カシオは計算機の会社だ。社名も正しくはカシオ計算機。
「答え一発!」『カシオミニ』発売は1972年、カシオ初代電卓『001型』発売は1965年。計算機屋の50周年を記念して、カシオは16日、究極の電卓『S100』を発表した。9月30日発売で、市場想定価格は2万7000円。
よく知っている電卓の形に、開発者のこだわりを徹底的につめこんだ。
本体の素材はこの1台のためにアルミニウムを切削し、ヘアライン加工を入れたもの。液晶の中でもハイグレードのFSTN液晶を使ったディスプレイには、見やすくするため表・裏に反射防止コーティングをほどこしている。
ディスプレイの数字は万年筆をイメージしたネイビー表示。キーには電卓業界初となるV字ギアリング構造を採用し、キーの端で押したときと、中央で押したとき、どちらでもおなじだけの返りがあるようにしている。
カシオがフラグシップモデルに選んだ道は「正当進化」。万年筆や腕時計と同列に語れる電卓をつくろうというものだった。
フラグシップモデルの企画は2年前からつづけてきたもの。社内で50種類以上のアイデアが挙がった中から、最終的に、デザインはいままでのまま「表示部」「数字を入力するキー」「筐体」を徹底的に追及する道を選んだ。
なぜ正当進化か。たとえば『カシオミニ』発売当時は、現在でいうスマートフォンのような最新デジタルガジェットだった。しかしいまや電卓はコモディティー化し、100円ショップでも買えるようになっている。
ところが安物の電卓は、使っているうちに筐体とキーがこすれあい、数字が入力されなかったり、ほかの数字が入力されたりといった不具合も出やすい。モノとしても所有のよろこびを与えてくれる電卓も多くはない。
そんないまこそ「計算機のカシオ」として、実務電卓の正確性・堅牢性を持ちながら、机に置いておきたくなる電卓をつくるべきなのではないかと考えた。
S100は中国工場ではなく、山形にある自社工場で組み立てる。熟練の技術者たちが厳しい審査基準で、1個1個の部品をなめるようにチェックするそうだ。トレーサビリティーの意味でシリアルナンバーも入れるとか。
電卓市場ではシャープやキヤノンなどの競合がいるが、カシオの技術者は社名に“計算機”をかかげるだけのプライドがあると、担当者は熱く語っていた。ちなみにこの値段でもほぼ元がとれない設計になっているらしい(!)。
じつは前からフラグシップを出すと予告されていたので、逆ポーランド式でも出すのだろうかとどきどきしていた。高級路線のS100も素敵だけど、次は安価でコンセプトのおもしろい電卓を作ってくれたら、それはそれで嬉しい。
(関数電卓にはCLASSWIZという化け物のような製品があるんだけどね)