日本のITを変える「AWS侍」に聞く 第17回
ユーザー企業とSIerの立場で金融系システムに注力
ソニー銀行のAWS導入を進めた大久保さん、FinTechに切り込む
2016年01月15日 11時30分更新
ユーザー企業とSIerのコンサルティングという立場で長らく金融系システムに携わってきた大久保光伸さん。国内いの一番となる金融機関でのAWS導入を推進してきた大久保さんは、大きな注目を集めるFinTech分野に切り込む。
本連載は、日本のITを変えようとしているAWSのユーザーコミュニティ「JAWS-UG」のメンバーやAWS関係者に、自身の経験やクラウドビジネスへの目覚めを聞き、新しいエンジニア像を描いていきます。連載内では、AWSの普及に尽力した個人に送られる「AWS SAMURAI」という認定制度にちなみ、基本侍の衣装に身を包み、取材に望んでもらっています。過去の記事目次はこちらになります。
パソコン、クォーターバック、ものづくりまで幅広く
10代の頃から多才だった大久保さん。小学校から友人と立ち上げたパソコンクラブでコンピューターに親しみ、母親の会社で手伝いをしていた関係で小さい頃からITにも明るかったという。「オフィスにインターネットもサーバー構築の環境も全部あった。将来、このスキルはモノになるなと思っていました」(大久保さん)。一方で、ものづくりや部品の輸出入などにも携わってきた。「携帯電話の試作で特殊形状のコネクタなどを熟練の技術者にしかられながら作っていました。大学時代には治具の設計までを手掛け、技術の標準化に努めました」と語る。
いかにも「オタク」な経歴だが、大久保さんの場合は高校時代にアメフトで日本一になっており、大学時代は建築学部でランドスケープを学んでいる。「父親代わりであった祖父が他界し、結果が出るまで10年近くかかるランドスケープの道よりより現実的な金融のITという道を選んだ。母親の商売の関係で、自宅にはつねにいろんな在庫があって大変だった(笑)。自分でやるなら、在庫のないビジネスでイノベーションを起こしたいと考えていた」と大久保さんは振り返る。
社会人になって、まず入ったのは外資系保険会社のIT部門だった。ここでショックを受けたのは、アウトソーシングしている業務の多さだ。「たとえば、運用関連のシェルやバッチ。ログイン情報や製品間のログの突き合わせを外部業者におねがいして、しかもけっこうなコストがかかっていた」(大久保さん)と感じたという。次に金融機関に常駐して開発を行なうITアウトソーシングのベンチャーに転職。ここでは常駐先となった大手銀行の恩師に円クリアリングサービスの海外金融機関担当ブリッジSEとして抜擢されて以降、大久保さんは金融システムの道に進むことになる。
金融システムで実績を積み続けたSIerからユーザー部門へ
ITアウトソーシング会社での実績を元に電通国際情報サービス(ISID)に転職した大久保さんは、インターネットバンキングのコンサルティングと、サーバー仮想化のR&Dを担当することになる。ここで出会ったのが仮想化の技術だ。「仮想化に関してはソフトウェアでサーバーとネットワークがどんどん構築でき、ユーザーのリクエストで迅速にインフラが用意できる点に驚きがあった」(大久保さん)。
当時はVMwareやHyper-Vが先陣を切っていた時期だったが、大久保さんが注目していたのはオープンソースのEucalyptus。「データセンターも複数あったので、運用や自動化の分野でEucalyptusが活きるのではないかと考えた」と大久保さんは語る。
そして、新しい銀行システムを自ら作りたいという思いから、7年前にソニー銀行に転職。チーフインフラストラクチャアーキテクト、デジタルイノベーション推進担当としてビジネスに密着したシステムの計画と運用を進めることになる。「ネット専業銀行だし、アドテクを活かしてデジタルマーケティングに挑戦できると思った」と意気込んだ大久保さんだったが、入社した当初はシステムの更改サイクルから“守りのIT”が先行しており、なかなか着手できなかったという。
クレジットカード決済を行なうCAFIS向けのサーバー、情報系システム、市場系システムなどの周辺システムとユーザー向けのWebアプリケーションとデータベースが緊密に統合され、がんじがらめになった銀行システム。シングルベンダー環境であり、競争やイノベーションが起こりにくくなっている現状があり、これを大久保さんは打破したいと考えた。「役員面談のとき、基幹系システムと周辺のセミコア系システムをアンバンドルし、基幹系以外はRFPでベンダーを選定したいと希望を出しました」と大久保さんは語る。
(次ページ、金融機関で初となるソニー銀行のAWS導入をリード)
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