車載用統計解析エンジンで異常な通信を検知「Anomaly Detection for Automotive」
シマンテック、自動車のIoTセキュリティ対策製品を拡充
2016年07月28日 07時00分更新
シマンテックは7月27日、自動車向けIoTセキュリティの新製品「Symantec Anomaly Detection for Automotive」の販売を開始した。機械学習技術と車載用統計解析エンジンで車両内部の“異常な通信”を検知し、サイバー攻撃を早期発見するソリューションを自動車メーカー向けに提供する。
自動車の制御ネットワークを車載システムで監視、異常な通信を検知
“コネクテッドカー”など近年の自動車では、中央の電子制御ユニット(ヘッドユニット)とエンジンやハンドルなどの制御ユニット(ECU)、各個所のセンサーなどが互いに通信するための「コントローラーエリアネットワーク(CAN)」を備えている。
Anomaly Detection for Automotiveは、このCANを流れるパケットを監視、統計解析することで、異常な通信(アノーマリー)の発生を検知し、自動車へのサイバー攻撃を早期発見するソリューションだ。アノーマリーの判断基準となる正常状態(ベースライン)は、機械学習技術を用いて自動学習する仕組みのため、どの自動車メーカーのプロトコルにも適用できる。
正常状態の機械学習は、自動車メーカー側で行う。ある1つの車種に対して数時間程度、テスト走行や走行シミュレーションを行うことで学習が完了し、あとはその学習済みデータ(統計モデル)をコピーして、出荷する車両の統計解析エンジンに与えるだけでよい。この統計解析エンジンは、車載システム向けに、少ないリソース消費量(CPU/メモリ)で動作する。
異常を検知した場合は、その情報を車載コントローラーだけでなく、クラウド上のバックエンドシステムに送ることもできる。これにより自動車メーカーでは、自社が提供するユーザー向けサービスを通じてアラートを出すなど、セキュリティ情報を活用したサービスを展開できる。さらに、シマンテックが持つ大規模な脅威データベース/インテリジェンスとの組み合わせも可能だ。
Anomaly Detection for Automotiveの標準価格(税抜)は、自動車1台(1ヘッドユニット)あたり2000円となっている。
IoT特有の事情に合わせたセキュリティソリューションが必要
発表会では、すでに提供しているソリューションもあわせ、シマンテックの自動車向けIoTセキュリティソリューションの全体像が紹介された。
シマンテック 執行役員 CTO兼セールスエンジニアリング本部長の坂尻浩孝氏は、自動車IoTには「通信の保護」「デバイスの保護」「データの保護」「システムの掌握」という“4つのセキュリティセグメント”があると説明した。さらにこの4つを、自動車の内部環境(IoTの領域)と外部環境(ITの領域)に分け、それぞれでセキュリティ対策を考えているという。
「このうち“外部環境”については、従来のITシステム向けセキュリティ技術やソリューションがそのまま活用できる。一方、内部環境はIoT特有の事情があり、新たな技術やソリューションが必要だ」(坂尻氏)
たとえば、“内部環境×通信の保護”に対して、シマンテックは「Symantec Managed PKI for IoT」というソリューションを提供している。デバイスに組み込む電子証明書(デバイス証明書)を発行することで、デバイスのなりすましを防ぐ「認証」、デバイスからの通信内容の改竄を防ぐ「電子署名」、そして通信内容を秘匿化する「暗号化」の機能が提供できる。
同様に“内部環境×デバイス保護”については「Symantec Embedded Serucity:Critical Systems Protection(SES:CSP)」というソリューションが提供中だ。これは、ホワイトリストやサンドボックス、ホスト型IPSなどによって、不正なプログラム、不正なふるまいの実行を禁止し、システムを保護するものだ。
このほかにも、シマンテックでは不正プログラムを排除するコードサイニング(コード署名)のソリューションも提供する。今回発売したAnomaly Detectionは、“内部環境×システムの掌握”に該当するセキュリティソリューションだ。
坂尻氏は、セキュリティは「全体」をカバーしなければ、最も弱い部分(いわゆるWeakest Link)から破られてしまうと語り、エンドデバイスである自動車からデータセンターまでを包括的にカバーできる点が、IoTセキュリティソリューションにおけるシマンテックの強みだとまとめた。
また、今回は自動車向けにAnomaly Detectionを提供開始したが、機械学習に基づくアノーマリー検知技術は他の領域にも適用できることから、今後は産業プラントなどへの展開も考えているとしている。