REFLECTIONS、TrondheimSolistene

ノルウエーと言えば2L、2Lと言えば室内管弦楽団、トロンドハイム・ソロイスツだ。数々の傑作をものしているこのコンビの最新作品がベンジャミン・ブリテン、ヴォーン・ウィリアムズ、イーゴリ・ストラヴィンスキーの作品。マイナーだが、演奏の素晴らしさと、音の臨場感と鮮烈さで傑作アルバムに仕立てるのが2Lの技だ。
『フランク・ブリッジの主題による変奏曲』(VariationsonaThemeofFrankBridge)のフランク・ブリッジとは、ブリテンの恩師としてのみ名を残すイギリスの作曲家。かつてはほとんど無名だったが近年、再評価の機運だ。ヴォーン・ウィリアムズは『グリーンスリーヴスによる幻想曲(FantasiaonGreensleeves)』がたいへん有名な同じくイギリスの作曲家。『トマス・タリスの主題による幻想曲』(FantasiaonaThemeofThomasTallis)は出世作。原曲は1567年につくられた。
ビバ!2Lと叫びたくなる、2L以外に誰ができようかという高音質だ。2Lのレコーディングは直接音と間接音のバランスが絶妙。そもそも高品位な直接音に、これまた高品位で情報量豊かに芳醇な間接音が加わることにより、より音場的に高品位になるという響きの加速連鎖こそが2Lの真骨頂だ。本来ならばサラウンド環境で再生すべきだが、2チャンネルで聴いても、音場的なスペクタクルは十分に感じることができる。北欧的というと常套句的だが、透明感と静謐さは、他の追随を許さない美質だ。
2015年7-8月、ノルウエーの石造りのSelbuChurch(1150年建立)で、DXD(352.8kHz/24bit)録音。オリジナルは12.1チャンネル。ここから、リニアPCMは88.2kHz/24bitから352.8kHz/24bitまで、DSDは2.8MHz、5.6MHz、11.2MHz、それにMQAStudio352.8kHz/24bitも、さらに2チャンネル、5.1チャンネルもリニアPCMとドルビーTrueHD……と多様なフォーマットを作成している。さすがは2Lだ。
FLAC:88.2kHz/24bit、FLAC:176.4kHz/24bit、DSF:2.8MHz/1bit、DSF」5.6MHz/1bit、5.1chWAV:96kHz/24bit、5.1chWAV:192kHz/24bit、5.1chFLAC:96kHz/24bit、5.1chFLAC:192kHz/24bit、5.1chDolbyHD:96kHz/24bit、5.1chDolbyHD:192kHz/24bit、DSF:11.2MHz/1bit、FLAC:352.8kHz/24bit、MQAStudio:352.8kHz/24bit
2L、e-onkyomusic
クラプトン新譜はブルージー路線。1曲目、Alabama Woman Blues。ファズを聴かせたブルースギターと、ホンキートンクなピアノに乗ってクラプトンが、ねちっこく、脂っこく歌う。楽器はギター、ピアノ、ベース、ドラムスなどだが、ひとつひとつの音像の立ち方は弱く、全体でひとつの塊として描かれる。ヴォーカルも輪郭を立てずに、イメージ浮きたたせず、全体の音の一員というコンセプトで音作りを行っている。12曲目、I'llBe Seeing Youはピアノに乗るロッカバラード。優しく、語りかけるようなヴォーカルの味わいが渋い。
WAV:192kHz/24bit、FLAC:192kHz/24bit
Polydor、e-onkyomusic
Rhapsody
NikolajHessfeat.MarilynMazur

ニコライ・ヘスはデンマークのピアニスト。本アルバムは19世紀末のデンマーク画家VilhelmHammershoiをテーマにしてヘスが書き下ろした曲が中心だ。1曲目、ボブ・デュランの名曲LayLadyLayのカバー。ピアノの音そのものを素直に録るというより、ピアノという発音体はどこまで、透明に静謐な音が出せるのかにチャレンジしたようなピュアサウンド。
インドの打楽器、タブラとの合奏だが、タブラの低音の持続音に乗って、ジャジイな雰囲気満点の即興が繰り広げられる。常にピアノは音階的、アルペジオ的な音を奏でる。クリヤーに伸びた、繊細なピアノ音だ。3曲目、I Heara Rhapsody。冒頭のピアノ単音の連続で、響きの透明さが十分に分かる。ハーモニーの美が音場に広がる響きの美に転化し、年輪のようにきれいな響きの輪を拡げる。録音、ミックス、マスタリングを手掛けたのはECMの名作で著名なヤン・エリック・コングスハウク。彼のノルウエーはオスロのレインボースタジオにて収録。
WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
Cloud、e-onkyomusic

この連載の記事
-
第89回
AV
最終回、皆さんありがとう!「麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負」ラストを飾るのはこの10作品!! -
第88回
AV
テクノロジーの奇跡感じた音源分離技術、The Beatlesの新アルバムなど〜麻倉怜士推薦音源 -
第87回
AV
静謐だ。ピアノならではの美しさ、オラフソン『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』ほか~麻倉怜士推薦音源 -
第86回
AV
ラフマニノフ生誕150周年、山中千尋、麗しいハイドンほか~麻倉怜士推薦音源 -
第85回
AV
ラフマニノフは艶やかで厚い質感、宮﨑駿監督作品を久石譲が自演~麻倉怜士推薦音源 -
第84回
AV
全員男性の“組員”で構成したアンサンブル、石田組ほか~麻倉怜士推薦音源 -
第83回
AV
いま世界で最も注目を浴びる27歳の指揮者、クラウス・マケラの『春の祭典』ほか~麻倉怜士推薦音源 -
第82回
AV
100万ドルのヴァイオリニスト? フランスの新鋭ルカ・ファウリーシのデビューアルバムほか~麻倉怜士推薦音源 -
第81回
AV
マニアックな選曲で話題を集めた2023年のニューイヤー・コンサートほか~麻倉怜士推薦音源 -
第80回
AV
DSDの名録音を集めたベスト盤など注目録音~麻倉怜士推薦盤 -
第79回
AV
ユーミン万歳! 松任谷由美の50周年記念アルバムほか~麻倉怜士推薦盤 - この連載の一覧へ