“4つの動作モード”で1台、5台、100台でも統合管理できる企業向けAP
無線LANを段階的に拡大できるネットギア「WAC720」を試す
2016年04月26日 08時00分更新
「4つの動作モード」に対応し、無線LAN環境の段階的な拡張に最適なWAC720
ケーブル配線の面倒がなく、自由なオフィスレイアウトを叶える無線LANは、オフィス移転時や新規事務所/支店の開設、機器リース更新などのタイミングで積極的に導入検討されることが増えている。タブレットやスマートフォンを業務活用するならば無線LAN環境が必須ともいえ、オフィスに限らず小売店舗、工場など、あらゆる場所で構築が検討されているはずだ。
だが、アクセスポイントの設置台数が増えるにつれて「運用管理の煩雑さ」も増してくる。そのため、企業向けの無線LANシステムでは複数台のアクセスポイントをコントローラーで集中管理する構成が主流だが、そうなると今度は「導入初期コストが高い」という問題に突き当たる。さらに、遠隔地の支社や小売店舗の無線LAN環境も本社で一括監視/管理したいというニーズも増えている。
このような無線LAN管理にまつわる課題をあっさり解決するのが、ネットギアが4月に発売したIEEE 802.11ac対応アクセスポイント「NETGEAR WAC720 ProSAFE Wireless Access Point」(以下、WAC720)だ。
WAC720は、単体で動作/管理する「スタンドアロンモード」、クラウドを介して複数拠点のアクセスポイントを統合管理できる「クラウド管理モード」、別売りの無線LANコントローラーで統合管理する「コントローラーモード」、そして今回の目玉である、1台をマスターとしてほかのアクセスポイントを一元管理できる「アンサンブルモード」という、合計4つの動作モードに対応している。
この4つの動作モードは、無線LAN環境の規模拡大に応じて切り替えていくことができる。アクセスポイント1台でも使えるし、5台、10台、100台と増えても(さらに複数拠点に拡大しても)、それぞれに適した一括管理形態で使い続けられる。小規模環境ならば無線LANコントローラーを購入する必要がないので、初期コストが抑えられる点もポイントだ。
さて、まずはアクセスポイント単体のスペックを見ておこう。主なスペックは表のとおりだ。
仕様 | NETGEAR WAC720 ProSAFE Wireless Access Point |
---|---|
対応周波数帯 | 2.4GHz、5GHz |
対応規格 | IEEE 802.11ac wave 1/a/b/g/n(2×2 MIMO) |
通信速度 | 5GHz帯:867Mbps、2.4GHz帯:300Mbps(理論最大値) |
PoE対応 | 〇(IEEE 802.3af) |
セキュリティ | WPA2/WPA/WEP、不正AP検知、MACアドレスフィルタリング |
有線インタフェース | 10/100/1000BASE-T ギガビットEthernetポート×1、コンソールポート×1 |
リピーター/ ブリッジモード |
〇 |
アンテナ | 内蔵アンテナ(2.4GHz:5dBi、5GHz:6dBi) |
動作モード | スタンドアロンモード、アンサンブルモード、コントローラーモード、クラウドモード |
WAC720は2.4GHz帯/5GHz帯のデュアルバンド対応で、IEEE 802.11ac規格(2x2 MIMO)に準拠するため最大伝送速度は867Mbpsだ。もちろん802.11a/b/g/nもサポートするので、どんな無線LAN機器も問題なく接続できる。さらにブリッジモードも備えているので、建物間やフロア間などケーブル敷設が面倒な場所にも容易に無線LAN環境を拡張できる。
パッケージを開けてみる。WAC720本体のほか、Ethernetケーブルが1本、壁掛けキット、インストールガイドなどが同梱されている。
本体はどんな環境にも馴染みやすい乳白色で、アンテナ内蔵かつPoE給電対応(IEEE 802.3af)なので、天井や壁面に取り付けても内装への影響が少ない。PoEスイッチと組み合わせれば、WAC720への配線はEthernetケーブル1本で済む。
そして何といっても、本体が小さい。昨年発売の802.11nアクセスポイント「WNDAP660」の場合、サイズはおよそ25cm角で厚さ5cm、重さは1.5kgあったのに対し、WAC720はおよそ20cm角で厚さ4cm、重さは726g。サイズも重量も4割以上小さくなっており、オフィスのどんな場所にも設置しやすくなっている。
