レコードだけでなくカセットもスピーカーも内蔵
ティアック「LP-R550USB」
ティアックの「LP-R550USB」(実売価格 6万7000円前後)は単なるレコードプレーヤーではなく、再⽣専⽤カセットデッキ、CDレコーダー、FM/AMチューナー、アンプ、スピーカーが⼀体化したオーディオシステム。
アナログレコードのCD録音だけでなく、カセットテープやFM/AMラジオのCD録音も可能。しかもCDへの録音は44.1kHz/16bitのCDフォーマット。だから録音したCD-Rは普通のCDプレーヤーでも再生できる。CDレベルとはいえリニアPCMだから音質劣化はない。
カセットテープはノーマル/ハイポジションの再生にも対応しているのは今や貴重で、古くからあるロングセラーモデルだが、根強い人気に支えられている(このあたりはさすがカセットデッキで知られたティアックだ)。
PCでの録音も可能だが、PCを使うのが苦手な人が、オーディオ機器の感覚で録音できるシステムと考えていいだろう。

背面の接続端子。オーディオ入力と出力を各1系統備える。このほかはFM/AM用のアンテナ端子がある。両側の穴はスピーカー部のバスレフポートだ
なお、PCでの録音はUSB接続とはいえ、音声はアナログ伝送。PC側の録音ソフトなどが必要になるので、ある程度の知識がないとちょっと使いにくい。
本機のレコードプレーヤーはセミオート式。トーンアームの移動や昇降は手動で行なうのだが、レコード盤をセットしてトーンアームを近づけると自動でターンテーブルが回り出す。
演奏が終わってトーンアームを元に戻すとターンテーブルが停止する。フルオートやセミオートのレコードプレーヤーをわざわざ選んだわけではないが、こうして使っていると、レコードプレーヤーの歴史を遡っているようで楽しい。
ちなみに本機は、33 1/3回転や45回転のほか、SP盤の78回転にも対応している。ただし、針はビニール素材のLP盤やEP盤(ドーナツ盤)用なので、SP盤用のカートリッジ(別売品)に交換する必要がある。
懐かしい気分になるかまぼこ型の特性
聴き心地のよい再生音だ
再生してみてすぐに感じるのは、低音も高音もほどほどで中音域中心の特性。はっきり言えばナローレンジな特性だ。
ところが、肝心な中音域がしっかりとしているので、聴き心地が良く、バランスよくまとまっているので不満は少ない。昔に聴いていたアナログレコードの音がまさしくこんな感じだったと思う。
アナログレコードの音をひとくくりに「懐かしい」とか、「柔らかで温もりを感じる」という感じにまとめるのが筆者は大嫌いなのであまり使いたくない表現だが、本機の音はまさにそういう懐かしさや温もりを感じるアナログの音だ。
オーディオマニア的には、クラシックを聴けば楽器の音が混濁しているし、低音楽器の伸びも不足していてスケール感が足りない。ジャズは鋭利なリズムのキレ味が穏やかになってしまうし、トランペットの炸裂するような出音の勢いも甘くなる。
ただし、音色の自然さやメロディーのニュアンスはしっかりとしている。ボーカル曲も声のニュアンスはよく出るし、ブレスや吐息の感じなど微小な音もなかなか鮮やかだ。
ちょっと評価が難しいところなのだが、音質にこだわる人やハイレゾを含むデジタル音源に慣れている人には解像度不足の眠たい音と感じるだろう。
しかし、あまり難しいことを考えず、定額制音楽配信サービスなどを利用して気軽に音楽を聴いている人、つまり音楽好きな人ならば好ましいと感じる人も多いと思う。
これがアナログの音と勘違いされるのは困るが、アナログらしい優しい感触や生っぽいリアルさはきちんと味わえる。
接続も簡単だし、カセットデッキやFM/AMラジオも一通り備わっている。バリバリのオーディオマニアではなく、気軽に昔のレコードなどを聴けるようにしたいという人には使いやすいだろう。

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