4. NASの利用が特に考慮されていないから
iTunesには、他のiTunesとLAN上で楽曲を共有する「ホームシェアリング」という機能がある。DAAPというプロトコルにより実現されているが、基本的にはプロプライエタリな技術であり、世にあるNASのiTunes対応はそのオープンソースによる実装を利用したもの。解析が進んだ結果、互換性は高く安定性もあるが、大っぴらに「ホームシェアリング互換」とはうたえない部分がある。
DAAP互換機能を備えた製品はまだしも、DLNAやSMBといったマルチメディア対応NASとしては基本的なサービスしかないNASの場合、iTunesにとって特別なデバイスとはならない。NAS上にiTunesライブラリを置くことはできるが、ローカルとNASの両方にライブラリを構築しておき必要に応じて統合したり切り替えたり、といった使い方が特に考慮されていないのだ。膨大な楽曲ライブラリを持つ身として、この仕様にはかなり萎える。
5. リッピングの精度に確信を持てないから
一時はCDリッピングをRaspbery Piに切り替えていた筆者だが、最近Macに復帰した。といっても、iTunesではなく、「X Lossless Decoder」というオンラインソフトウェアをもっぱら使用している。
通常、CDドライブはRead時に二重のエラー訂正を行なうが、その処理で解消できないエラーもある(C2エラー)。状態がかんばしくない楽曲CDを読み込む場合、ドライブからのエラー報告を受けたリッピングソフト側はエラー発生箇所を同一データとなるまで繰り返し読み取ることになるが、iTunesの場合リトライの基準/回数が不明確なのだ。
購入から20年以上経過し、いつ読み取れなくなるかわからない、しかも再発が期待できないマイナーなアーティストのCDを大量に抱える身としては、正確に読み取れるかどうかはとても重要。とりあえずリッピングしておこう、で済んだ10年前とは事情がまるで違う。
サードパーティー製品を見渡せば、「Audirvana Plus」や「Roon」など多種多様なフォーマットに対応したミュージックソフトは珍しくない。Apple Musicに誘導したいというAppleの考えは理解できるが、それは主にiOSデバイスの役割なのではないか。FLACやDSDといったハイレゾフォーマットへの対応、AirPlayの帯域拡大、NASとの連携強化といった「自宅でじっくり音楽を聴きたい派」のケアがなければ、他のソフトへの流出は止まらないように思える。そろそろ音楽関連分野へのテコ入れがあっていい時期、6月のWWDCに期待するとしよう。

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