パナソニックが、ブラジルにおけるBtoBソリューションの強化に乗り出している。とくに、2016年に開催されるリオデジャネイロオリンピックの開催にあわせて、ブラジル国内では、スタジアムへの大型映像ディスプレイの納入などに注目が集まっているが、パナソニックはそうしたなかで、AV/サイネージ事業を加速。2016年以降までを視野に入れた中長期的な観点でBtoBソリューション事業の拡大を図る。
ブラジルを統括するパナソニックブラジルでは、2014年度には15%だったBtoBソリューションの売り上げ構成比を、2018年度には30%にまで引き上げる計画であり、これにより、2014年度には15億レアル(約600億円)のブラジル国内での売上高を、2018年度には20億レアル(約800億円)に拡大する。ブラジルの現地を訪れ、パナソニックのBtoBソリューション事業の取り組みを追った。
BtoBは先進国主導、しかし中南米の成果は著しい
パナソニックは、全社規模でBtoBソリューション事業の強化に取り組んでいる。2018年度には、全社売上高10兆円を目指すなかで、BtoBソリューションの売り上げ計画を2兆5000億円と策定。家電や車載、住宅、デバイスと並ぶ、5つの事業領域においては、BtoBソリューション事業の売り上げ規模が最も大きい。
BtoBソリューション事業では、日本が1兆2000億円、欧米が8000億円の売上高を計画し、重点分野に位置づけているのに対して、新興国による海外戦略地域は5000億円とまだ規模は小さい。しかし、ブラジル、メキシコをはじめとする中南米地域では、パナソニックならではの強みを生かしたBtoBソリューションの成果がいくつもあがっている。
とくに、ブラジルにおいては、2014年のサッカーワールドカップに続き、2016年にはオリンピック/パラリンピックが開催されることもあり、数多くのスタジアムが建設されるとともに、各種インフラ整備が促進されている。パナソニックにとっては、AV/サイネージ事業を拡大するチャンスを迎えているといえる。
「パナソニックが持つ資金力、ブランド力、営業力、技術およびR&Dといったパナソニックの経営資源を生かし、ブラジルにおけるAV/サイネージ事業を拡大したい」と、パナソニックブラジル コーポレートプラニングマネージャーの立川英樹氏は語る。
ブラジルにおいては、ホテルや病院などの「ホスピタリティ」、スタジアムや劇場などの「エンターテインメント」、空港や鉄道などの「交通」、銀行をターゲットとした「ファイナンス」、ファーストフードチェーンによる「QSR」(クイックサービスレストラン)の5つの業界を対象に、デジタルサイネージ事業、エナジーソリューション事業の2つの基軸ソリューション事業を「5×2」として重点的に攻略。
「これまでは、日本から製品を輸入して、そのまま販売するという、いわばボックスの販売形態であったが、2012年からは、ワールドカップ需要や、オリンピック需要をターゲットに、エンジニアリング、設置、スタートアップまでの工程を含めて提案する、ターンキー型の販売手法へとシフトしている。
2018年度には、カスタム設計、設置、メンテナンス、コンテンツといった領域によるエンジニアリング・サービス事業を新たな柱にすること、ブラジルナンバーワンのフルターンキー型デジタルサイネージソリューションプロバイダーになることを目指す」(パナソニックブラジル・立川氏)
とくに、ブラジルのサイネージ市場においては、市場全体の7割が、設置、ソフトウェア、コンテンツ、メンテナンスなどのサービス領域が占めており、この領域の収益性が高い。パナソニックでは、現時点ではサービスの構成比はようやく2桁に乗った程度。
「今後は広告コンテンツの内制化や管理、保守サービスの売り上げ比率を拡大し、2018年度には、サイネージ関連売り上げのうち、3~4割をサービスで占めたい」(同)