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情報の取り扱い説明書 2015年版 第12回

ウェアラブルの可能性は視覚以外を拡張することにある

Apple WatchとGoogle Glassは何が明暗を分けたのか?

2015年09月22日 12時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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Google Glassの失敗に見る、視覚情報優位の限界

 

 Googleは眼鏡型のウェアラブル端末「Google Glass」の夢をまだ完全には捨て切っていないらしく、今年1月に一般ユーザー向けの販売を中止したものの、後継モデルの開発を着々と進行させているらしい。ただし、今度はエンタープライズ向けということに主眼が置かれており、ひとまず、医療の従事者や在庫の管理者など、いわゆる業務用デバイスとして再起を図るつもりのようだ。

 一般的には「Apple Watch」と並んでウェアラブル端末の双璧と目されていたGoogle Glassを、失敗と断定するのはいささか早計かもしれない。だが、販売を中止せざるを得なかったことは事実である。1500ドルという価格、対応アプリの数の少なさ、バッテリーの駆動時間などが取り沙汰されているものの、どうも眼鏡型という形態そのものがコンシューマー向けとして成立し得ないのではないかという予感がしてならない。

技術系の記事を専門とするニュースサイト「BUSINESS INSIDER」によると、Googleは「Google Glass」の後継モデル開発を「Project Aura」という名称で再開したとのこと

 諸説あるものの、人間の五感の比率は一般的に「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚」の順に並んでおり、具体的には「87%、7%、3%、2%、1%」とも「75%、13%、6%、3%、3%」とも言われている。なかには「83%、11%、3.5%(嗅覚)、1.5%(触覚)、1%」と、触覚よりも嗅覚を優位とする見解もあるようだ。

 いずれにしてもこれらは居住する地域や環境によっても差異はあるだろうし、同じ人間においても海外旅行などに出掛ければこの五感のチューニングはすぐに変化する。

 共通しているのは視覚が最上位、味覚が最下位であるという点で、この理由については、醜悪なものを見ても直接的に死ぬことはないが、腐食したものや毒性のあるものを食べると命を失う危険性が高いという、生命維持に関するリスクの反映を見る説がある。

 ことほどさように、われわれは圧倒的な視覚優位の世界に生きている。そのため、「だから見た目は大事なんだよ」という話になりがちだ。

 裏を返せば、視覚情報はすでに過当競争の状態にあって、「聴覚、触覚、嗅覚、味覚」の四感をさらに減じて視覚の割合を高めることはかなり困難だということだ。

 俗に「目を凝らす」というのは、一時的により視覚の精度と密度を上げることだが、逆に、情報を遮断して思考を研ぎ澄ませたいとき、人間は往々にして「目を閉じる」ことによって最大の感覚器官の機能を停止させる。そして視覚以外の四感を動員して、一挙に五感の比率をシフトチェンジしようとする。

(次ページでは、「感覚比率のチューニング変更がイノベーションを起こす」)

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