「Mobile World Congress 2016」のQualcommのブースでは、LTEの上り速度の強化、免許不要の周波数帯を利用するLTEなど、さまざまな技術を紹介していた。
上りもCAやデータ圧縮で高速化
MWCのキーワードの1つが5GHz帯でのLTE通信
LTEでは、上りの通信速度の強化技術について展示があった。紹介していたのは「上りのキャリアアグリゲーション」「QAMを16から64にあげる」「上りのデータを圧縮する独自技術UDC(Uplink Data Compression)」の3つの方法だ。
ギガビット級LTEとして最新のモデム「X16 LTE」も紹介、同モデムを搭載した試作機を利用して、Ericssonのインフラとの組み合わせで1Gbps近くの速度が出ている様子を見せていた。
2015年のMWCでキーワードの一つとなったのが「LAA(License Assisted Access using LTE)」だ。5GHz帯などライセンス(免許)が不要な周波数帯でLTE通信を行なうもので、3GPPのRelease 13に入る標準技術となる。免許不要の周波数帯を活用できるため、帯域増をせまられる通信事業者にとって重要な技術として注目されている。
免許不要の周波数帯でLTE通信を行うと、Wi-Fiに影響を与えるのではないかという懸念が一部から持ち上がっている。ブースではそのような心配はないことを示すためのデモが行なわれた。LAAではQualcommのX12 LTEモデムを搭載した試作機とEricssonのインフラを利用したライブデモもあった。
Release 13では下りのみを対象としているが、Release 14では上りにも拡大される。これは「Enhanced Licensed Assisted Access(eLAA)」と呼ばれており、これについても紹介していた。
だがLAAは課題もある。日本や欧州では「Listen Before Talk(LBT)」という電波干渉防御の仕組みが規制としてあるからだ。一方で、米国/韓国/中国などではLBTは不要であるなど地域により制度が異なることから、LBTがないものは「LTE-U」、LBTがあるものはLAAと呼ばれている。日本ではRelease 13が出たのちに、総務省側で制度が整うことが期待されている。
公衆無線LANサービスにもLTE技術が持ち込まれる!?
「MuLTEFire」の展示
MWCの会期中に正式にアライアンスがローンチした「MuLTEFire」についても紹介していた。5GHz帯にLTEが入って来るという点では同じだが、LTE-UやLAAは免許が必要な周波数帯も併せて持っている事業者しか展開できないのに対し、MuLTEFireでは免許不要な周波数帯だけでLTEネットワーク提供を可能にしようというもの。「LTEのようなパフォーマンスを、Wi-Fiのような容易な実装で実現する」としている。
Qualcommは2015年12月、NokiaとMuLTEFire Allianceの結成を発表、その後Ericsson、Intel、Rackus Wirelessなども加わった。MulteFire Allianceでは認証なども行なっていくことになる。
QualcommではLTE-UやLAAを端末側(Snapdragon 820)、そしてスモールセル側でサポートするための取り組みも進めている。MWCでは、スモールセル用のチップFMFを紹介していた。
アンテナブースト技術の「TruSignal」も展示されていた。モデムチップだけではなくアンテナ側の強化となり、無線環境の変化に対してアンテナの状況を見て最適に調整することで通信品質を改善するという新しい技術。CESで披露したが、MWCではSamsungが発表した「Galasy S7」でTruSignalを持つSnapdragon 820が搭載されたことで、対応機種も登場した。
IoT関連では単3電池2本で数ヵ月持つという新技術が
IoT関連では、消費電力に関する技術を紹介していた。3GPPのRelease 12で定められたCat1の「Power Save Mode(PSM)」では、1日1回、1KB程度のデータを送ると想定した場合、単3電池2本で10年以上利用可能としている。
だがこの場合の端末はスリープ状態にあり、ネットワークからは端末は見えなくなる。スマートメーターなどではよいかもしれないが、定期的にネットワークとやりとりすることが必要なIoT機器もある。そこでRelease 13では、最大43分間隔でやりとりを行ないながら消費電力を効率化を図る「Extended I-DRX」が盛り込まれる。消費電力は単3電池2本で数ヵ月程度となる予定だ。
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