スピーカーの出音に文句なし
当初、小型の、別にどうってことない構造のバスレフ型なので、ちょっと寂しいローエンドを想像していました。ハイレゾなので解像感で聴かせる方向のチューニングで我慢してね、というエクスキューズ付きの。
ところが、下の帯域の深さと合わせて、そのレスポンスのスピード感は大したもの。これがパッシブラジエーターだと、量感に満足はできても、収束のもたつく感じに無念さが残るわけですが、それはありません。
硬いキックもバツンバツンとタイトに決まり、弦楽器を打ち鳴らすアタック音や、その胴鳴りも音圧としてストレートに聴き手へ到達します。低域の量感があるからといって、箱鳴りのような貧しい成分は聴こえてきません。
もちろんハイレゾ対応ということで、すっかり上まで伸びきったフラットさはさすがです。無理して稼いで、バランスが変になったようなところもありません。なによりスタジオモニターのような解像感が素晴らしい。中央に定位するボーカルと、背後のドラム、そして下を支えるベースの位置関係が、左右だけでなく、前後方向で把握できる。いいオーディオ装置の基本です。
そして音楽が終わって、またびっくり。ノイズのレベルが低い。特にBluetoothの場合、待機中のノイズみたいなものがあるわけですが、それも聴こえません。音質に関しても、Bluetoothでつないだスマホの音とは思えないものでした。ちなみに動画再生時の音声の遅れは、非常に小さいです。
次に、ハイレゾ音源については、ちょうど「DSD Live Streaming」で、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の日本公演がオンデマンド配信されていたので、専用アプリ「PrimeSeat」での再生を試してみました。
さすがにダイナミックレンジの広いオーケストラの再生は素晴らしい。小型スピーカーのニアフィールドリスニングの音場はスケールが狭いと思われがちですが、空間の奥行きを感じさせるディテールの表現もばっちり。
ただ、ダイナミックレンジの広さに気を良くしてボリュームを上げていくと、かなり早めに破綻が始まります。
言い方を変えると、常識的な音量で聴く限り、アンプの出力が25Wであることを忘れるくらいの臨場感があるということです。
もうひとつ難点を挙げると、かなりピンポイントでしかステレオ音像は結像しません。でも、これはニアフィールドリスニングに特化した設計なので、当たり前といえば当たり前。
どうにもし難い弱点もあります。スピーカーの振動板が丸裸の状態でさらされている点です。サランネットも何も付属しないので、猫や小さなお子さんのいるご家庭では、家族の不仲や一家離散など取り返しの付かない悲劇の引き金になるやもしれません。その点をよくご考慮の上、お買い求めください。
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