音楽を一緒に楽しむためのインターフェース
BSP60も一応はスピーカーであり、音響機器なので、音質については言及しておかなければなりません。
スペックについては、2.5Wという出力のみで、詳細は発表されていません。そのスピーカーは、なんと2つの丸いカバーの下に仕込まれています。音声で応答する際にはこれが開くわけですが、開きっぱなしではなく、断続的にパカパカと動く。もちろん音楽再生時にも。だから、そのたびに音が変わるわけです。
おまけに本体まで勝手に動き回りますから、音の位相もそれに合わせて動きます。クルッと一回転することもあるので、そうなるともはやレスリースピーカーのようなもの。おまけに駆動輪の「ジーッ、ジーッ」というモーター音も入るので、S/Nも最悪です。
でも、いいんです。だっておもしろいんだから。いい音も大事ですが、それだけじゃない。音楽を楽しく聴くための新しい装置、その提案が、おそらくBSP60でしょう。
このスピーカーの親和性が高いのは、最近なにかと話題の定額配信サービスではないかと思います。今のところ曲名もアーティスト名も読み上げてくれませんが、ああしたサービスは、音楽の発見を目的としたレコメンデーションを売りにしています。そのために音楽ライブラリを分類し、パターンマッチングさせるためのキーワードをいくつも持っているはずです。
それを利用して自然言語の対話型インターフェースを作れば、「もうちょっと軽い曲ないの?」とか「今の曲の感じでほかのはないの?」みたいなリクエストに答えてくれるようになるでしょうし、そのアーティストについてもっと知りたければ、履歴やディスコグラフィーを読み上げてくれるくらいのことはすぐできるでしょう。
もちろん、そんなことはスマホだけでも十分にできるのですが、BSP60を使ってみると、ロボに教えてもらったほうが断然楽しいように思えるわけです。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