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JAWS-UG中部・北陸勉強会レポート 第1回

初の平日勉強会で役立つ運用ノウハウを共有

JAWS-UG金沢の勉強会は運用にまつわる汗と涙が満載

2016年06月09日 07時00分更新

文● 重森大

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JAWS-UG金沢では1ヶ月ごとにmeetup(飲み会)、土曜日に開催する勉強会、平日に開催する勉強会をローテーションで行なっている。今回は2016年5月12日に開催された第10回となる平日勉強会を取材した。

現場のエンジニアが現場のエンジニアから学べる場に

 今回のテーマはずばり「運用」。システムは順調に動いていて当たり前と思われている場合が多く、四苦八苦して対応してもあまり感謝されない「運用」。できればやりたくないけど、ほっとくわけにはいかない「運用」。みんなはどんな工夫をしているのだろう……そんな疑問にいくつかの答が示された勉強会だった。

 運用という堅いテーマが選ばれた背景には、現場で実際に手を動かしているエンジニアにできるだけ多く集まってもらいたいという思いがあったようだ。「初めての平日開催なので、現場の方が気にしている話題を取り上げ、興味を持ってもらい、会社帰りに気軽に立ち寄ってもらえる会を目指したいと考えた」(JAWS-UG金沢支部 相羽 大輔さん)。

JAWS-UG金沢 相羽 大輔さん

 今回はクラスメソッドの植木和樹さんのセッションがメインとなっており、休憩をはさんで3人のミニセッションが続く構成。いずれも実際にシステム開発や運用に携わっている方々からのプレゼンとあって、中身は実践的なものだ。どのアプリケーションのどの機能をどのように使っているのか、具体的に自身の取り組みが紹介されていた。植木さんのメインセッションは別稿で紹介するため、今回はミニセッションの内容をレポートする。

AWSトラブルシューティング!早期復旧のための心掛け JAWS-UG上越妙高 植木 和樹さん(クラスメソッド)
俺と「AWS外部から観測」 JAWS-UG金沢 加藤 真透さん(PhalanXware)
センターSEがインスタンスの止め忘れを監視してみた JAWS-UG富山 石崎 弘之さん(日本オープンシステムズ)
Zabbix監視と課題 JAWS-UG金沢&富山 松本 雄一郎さん

「AWSサービスの外部監視」(JAWS-UG金沢 加藤 真透さん)

 JAWS-UG金沢の加藤 真透氏のセッションでは、AWSで構築したサービスを外部から監視することの重要性が説かれた。

JAWS-UG金沢 加藤 真透さん

 開発に関わっているメンバーのPCはテストサーバーが見えるように内部DNSを使っていたり管理者メニューを使えるように設定されていることが多いので、別の端末を使ってインターネット経由でサービスをチェックしなければユーザーと同じ目線でのチェックはできないという話。そういえば最近も、某サイトに掲載された広告のリンク先がテストサーバーに設定されていてランディングページにたどり着けないという事案があってネットで話題になった。ああいったミスは恥ずかしいだけではなく、ビジネス的な機会損失やセキュリティリスクにもつながるので、なんとしても避けたいものだ。

「止め忘れ、ダメ絶対」(JAWS-UG富山 石崎さん)

 痛い目を見た実体験からセッションをスタートして会場を沸かせたのは、JAWS-UG富山の石崎 弘之さん。AWSを使い始めた頃にいろいろ試してみたくなり、もっともパワフルな8xlargeインスタンスを作成、止め忘れたまま1週間稼働させてしまったらしい。起動して放置していただけで3万円を支払うことになってしまったのだから、笑いと涙を禁じえない。

JAWS-UG富山の石崎 弘之氏

 やや高い授業料を支払った石崎さんはその経験をもとに、止め忘れに気づける仕組みづくりを考え始めることになる。人間のうっかりを防ぐには自動化しかない。かといって監視のために起動しっぱなしにしておかなければならないインスタンスがあっては本末転倒だ。

 ということで石崎さんはCloudWatchとLamdaを使ったサーバーレスな監視の仕組みを構築したとのこと。起動しっぱなしのインスタンスが見つかると、SNSでメールを送信する。この仕組みの素晴らしいところは、ほとんどの機能が無料範囲内で収まっているため、毎月1円未満の料金でインスタンス監視可能というところだ。3万ヶ月(=2500年)監視を続ければ授業料と同額になってしまうが、おそらく、石崎さんが3万ヶ月この仕組みを使うことはないだろう。だって彼はもう学んだのだから。

「顧客に気づかれる前に障害を検知したい」(JAWS-UG金沢 松本 雄一郎さん)

 JAWS-UG金沢とJAWS-UG富山の両方で活動している松本 雄一郎さんのセッションでもっとも響いたのは、「顧客に気づかれる前に障害を検知したい」という言葉。

JAWS-UG金沢 松本 雄一郎さん

 「顧客からの連絡で障害を知ると、その後の障害対応や交渉の主導権を顧客に握られてしまう。そうならないためには、先に障害を検知して対策とともに顧客にこちらから連絡しなければならない」(松本さん)

 松本さんが勤める会社では顧客よりも早く障害を発見し、できる限り短時間で復旧できるようにするため、すべての顧客のサービスをZabbixで監視しているとのこと。すべてのサービスを統一環境で監視すること自体が、障害の早期発見と復旧時間短縮につながるという。

AWSの広告収入と使用料金を勉強会で公開

 会の最後には、加藤さんがAWSで運用するブログの収支報告が行なわれた。AWSで運用するサービスにAmazonアフィリエイト広告を掲載したら、AWSの運用コストをAmazonから回収できるのではないか。そんな素朴な疑問に答えるために加藤氏はAWSの各種サービスを使ってブログシステムを構築。そこにAmazonアフィリエイトの広告を掲載して、AWSの運用コストとアフィリエイト収入のリアルな数字を公開している。お金をかけずにAWSに触れて学ぶとことができるのかどうかという、リアルな有益な実験結果として、勉強会参加者の参考にしてもらうというもの。

 とは言っても先月から始まったばかりなので、今回は3月と4月の2ヶ月分だけ。この収支報告は毎月の勉強会で継続していく予定とのことで、運用期間が長くなればなるほど有用な情報になると期待される。具体的な金額はここでは伏せておくので、気になる方はぜひJAWS-UG金沢の勉強会へ足を運んでもらいたい。

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