富士通は、新たな事業の創出を支援する共創サービスを体系化し、5月12日から順次、提供を開始する。昨年発表したインテグレーションコンセプト「FUJITSU Knowledge Integration」を具現化する取り組みのひとつに位置づけ、富士通が国内のあらゆる業種でシステムを構築してきたナレッジと顧客のナレッジを統合する。サービスインテグレーションやハッカソンなどの経験を活用し、アイデア創出を支援する共創プログラムやリーンスタートアップ実践プログラム、クラウドソーシングのような新たな事業の実装に向けたサービスを体系化して提供する。
共創の場を富士通ソリューションスクエア内に用意
富士通 取締役執行役員専務 グローバルサービスインテグレーション部門の谷口典彦部門長は、「共創サービスにより、デジタルビジネスの創出から運営まで一貫した支援を行なうとともに、創出したアイデアを、プロトタイプとして構築し、アジャイル手法を活用しながら、業種ノウハウを素早く形にする実践力を活用。業種、業務ノウハウをひとつのビジネスプラットフォーム上に集約し、これを共創によって成長するプラットフォームとして提供。顧客は、最適化したサービスを享受できる」と語る。
また、東京・蒲田の富士通ソリューションスクエア内に、ハッカソンやアイデアソン、ワークショップを実施する共創の場として、「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY」を、5月23日に開設。富士通のSEと顧客が共同で利用できる環境を用意した。ここでは、国内外のICTや業種、業務に関するトレンドなどを共有。顧客同士のマッチング促進なども行なわれるという。「これまで富士通ソリューションスクエアは、こんな殺風景な玄関はないといわれていたが、それを改善して、FUJITSU Knowledge Integration Base PLYを設置した。富士通ソリューションスクエアのセキュリティの外にあるため、自由に利用してもらえる」(富士通の谷口取締役執行役員専務)という。
「PLY(プライ)」には、「よりあわせる」、「積み重ねる」という意味があり、同スペースでは、3Dプリンタをはじめとする最新機器が自由に使えるほか、コワーキング・スクエア、リーン・スタジオを設置している。「富士通のSEがSoEに取り組む実践の場にもしたい」(富士通 グローバルSI部門 グローバルSI技術本部の中村記章本部長)という。
サービスプログラムとしては、着想のためのインプットからアイデア創出、チーミング、プロトタイピング、フィードバックという一連のハッカソンのプロセスや、効果的な共創活動のメソッドを短期間に体感できる「ハッカソンチャレンジプログラム」、顧客と富士通のSEが、フィールドワークやワークショップ、簡易プロトタイピングによるユーザビリティテストなどを通じてアイデアのブラッシュアップを行う「デザイン思考プログラム」、リーンスタートアップの考え方を学び、仮説、検証、判断によるアイデアのブラッシュアップを繰り返す「リーンスタートアップ実践プログラム」、ワークショップ形式で既存のビジネスがどんな影響を受けるのかを検証する「未来洞察プログラム」を提供。また、顧客の要望や要件に最適なクラウドソーシングプロバイダーを選定し、活用をサポートする「クラウドソーシングサービス」も提供する。
まずは共創をはじめるところにフォーカス
富士通の中村記章本部長は、「富士通は、2015年度だけで、延べ1500人以上が参加する数々のハッカソンを自らが主催してきた。ハッカソンチャレンジプログラムではこのノウハウを活用することになる。また、クラウドーシングサービスでは、2000万人のナレッジをオンデマンドで、スケーラブルに活用できるものとなり、アイデアの具現化を支援できる。これは、SEの開発手法の変革にもつながると考えている」とアピールする。
また、アジャイル開発の実績についても説明。「富士通は、15年以上に渡り、黎明期からアジャイルに取り組んでおり、すでに2800人以上が教育を受け、1000人以上のプロフェッショナルがいる。プロジェクトの迅速な立ち上げ、品質確保を実現することができる。さらに、約300件にのぼる様々な分野でPoC/PoBを行なっている経験を生かし、新たなビジネスの創出とエコシステムの構築に貢献できる。成約案件数という目標よりも、まずは共創をはじめるところにフォーカスしたい。多くのアイデアをビジネスへ進展させたい」とした。
また、富士通 執行役員 グローバルSI部門 金融システム事業本部の時田隆仁本部長は、「富士通が持つSoRの知見を、SoEと連携させた新たなシステムへと昇華していく取り組みを行ないたい。業種ごとのサービスに関するノウハウをつなげ、さらに、そこに顧客のナレッジを組み合わせていく。その中核にあるのが、デジタルビジネスプラットフォームであり、それが富士通の価値になる」と語った。
一方、富士通 取締役執行役員専務 グローバルサービスインテグレーション部門の谷口典彦部門長は、「デジタル化の時代に到来し、状況にあわせて、素早く判断して、意思決定し、行動に移すOODAループによる、知識機動力経営の実践が求められている。これは、これまでのPDCAモデルとは異なるものである。一方で、情報システムは、事実をトランザクションとして記録する、これまでのSoRのシステムに加えて、人と人、人とモノ、モノとモノとのつながりを、深化、拡大するSoEのシステムに分かれる。富士通はSoRとSoEを包含し、SEが蓄積してきた知見を実装し、富士通のプラットフォーム上で実現することで、これまでにない新たな提案が可能になる。富士通自身も、顧客のパートナーとして、それに相応しいように変化していく。今回の取り組みによって、富士通が取り組んできた情報収集、問題発見、アイデア創出、サービス実装までを体系化し、顧客とともにこれまでにないものを作り出す場を提供する」とした。
なお、富士通では4月1日付けで、グローバルデリバリー部門とインテグレーション部門を統合し、グローバルサービスインテグレーション部門を新設している。「日本の顧客に向かっている4万人のフロントSEをすべて統合。また、世界8か所のグローバルデリバリーセンターには8000人が在籍し、オフショアでのコストダウンと新たなサービスの創出に取り組むことになる。また、約30人で構成されるデジタルビジネス戦略室では、共創による新たなビジネスのプロデュース、新技術の活用フィードバックを提供することになる。約1兆6000億円のビジネス規模を誇る組織であり、これらにより、デジタルビジネスに向けた実行体制が整う」と述べた。