、結果的に有効活用できないケースが多いとのこと。ここで「Adobe Analytics」などの分析ツールを使うことで、データをさまざまな方向から多角的に分析できるというメリットを解説した。

 アドビは今年に入り、Adobe Marketing Cloud関連のセミナーやイベント、発表会などを積極的に開いている。今後も、8月24日には東京・大崎にあるゲートシティ大崎にて「デジタル時代を勝ち抜く組織×テクノロジー×戦略~ビジネスリーダーが考えるこれからの顧客価値と企業価値の最大化~」、9月6日には「顧客体験の視点で考えるモバイルアプリ戦略の必要性」とそれぞれ題した「Adobe Digital Marketing Seminar」を実施予定だ。また、10月4、5日には、東京・赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京にて「Adobe Digital Marketing Symposium 2016」を開催。5日の午前中の基調講演には、米アドビ社の社長兼CEOであるシャンタヌ・ナラヤン氏が登壇予定だ。

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