今のスマホユーザーは
未使用分のデータ通信料をたくさん払っている
Googleは招待制のEarly Access Programとして、様子を見ながらProject Fiの展開を開始する。Googleの目的は何なのだろうか? とりあえずGoogleが収益を目的としているとは思えない。
Pichai氏はMWCでAndroidでのNexus(リファレンスモデル)に例えて「ハードウェア、ソフトウェア、接続のすべて考える必要がある」と出発点を述べた。ネットワークオペレーターに何が可能かをGoogleの視点から示すという位置付けだが、同社のコア事業、それに通信事業者、デバイスメーカーなどとの関係を考慮しても大規模なサービスに成長させることを狙っているわけではないだろう。Project Fiでの広告やユーザーデータの利用などについては、現時点ではわからない。
ではGoogle Fiがオペレーターにどのような影響を与えるのか。
MWCでMVNO事業の展開を示唆した際、課金関連で新しいモデルをもってくるのではと期待していた。料金そのものは、必ずしも低コストを売りにしているのではなく、わかりやすい料金体系(シンプルさ)、それに経済性に尽きる。
つまり、モバイルデータ通信の翌月繰り越しだ。日本でも未使用分の繰り越しが導入されつつあるが、Project Fiでは繰り越し分を1MBを1セントと計算し、翌月にクレジットとして加算する。ユーザーが設定したデータ通信料金から差し引かれるとしているので、ユーザーは節約を実感できそうだ。
たとえばGoogleの説明によると、月3GB=30ドルの設定をしていた場合、未使用分が800MB(=8ドル)あった場合は、翌月のデータ料金は設定している30ドルから8ドル差し引いて請求されるとのことだ。
Wall Street Journalによると、米国では典型的なスマートフォンユーザーは毎月28ドル分のデータ通信料を、実際には使わないまま支払っているという(2013年の調査)。Project Fiのような一種の払い戻しはすでに米国のMVNO、Republic Wirelssが提供しているようで、今後他社が追随するかが注目される。
Wi-Fiの活用が進むことはモバイルネットワークを高価にしている周波数帯問題の1つの解決策となるが、通信事業者には役割の見直しを強いるものとなる。複数社のネットワークと免許不要のWi-Fiから最善のものを選ぶことができる。
つまり、最善のネットワーク(土管)を提供しなければユーザーは他のネットワークに簡単に乗り換えることが少しずつ可能になっていくことを意味しているからだ。なおオペレーター側もWi-Fiの活用に積極的で、MWCでは免許不要帯(つまりWi-Fiで用いられている周波数)でLTEのデータ通信を行なうLAA(Licensed Assisted Access)は重要なキーワードとなった。
MVNOという意味では、中国ではLenovoやXiaomiがMVNOを開始するとみられており、世界的にモバイルキャリアビジネスの激動が続きそうだ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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