IGZOが液晶も有機ELも大きく進化させる!?
薄型テレビというか、表示パネルの技術としてもうひとつ注目したいのが「IGZO」だ。これはシャープが量産化に成功した酸化物半導体のことで、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)を結晶化したもの。
それぞれの頭文字をつなげてIGZOとなる。液晶パネルは画素の駆動(液晶分子の回転の制御)をアモルファスシリコンなどを使ったTFT駆動で行なっているが、アモルファスシリコンの代わりにIGZOを使うと、トランジスタや配線を細くすることができるため、画素の開口率が高くなり、画面が明るくなる。
つまり、同じ消費電力でより明るい、同じ明るさならば低消費電力となる。スマホなどの表示パネルとして使う場合は、静止画表示の消費電力を大幅に低減させることもできるため、さらに省エネだ。
静止画表示の頻度が少ないテレビとしてはあまり低消費電力にはならないかもしれないが、画面の高輝度化はHDR技術にも有利など、画質面での向上も期待できるだろう。
ついでに言うと、有機ELパネルも画素の駆動はTFT駆動なのでIGZOの応用は可能。そうなると、開口部(有機ELの場合は発光する画素部分の大面積化)が可能になるので、絶対的な画面の明るさをカバーする意味でも有効な技術と言えそうだ。
このほか、電流の流れる速度が速いなどの特徴もあり、2倍速(120フレーム/秒)や4倍速(240フレーム/秒)といった倍速表示にも有利と言えそう。IGZOもまだ中~小型ディスプレーの分野で製品化が実現した段階で、薄型テレビのような大型ディスプレーでは採用例がないが、今後薄型テレビで実用化できるようになると、さらに画質が進化していくことになるだろう。
高精細だけが薄型テレビの進化じゃない
よりリアルな映像表現に期待!
筆者はAVライターという職業柄、比較的早い段階で4Kテレビを手に入れたが、現有のちょっと古い4Kテレビよりも、ここ最近の4Kテレビの方が明らかに画質がよいとひとめでわかる。
それは、単に高精細化しただけではなく、広色域化や高輝度表示など、映像表現のためのさまざまな要素がバランスしたことで、画質の良さがはっきりとわかるようになったことを示している。要するに、いよいよ4Kテレビも買い時になってきたと実感している次第だ。
最終回となる次回では、テレビメーカー各社の最新技術を紹介していくことにする。広色域や高輝度表示など、同じに見える技術を各社がどんなアプローチで製品に採り入れているかを紹介していこう。
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