今まで体験したことない低域再生能力
これでイメージするのが、タンデム駆動と呼ばれるスピーカーの設計です。スピーカーをキャビネットの前後に配置し、前方を向いたメインユニットの排圧を、同位相で動く背後のスピーカーによって逃がすというもの。振動板の口径が小さくても、それを上回る低域再生能力を得られ、背面ユニットの動作を電気的に変えることで特性の調整できる、それが主なメリットです。
ただ、DN-2002の構成で同様の効果が得られるものなのか。そもそも、まったく別の設計上の意図からこの構成に行き着いたのかもしれません。ですが、実際に聴いて驚いたのは、やはり今までのイヤフォンでは体験したことのないような低域の表現でした。
なにより、再生限界の低さからくる深みと同時に、そのレスポンスのスピード感に特徴があります。低域がディープであるほど追従性も甘くなり、結果的に飽和したブーミーな音になってしまうものですが、DN-2002にはそんなトレードオフ感がない。ベードラのタイトで音圧で押される感じは、まるでドラムセットの目の前で聴いているようで、ダイナミックレンジが大きいせいか、音の立体感がすごい。
もちろん、マッシブな低域に負けないだけの中高域があって、初めて成立するバランスです。解像度も相応に高いので、全体として音像が大きく感じられ、スケール感の違いにも驚きます。どんなソースにも合うと思いますが、特に低域のスピード感のメリットは感じるのは、テンポの速いEDM系や、ツインバスの連打にローDとかローBを含むリフを重ねてくるメタル系でしょう。
構成上ある程度はやむなしと考えていた音漏れも、皆無とは言えませんが気になるほどではありません。耳が壊れるほど音量を上げなければ大丈夫。
それより気になるのは、プレイヤー側の駆動力です。感度は106±2dB、インピーダンスは10Ωなので、音量的にはスマホのヘッドフォン出力で十分間に合いますが、接続する機器で印象はかなり違ってきます。私自身も、アンプの駆動力があればもっといけるはず、などと思い始めているので、これを買ってしまうとオーディオの泥沼にハマりかねない。いや、イヤフォンに5万円近く出してしまう人は、すでに片足以上突っ込んでいるのだろうとは思いますが。