課題は製品の魅力をどう伝えるか
PlayStation VRはヒットする、最高水準映像とタイトルを体験
米サンフランシスコで開催されているGame Developers Conference(ゲーム開発者会議)の会期に合わせてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がメディアイベントを開催した。アンドリュー・ハウス代表取締役社長が登場し、バーチャルリアリティー用ヘッドマウントディスプレー(VR HMD)「PlayStation VR(PSVR)」の発売日と価格について発表するだけの、わずか15分ほどの短い会見だった。
その注目の発売日は、2016年10月に全世界で発売、気になる価格は4万8578円。
イベント会場では、20あまりのPSVRタイトルを3時間以上かけて、プレーすることができたが、相当に完成度の高いハードのように感じられた。映像は美しく、2つのボタンを利用して頭に装着させる、独自の仕組みも洗練されており、つけ心地も非常にいい。PSVRはヒット商品になると手応えを感じた。
今まで見てきたVR HMDの映像で最高水準
PS4は、全世界で欧米を中心に3600万台の販売に成功しており、今の世代のゲームプラットフォームでは、勝利がほぼ確定的な足場を築きつつある。すでにPS4を所有するユーザーへのアピールとしてPSVRは強力だ。仮に10%のユーザーが購入するとしても、普及台数という面において、VR HMDではトップになるだろう。
PSVRを使用するためには、PS4が必須だ。さらに、PSVRの頭の動きを検出するモーショントラッキングのために、5000円ほどの「PlayStation camera」も必要だ。PS4をすでに所有しているユーザーでも、合計すると5万円前後というのが、最初の導入コストとしては一般的になるだろう。
比較として、2014年に登場した同じディスプレー性能の「Oculus Rift DK2」は350ドル(約4万円)で販売されていた。PSVRでは専用タイトル「THE PLAYROOM VR」が、無料で配信されたり、既存のゲーム画面をPSVRで見られる「シネマティックモード」の機能が付く。そうしたことを考えると、一般消費者向けの値付けとして、ぎりぎりまで値段を下げた、頑張った値付けだと思える。
ただ、入力デバイスの「PlayStationMove モーションコントローラ」を左右両手用に購入すると、約8000円の追加コストがかかるため、PS Moveを使ったゲームのヒットは当初はかなり難しいかもしれない。PSVRでは、ゲームコントローラーが一般的な入力方法になると考えられる。
解像度はOculus Rift DK2と同様の両眼1920×1080(片目960×1080)だ。黒などの色を出しやすい有機ELディスプレーを使用しているメリットを活かして、ハードとしての完成度はより優れたものになっている印象がする。Oculus Rift DK2でははっきりと見えていたドットの編み目が見えない自然かつ鮮明で美しい映像が出ている。
特に、スクリーンモードで見たときに、その性能の高さを実感させられる。このモードでは、PS4のテレビに出力している2Dの映像をそのままPSVRに出力することが可能だ。Blu-ray映像やゲームを見ると、あたかも大画面の映画館で映像を見ているような気分になる。
同じようなことを売り文句にしてきたHMDは過去にもあったが、PSVRの映像はこれまでに見てきたもののなかで、最高の水準を実現することに成功している。
極端な話、テレビを所有していないユーザーがPSVRだけで、PS4の操作をすべて行なうこともできる。
もちろん、より解像度の高い「新型Oculus Rift」や4月発売の「HTC Vive」に比べると、没入感という面で、どうしても見劣りをするのだが、販売価格が2倍近いことを考えると、仕方ない点だろう。むしろ、PSVRは、一般のゲーマーにとっては、手が届きやすく扱いやすいVR HMDとして、十分に評価される品質ではないかと思う。
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