サードパーティー製ブラウザだからできること
独自のエンジンは使用できないが、比較的先端近くを歩むSafariのHTMLエンジンを利用でき、NitroのJITコンパイラにアクセス可能になったサードパーティー製ブラウザは、WKWebViewの登場によりパフォーマンス面においてSafariに引けをとることがなくなった。これでようやく、Safariと同じスタートラインに立てりようになったともいえる。
実際、WKWebViewを採用したサードパーティー製ブラウザは増えている。「Firefox」はiOS 9がリリースされて間もなくWKWebViewの採用に踏みきり、今年1月には「Chrome」もWKWebViewベースとなった。
セキュリティ強化も、WKWebViewのメリットだ。UIWebViewでは、デベロッパーが悪意をもって開発すれば通信元を詐称するなどの操作が不可能ではないが、API経由での操作には対応しないWKWebViewではそれができず、結果としてセキュリティが向上する。WKWebViewはプロセス分離レンダリングの導入によりクラッシュ発生率が低下、安定性がアップしたこともポイントだ。
サードパーティーがWKWebViewの採用に踏み切った理由は、パフォーマンスとセキュリティの向上だけではない。登場当初はCookie管理APIがないなど機能面で課題を抱えていたが、その多くが解決されたほか、3D Touchのサポートやプライベートモードを実装することも可能になるなど、先進機能も提供されるようになった。機能的に熟れてきたため採用しない理由がなくなったことが、サードパーティー製ブラウザの移行が本格化した最大の理由なのかもしれない。
一方、存在意義となるとそうはいかない。パフォーマンスではSafariに大きく引けをとらなくなったとはいえ、敢えてサードパーティー製ブラウザを使うにはそれなりの動機が必要だ。当然、Safariでは足りない、Safariにはない機能も欠くことはできない。
Chromeの場合、Googleの他のサービスとの連携が鍵となる。音声検索のほか、GmailやGoogle Mapsといった「Google Apps」との連携が容易となることが、Safariにはないメリットだ。もちろん、PCでChromeを利用しているユーザにとっては、ブックマークの共有という利点がある。
Firefoxの場合、Googleの各種サービスとの連携をうたうChromeほどのプラットフォーム感はないものの、"意外に他にはない"機能が光る。Spotlightをサポート、アプリを起動していなくても(Firefoxで開いていた)タブを検索できる機能はその一例だ。YouTube(Webサイト)のコンテンツをバックグラウンド再生できることも、少なくとも現行バージョンのSafariには許されていないこと。あえて利用する価値はあるのだ。
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