ZゾーンはVAIOの基本姿勢であり、特徴を示す領域
「自立」とともに、もうひとつ、大田社長が掲げたのが「発展」だ。
「発展」では、商品力の強化と販売力の強化がポイント。
商品力では、「PCにしかできないハイエンドゾーンに製品を投入し、PCを、PCらしい使い方をしていただける人に対して、生産性を高めるツールとして提供する」と語り、「数は追求しない。収益を重視し、得意なゾーンで戦う」とする。
大田社長は、「ゾーン」という言葉を多用する。とくに、VAIO ZおよびVAIO Z Canvasがターゲットとする市場を「Zゾーン」と呼び、VAIOならではの特徴によって、切り開いていく市場と位置づける。
「生産性、創造性を高める最高の道具を提供していく。これはVAIOの基本姿勢」と語る。
えっ!? ロボットと思った読者もいると思いますが
もうひとつ、VAIOが商品力を発揮する場が新規事業領域である。
ここでは、ロボット、FA、IoT分野が対象になる。
大田社長は、「これは、突飛なことでなく、高い技術力、生産設備、高いブランド力など、当社のインフラを生かしたものになる」と位置づけ、「ロボットに関しては、ソニー時代にAIBOを生産した人材、設備が、長野県安曇野市の拠点に残っており、それを活用することになる」とする。
すでに、富士ソフトが発売しているロボット「Palmi」を受託生産しており、成長が少ないPC事業に対して、新規事業領域を成長分野に捉え、2017年度には、PCと新規事業領域の収益を1対1にする計画だ。新規事業の受託量の増加に伴い、生産整備の増設を考えていくという。
一方で、スマートフォン事業については、日本通信との提携によって投入した「VAIO Phone」を、「当社が通信事業に出るきっかけになった」としながら、「その経験を生かし、当社が主体性を持った形で、製品開発を行っていく。スマートフォン事業は前向きにやっていくことになる」とコメント。とくに、Windows Phoneは法人需要を切り口に、前向きに検討をしていくと語った。
もうひとつの販売力の強化では、先に触れた営業部の設置に加えて、米国およびブラジルでの展開も開始する。
米国では、トランスコスモス アメリカと提携。同社を通じたECサイトでの販売のほか、マイクロソフトストアでも販売する。
昨年、米アドビシステムズが開催したAdobe Max 2014で、VAIO Z Canvasを参考展示したところ、クリエイターから高い評価を得たことで、米国での販売を決定。これを足がかりに、米国での販売拡大を図る。
また、ブラジル市場向けには、現地のパソコン最大手であるポジティーボ・インフォマティカに、VAIOの商標をつけたPCの製造、販売、サービスを含めた委託契約を行い、ポジティーボ・インフォマティカが、ODMから、VAIO Fit 15シリーズなどを調達して販売することになる。
「海外向けビジネスは、パートナーと組んで展開する。米国はOEMビジネスによる正攻法だが、ブラジルはリスク管理を考慮して、ブランドロイヤテリィビジネスとした。今後もアジアなどへの進出を検討するが、市場性にあわせたパートナー展開を行っていく」とした。
大田社長は、家族で5台ものVAIOを持つVAIOファンでもある。15年以上、VAIOを使い続けている。VAIOの社長就任が決定した際に、家族は喜んだという。
これまで社長を務めてきた会社では、再建が課題。そこに手腕を発揮してきたが、VAIOは創業フェーズ。だが、ソニー時代の流れを組む企業を成長路線に乗せるという点では再建と同じ手腕が求められるのかもしれない。
62歳の大田社長は、「私の社長としての役割は、VAIOを自立させるとともに、VAIOからファンドを追い出し、日本企業の新たな事業会社による株主を得るか、あるいはIPOするかという点。どちらかをやり遂げるまでは辞めない」と語る。
「世界のVAIOをもう一度輝かせたい」と意気込む大田社長の手腕が注目される。
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