ブラウザーにIMEを内包
ベトナム語での素早い入力が人気に
coccoc設立のいきさつについて、小比賀氏によれば「設立当初からいたスタッフの話では、たった5年前でも、ベトナム語での検索のクオリティーは酷いものでした。日本人が思っているような検索結果とは、精度が低い遠く離れた検索結果だったのです。弊社のベトナム人とロシア人は、そうした貧弱な検索状況を変えるべく、coccocを立ち上げました」とのこと。
これは、Googleが小さい市場の開発を重視していなかったともいえる。例えば、Googleは広告は出せるものの、ベトナムに支社はない(Googleの支社の一覧)。
ベトナム人に支持されたのは、まずブラウザーだが、ブラウザーにもベトナム人のニーズに応えたうれしい機能が入っている。ぱっと触る限りは、メニューがベトナム語化され、定番サイトがトップページに並ぶだけに見えるが、coccocの人気の秘密は別のところにあると小比賀氏は言う。
「ベトナム語のIMEを内包し、FacebookやGmailなどのウェブメールで入力するときに、ベトナム語で入力できます。ベトナム語の予測変換に対応し、アルファベット入力だけで発音記号をしっかり補完するわけです。その精度ですが、競合する他のソフトに比べて20~50%のキータッチ省略を実現しています。素早く入力できるわけです。またベトナム語のスペルチェッカーと、ダブルクリックでの英越辞典を用意しています」
なるほど、使えそうなユーティリティーを最初からブラウザーに機能として入れることで、ユーザーがブラウザーを利用しやすくするわけだ。FacebookやGmailといったウェブサービスが入力しやすく、coccocによりクラウド依存が強まりそうだ。
小比賀氏いわく、教育ソフトもオンライン利用が多く、ブラウザーでの入力はここでも活用できるし、計算サイトを準備したのもそのためだとか。
「YouTubeなどの動画のダウンローダーや別窓での動画再生機能を内包しており、ダウンローダーについては、ワンクリックで8分割ダウンロードにより高速ダウンロードができます。こうした機能が便利、と評価をいただいております。このように他ソフトでは実現できていない、ベトナムにローカライズされた製品なのです」
定期的にバイクで情報刷新
ベトナムならではの地図サービスも展開
Googleはストリートビューのために、特殊カメラをとりつけた車で運転するが、coccocはベトナム流に、カメラをバイクにとりつけハノイやホーチミンシティなどの街中を回った。
そして地図サービスでは、GoogleMapの上で、本家Googleより、より多くの物件が検索できて、より詳細な店舗情報が掲載される「NhaNha」(ニャニャ。Nhaは家の意味)というサービスができあがった。
ベトナム人の生活習慣から「Cafe」「屋台」「ガソリンスタンド」について、別個にボタンを用意した。こちらもベトナムの都市住民には好評である。
「一度写真を撮った道でも再度バイクを走らせて、定期的にロケーション情報を刷新し続けている必要があるのも、テナントの入れ替わりが激しい“ベトナムの都市ならでは”の部分かと思います」と話す小比賀氏。
「四季があるハノイではとくに生活実感として、居抜きの入れ替わりがとにかく激しいですね。同じ物件でも、春夏はドアを取り外してお客が入りやすい“フォー屋台”にして、秋冬は、寒い のでドアを取り付けて、季節が変わって服が売れるから“アパレルのお店”にする店舗があります。早いところだと3ヵ月ごとに中身を入れ替えているお店とか多いですし……。このため、自社スタッフでいつでもデータを刷新できるのは、ベトナム企業ならではのアドバンテージかなと思います」
ちなみに過去にはFacebook、今ではTwitterを規制しているようだが、ベトナムのネット規制はどうなのか、小比賀氏に聞いてみた。
「Googleが公表しているレポートにあるように、ベトナムは他国に比べて政府のリクエストが少ない国です。coccocの検索結果に対して、いかなる検閲もありません」とのこと。
「GoogleなどのITの巨人に勝つなんて、今では到底無理そうに思えますが、実はGoogleは新興国まで手が回っていないという現状があり、ローカルサービスはそこで立ち上がって伸びてシェアを得られる可能性があるといえます」とはごもっとも。新興国は新興国で新しいサービスが立ち上がるスペースはまだあるのだ。

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