自然遺産の知床でテレワークはいかが?
北見市が進める人材回帰戦略、オホーツク海の「サケモデル」
2016年04月15日 06時00分更新
地方から人が減り続けている。日本の人口減少や東京への一極集中などが原因だ。このままだと2040年には、多くの地方自治体が行政機能を維持できなくなってしまうとされる。
そこで取り組まれたのが、総務省「ふるさとテレワーク」である。
都会のいつもの仕事をそのまま続けられるよう、地方にテレワーク環境を整備。地方への移住や企業進出を促進し「新たな人の流れ」を創る。さらに移住者が地方に溶け込めるよう支援することで、その流れを一過性のものではなく「定着・定住」につなげる。
その実現可能性を検証すべく、全国15地域で実証実験が行われ、約180社の協力会社から合計約1000人が実際に移住。テレワークの地域への影響、効果や課題を洗い出した。「ふるさとテレワーク」は地方を救うのか? そんな各地での取り組みをレポートする。
今回は北海道北見市および斜里町。壮大な大自然を背景に実施された「北海道オホーツクふるさとテレワーク」の内容を、北見市役所などに聞く。
圧倒!知床の大自然
今回、北海道を取材するにあたり、知床半島にまで足を運んでみた。そして、大自然に圧倒されてきた。
知床は、屋久島・白神山地・小笠原諸島と並ぶ日本の世界自然遺産。冬、海を覆う流氷とともに栄養分が運ばれ、プランクトンが豊富に育ち、アザラシやオオワシ、シマフクロウなどの糧となる。半島の中央には羅臼岳・知床連山があり、ヒグマ、エゾシカといった大型哺乳類も高密度に生息。海と山の自然環境が密接に関わりながら独特な食物連鎖を形成し、その生物多様性が、世界自然遺産に選ばれるポイントとなった。
ただ、環境は少しずつ変わりつつあり、特に今年は流氷が少なかったという。筆者は3月上旬に網走の流氷砕氷船に乗り、見渡すかぎりの流氷に出会えたのだが、それでも例年より量は少なく、その前週まではほとんど見られなかったそうだ。さらに翌日にはもう南風で沖合に押し戻されてしまっていた。「この調子だと、いずれ流氷も見られなくなるかもしれない」。地元民の言葉に胸がドキリとした。
さらに東へ斜里町まで行くと、そこはまた一段と別世界だ。アイヌ語の「サル」または「シャル」が転訛し、いずれも「アシが生えているところ」の意味がある、知床半島の縦に長い町。網走と比べても、さらにぎっしりと流氷に覆われた海は、まるで「真っ白な平原」のようである。ふと宮本輝の小説の題名が思い浮かぶ。ここに地終わり、海始まる――。
半島の中央には羅臼岳・知床連山や知床五湖があり、冬は凍った湖ごと雪に覆われる。近年はスノーシューイングも解禁され、キツツキの開けた穴やヒグマの爪痕、運が良ければ、ウサギやムササビなどの小動物とも出会える。案内してくれたガイドさんは、知床に魅せられて数年前に埼玉から移住したそうだ。ヒグマと遭遇したことも多いらしく、それはさぞ怖いのかと思いきや、「冬眠明けのコグマはテンションがすごくて、コロコロと可愛いんですよ!」と楽しそうに話していたのが、とても印象的だった。
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