Apple Musicがサービスインして以降、音楽の定額配信サービスがにわかに注目を集めている。数百万曲にも及ぶ音源ライブラリが自由に聴き放題というので、私の身の回りもこの話題で持ちきりだった。
そこで感心したのは、やはりアップルのブランド力の強さ。というのも、一般的な認知度が低かっただけで、定額配信サービスは以前から国内にも存在していたし、今も複数のサービスが存在しているからだ。
なぜ、今まで話題にならなかったのだろうか? そして、これからは流行るのだろうか?
そこで、いま国内で展開されているサービスをピックアップしながら、Apple Musicだけじゃない定額配信サービスとの付き合い方を考えていこうと思う。
始まっては消えを繰り返してきた定額配信
国内初の定額配信サービスは、タワーレコードが米ナップスターと合弁で始めた「Napster Japan」だった。サービス開始は2006年10月3日。P2Pファイル共有ソフトとして悪名を轟かせたソフトが、同じ名前、同じキャラクターで、更生して戻ってきたのだ。
基本料金は月額1280円、配信曲数は約900万曲と、今のサービスと比べてスペック的にも見劣りしない。タワーレコードと資本提携していたNTTドコモも、Napster Japanのコンテンツを利用したiモード向けの「うた・ホーダイ」などを展開し、それなりのキャンペーンを張っていた。しかしNapster Japanは、2010年5月末にサービス終了している。
その理由は、米ナップスターが進めるプラットフォームの移行に対応するため、新たな投資が必要だがそれに見合うだけの収益が得られない、と説明された。その後、米ナップスターも、2011年に同じ音楽配信サービスのRhapsodyに買収され消滅している。
国内では、その後も定額配信サービスはいくつも立ち上がっている。エムティアイの「music.jp stream」、エイベックスデジタルの子会社であるETスクウェアの「music Chef」、ソニーの「Music Unlimited」(海外では「PlayStation Music」へ移行したが日本国内の展開は未定)など。しかし、いずれも始まってはすぐに消えの繰り返し。
その理由は、まずサービスの知名度が低かったこと。結局、Apple Musicが始まるまで、日本国内では定額配信サービスは一般的な話題にもなっていなかったし、コアなリスナーにも人気がなかった。
そして料金の問題。月額約1000円、年間にして1万円を超える料金をどう評価するか。もちろん熱心なリスナーには夢のように安く感じるかもしれないが、年にCDを1枚買うか買わないか程度の人々には高すぎるのだ。
そうしたライトユーザーにアピールするには、今流行っている曲、みんなが話題にしている曲が聴けることが重要なのだが、日本の定額配信サービスは邦楽のラインナップが薄い。音源を持つレーベルやプロダクションの判断で、音源を出してもらえていないケースが多い上に、音源が提供されるにしても、新曲はリリースから音源提供までの待機時間が設定されている場合があって、話題になっている時期に聴けないのだ。
(次ページでは、「ラジオ型サービスの特徴は?」)