なおWAC720は、ネットギアの「ライフタイム保証」の対象製品であり、ハードウェア故障に無期限で対応してもらえる。価格は7万5600円(税込)と導入しやすく、これから無線LANを導入する場合も、すでにアクセスポイント5台程度の無線LAN環境がある場合も、十分検討すべき製品の1つと言えるだろう。
まずは「クラウド管理モード」を試してみる
それではさっそくWAC720を触ってみたい。今回はレビュー用に2台のWAC720を借りることができた。なお、手元にPoEスイッチがなかったため、電源には別売りのACアダプタを利用している。
WAC720をLANに接続したら、Webブラウザから指定のIPアドレスへアクセスして管理コンソールにログインする。ログイン後はまず、最新のファームウェアにアップデートしよう。
初期状態のWAC720は「クラウド管理モード」に設定されている。そのほかのモードで運用したい場合は、「Configuration」タブ>「General」の設定画面にある「Cloud Enabled」を「No」に切り替え、再起動して画面の指示通りに操作すれば、他モードの設定画面が表示される。
ちなみに、Cloud Enabledの設定をNoから「Yes」に切り替えるとき、アクセスポイントは工場出荷時の設定にリセットされる。それほど頻繁に切り替える設定項目ではないと思うが、ひととおり設定が完了したあとは、設定内容をバックアップしておくことをお勧めしたい。
クラウド管理は、ネットギアが提供する「Business Central Wireless Manager(BCWM)」のWeb画面から行う。詳細は連載「ネットギアでクラウド管理の無線LANを始めよう」にまとまっているので、ここでは簡単な紹介にとどめる。
まずはネットギアのユーザー向けポータル「MyNetgear」でアカウントを作成し、続いてBCWMのアカウントを作成する。BCWMは90日間無料で試用できるので、試用して使い勝手を確認してからライセンス購入するとよいだろう。現在のところ、BCWMのインターフェイスは英語のみだが、それほど難しい設定項目はないので心配する必要はない。
ログイン後に「Configuration」を開くと、ロケーション(管理対象のアクセスポイント設置場所)が未登録だというメッセージ表示される。「Get Started」をクリックするとウィザードが起動し、アクセスポイントの設置場所が登録できる。
位置情報を登録したら、次はそのロケーションで運用している無線LANとアクセスポイントの情報を入力する。無線LANの認証関連情報とアクセスポイントのシリアル番号を入力する(ここは間違えないよう慎重に)。クラウド管理モードに設定されたアクセスポイントは定期的にBCWMと通信を行っているので、この設定が終われば自動的にアクセスポイントが認識されるはずだ。
このとき、アクセスポイントは「位置情報なし」で登録することもできる。先に本社の情報システム部門がアクセスポイントをBCWMに登録し、それを地方拠点に発送して設置してもらい、認識させるという方法も可能だ。
アクセスポイントの登録/認識後、BCWMの「Monitoring」画面を見ると、管理対象のロケーションや稼働状況などが一覧表示できる。下の画面では、1台が「稼働中(Online)」と認識されており、もう1台は設定の不備で認識されていないことがわかる。
なお、ロケーションには地図上の位置だけでなく、住所やビル名、フロアまで詳細な情報が登録できる。したがって、設置場所が複数のフロアにわたるような場合でも、フロアごとに管理することが可能だ。複数のロケーションが登録でき、ロケーションごとに複数のアクセスポイントをまとめることができるため、この画面で多数の拠点を一元監視/管理できるわけだ。
なお、アクセスポイントの設定は「Inventory」から変更可能だ。「Action」メニューでは、VLAN設定やチャネル設定、電波の送信出力の調整、syslog設定など詳細な変更ができる。
* * *
引き続き次回は、WAC720の“目玉機能”であるアンサンブルモードを試してみたい。別売りのコントローラーなしで、10台までのWAC720を一元管理できる動作モードだ。中小規模の無線LAN環境の構築に役立つこのモードがどんなものなのか、次回記事もどうぞお楽しみに。
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