任天堂とNiantecが開発したARゲームアプリ「ポケモンGO」が、世界中で一大旋風を巻き起こしている。米国では公開後1週間で利用者は2600万人に、利用者数では「Google Maps」をすでに超えているという説もあるほどの勢いもさながら、さまざまな関連事件も報じられている。ポケモンGOが世界に与えているインパクトについてあらためてまとめる。
Androidスマホでの普及率はすでに1割超え
7月6日に米国でのローンチ以来、新聞やウェブなどメディアはポケモンGOのヒットを告げるニュースを一斉に報じている。米国では2日目にして、Androidスマートフォンの5%にインストールされたとする(SumilarWeb)。これにともないサーバーの負荷が増し、アクセスできないという事態も一部ユーザーの間で報告されたようだ。
ローンチ直後、公式には米国、そしてオーストラリア、ニュージーランドの3ヵ国でしか入手できないにもかかわらず、ダウンロード数の伸びは、過去最大のベストセラーゲーム「Clash Royale」を上回るペースだという。世界的に提供地域を拡大し、ソーシャルやプレイヤー同士の対決などの機能強化により、年10億ドルも可能だとApp Annieは予想していた。
その後は欧州にも拡大、ドイツ、英国などで提供を開始した。もっとも、VPN経由で米国やオーストラリアなどからすでにアプリを入手していたユーザーも多かったようだ。18日に配信を開始したばかりのカナダでは、すでにiTunesのゲームカテゴリでトップになっていた。
SimilarWebは公開から4日が経過した7月11日のデータを公開し、米国のAndroidスマートフォンユーザーの普及率が10.8%に達したと報告した。公開後1週間たらずで「Candy Crush Saga」「Viper」などの人気アプリやゲームを上回ったことになる。
ダウンロードだけでなく、実際の利用も活発なようだ。日単位のアクティブユーザーという点では、「Facebook Messenger」「Instagram」「WhatsApp」のFacebook御三家、「Snapchat」(それぞれ22.1%、13.1%、10%、8.3%)に続く堂々の5位(5.9%)、「Twitter」(7位)の4.1%を超えている。
ポケモンGOにあやかる警察、強盗、キャリア
Pokemon GoはPokemon GOはAR(拡張現実)を利用したモバイルアプリだ。位置情報とカメラ機能を利用し、カメラに写る現実世界にいるポケモンを探して集めるゲーム。開発したのは、「Ingress」で知られるGoogleのスピンオフベンチャーNianticだ。
Ingressをプレイしたことがある方なら、なんとなくルールは想像できるだろう。ポケモンの近くにくるとバイブレーションで知らせてくれ、Poke Ballで捕まえる。観光スポットなどにはPokeStopとして、Poke Ballやアイテムを集めることができる仕掛けもある。ダウンロードは無料だが、その後のアイテム購入は有料。ゲームの通貨であるPokeCoinを利用して、特別なアイテムを解除できる。PokeCoinは有料で、100枚だと1.39カナダドル(約113円)となっている。
ポケモンを探しまわるゲーマーたちにまつわる怪現象(?)や珍事件も多数報告されている。たとえば先週末、米ニューヨークのセントラルパークに、Vaporeon(シャワーズ)が現ると聞きつけて大衆が詰め掛けたとか。
英国では、マンチェスターの警察が署内にCharizard(リザードン)が現れたとFacebookで報告、「稀なキャラクターなので限定数しか招待できない。下のリストに名前があれば、あなたはラッキーだ。すぐに警察署に来てCharizardを捕まえて」と記した。リストにはマンチェスター警察が指名手配中の人が並んでいたとのこと(さすがに狙い通りに逮捕につながるわけがなかったようだ)。多くが報道しているように、米ミズーリ州ではPokemon Goゲーマーを狙った強盗事件として、ビーコンをつかっておびき寄せたという。
定番の展開として、マルウェアを含むPokemon Goも登場している。McAfeeは公開から4日目でマルウェア発見を報告している(http://blogs.mcafee.jp/mcafeeblog/2016/07/pokmon-go-8a6c.html)。
このほかデータとバッテリーの浪費を懸念する向きも多い。ファンサイトのPokemon Go Databaseによると、1時間で利用する平均のデータ通信量は2〜8MB程度。200人のスマートフォンユーザーのデータを分析したU getは、1セッションの平均時間は175秒(約3分)、その間約300KBを利用していたと報告している。バッテリーについては、1時間利用でのバッテリー消耗が28.2%としている。これはGoogle Mapsの20.5%、Youtubeの17.4%を上回るものだ。
ポケモンGO人気にあやかろうと、”Uncarrier”(脱キャリア)をスローガンに大胆なマーケティングと料金プラン導入で知られるT-Mobile USは、”T-Mobile Tuesday”という顧客サービス(アプリをダウンロードした顧客に週替わりで無料サービスを提供する)で、ポケモンGOのデータ利用を無制限でタダにすることを発表した。さらに配車サービスLyftを利用してPokeStopなどのポイントに行く場合、最大15ドルまで無料で利用できるなどのオファーもある。
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