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吉野家がiPadを大量に必要とする理由

2015年10月01日 14時44分更新

文● 盛田 諒(RyoMorita)

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 牛丼屋のような商売で厄介なのはオペレーションだ。

 吉野家でいえば、野菜たっぷりの『ベジ丼』、牛皿に麦とろろ飯と御惣菜がついた『麦とろ御膳』。新メニューが出たとき、すべての店でスムーズに提供させるには、しっかりした商品設計に加えて、店員の教育が欠かせない。

 しかし、アルバイトの雇用期間は短いもの。せっかく教えてもすぐいなくなる。より簡単に、正確に、そして効果的に教育・研修をする方法はないだろうか。

 そこで吉野家では、店員をiPadを教育に使うことにした。


すべてのオペレーションを動画に

 吉野家が使っているのはジェネックスソリューションズの『ClipLine』というサービスだ。店員はiPadで動画を見て、現場の仕事をおぼえる。逆に、店員が仕事をしているところをiPadで撮影し、管理者に送らせる。

「吉野家のオぺレーションはおよそ1000本の動画によって表現されます」

 ジェネックスソリューションズ代表の高橋勇人氏は言う。

 ただ牛丼をつくるだけでなく、接客を中心とした店員の動きをすべて動画に落としこんだ。つまり新人研修で見るタイプの教育ビデオだが、iPadの場合は店員が正しいオペレーションをしているかどうかの確認もできる。

 ただ確認するだけでなく、データにもとづく待遇の改善も考えられる。同社では回転寿司屋『あきんどスシロー』の経営改革に携わったこともあり、より仕事ができる人にインセンティブがつく仕組みを検討したそうだ。


データをもとに生産性を上げられる

「新人とベテランで、寿司を1分間に作れる個数は5倍もちがう。しかし時給は1200円と1000円くらいしか変わらず、生産性が上がりづらい。そこでClipLineを使って数値化し、客観的なデータにもとづいて点数化しようと」

 動画を使えば、店員1人1人の能力をデータ化できるようになる。能力あるバイトにしっかりインセンティブを出すことで、全体の生産性が上げられるようになるのではないかというわけだ。

 ClipLineは飲食店のようなサービス業を中心に「多店舗展開のマネジメントが非常に難しい、伝言ゲームになる、バラつく……そこに危機感のある会社が興味を持ってくれています」と高橋氏。将来的にはコンビニなどもねらっていく。

 マクドナルドやディズニーランドなどアメリカ型チェーン店の強みはバイトの教育制度にある。吉野家をはじめとする日本のサービスチェーンは、テクノロジーの力で新たな成長力を持てるようになるかもしれない。


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