ブイキューブと日本マイクロソフトが2月2日、ビジュアルコミュニケーション(VC)によるワークスタイル変革を推進するため、両社のクラウドサービスを連携させると発表した。コミュニケーション分野では競合同士の協業である。その背景を両社が説明した。
本協業により、ブイキューブのビジュアルコミュニケーションサービス「V-CUBE」とマイクロソフトの「Office 365」の連携ソリューションを開発し、2月から順次提供する。
具体的な提携内容としては、これまでAWSで運営されていた「V-CUBEミーティング」および「V-CUBEセミナー」のサービス基盤を、Microsoft Azureに移行する。認証基盤が「Azure Active Direcoty」に統合されるため、V-CUBEとOffice 365をシングルサインオン(SSO)で利用可能となる。
さらにV-CUBEとマイクロソフトのさまざまな技術を連携させていく。
まずは2月中に、「V-CUBEミーティング/セミナー」と「Outlookカレンダー」を連携させる。OutlookからV-CUBEのWeb会議予約・ユーザー招待・スケジュール登録が可能になる。また、数カ月以内には、AzureプライベートクラウドとV-CUBEを閉域網でつなぎ、インターネットを介さずにWeb会議が行えるようにする。外出時にはパブリック環境を使うといったハイブリッドな利用にも対応する予定だ。
さらに将来的には、「Microsoft SharePoint」「Microsoft PowerBI」「Microsoft Translator」「Cortana Analytics」などの先進データ活用技術とも連携させる。時期は未定とのことだが、これらの連携により、新たな価値創造を検討していく方針という。
競合なのに協業、その背景は?
今回の協業は、ブイキューブのビジュアルコミュケーションの知見と、マイクロソフトのワークスタイル変革の取り組みを掛けあわせ、少子高齢化や労働力不足、政府が掲げる「1億総活躍社会」に対応する「新たな働き方」を目指した取り組みとなる。
だが、疑問となるのが、マイクロソフトも「Skype for Business」とコミュニケーションツールを提供しており、この分野では競合関係にあるのでは――?
これに対し、マイクロソフト代表執行役 会長の樋口泰行氏は「ユーザーの利便性が高まるのであれば、多くの企業とオープンに協業するという方針。それはナデラCEOになってから米国本社でも明確な方向性となっている。今後、労働力不足が深刻となる日本ではワークスタイル変革が必須となり、ビジュアルコミュニケーションがその中心となる。そこで今回、ビジュアルコミュニケーションに強みを持つブイキューブと、一部では競合しつつも協業するに至った」と説明する。
ブイキューブ 代表取締役社長の間下直晃氏も「AWSからAzureの移行は単純な価格の話などではなく、Office 365との連携など周辺技術によるメリットが大きい。Officeは企業のデファクトスタンダードで、Office 365でクラウド化されたことで、その利用はさらに広がっている。V-CUBEのユーザーでもOfficeを利用しているユーザーは5割強はいると感じているので、相互連携は意義があるはず。競合関係については、Skype for Businessがユニファイドコミュニケーション寄りの考え方なのに対して、V-CUBEはテレビ会議寄りで映像共有に強みを持つ。そういう意味でユーザーの環境に合わせて選んでもらえるだろうし、両方利用する可能性もある」と、疑問を払拭した。
V-CUBEをあらゆる社会インフラに
今後の提供方法としては、(1)V-CUBE One(同社のサービスを1契約で利用できるサービスモデル)とOffice 365を両方利用するユーザーに連携機能を無償提供するほか、(2)Office 365の販売パートナー向けに両サービスの価格体系を扱いやすいようにまとめた新プランを提供する。ディストリビューターは、ソフトバンク コマース&サービス。「両社の協業を歓迎する。全国の販売パートナーとともに積極的に提案していく」とエンドースメントを贈った。
間下氏によれば、ビジュアルコミュニケーションは映像・音声技術の進化によって、従来の拠点間会議だけでなく、遠隔営業・サポート、遠隔教育、遠隔医療・処方箋、ドローン活用、あるいは不動産業界で義務だった対面説明が緩和されてWeb会議で可能になるなど、さまざまなシーンへと活用の幅が広がっている。
同氏は「私自身もシンガポールなど頻繁に海外を飛び回っているが、どこからでも働けるからこそ」と語り、「今回の協業で、さらに社会インフラとして広げていく。新たな価値創造のために、マイクロソフトの技術が大きな力になると期待している」と述べた。