スペイン・バルセロナで3月2日に開幕した「Mobile World Congress 2015」で、米Googleでプロダクト担当上級副社長を務めるスンダー・ピチャイ氏が基調講演に登場。Androidからネットワークプロバイダー事業など、Googleのモバイル分野全体の取り組みについて語った。
その中で、すでに各メディアでウワサになっているGoogleによるMVNO事業について触れ、数ヵ月以内での開始を示唆した。また、GoogleのMVNO事業の位置づけについて、Android全体におけるNexus端末にたとえた。
人々の生活に欠かせないモバイル端末
その10台のうち8台がAndroidだ
ピチャイ氏はまず、Googleにとってのモバイルについて次のように語った。「モバイルとは、単なるスマートフォンにとどまらない。パワフルなコンピューティングデバイズだ。これらのデバイスがクラウドに接続し、そこにはGoogle(のサービス)がある」。
たとえばモバイル端末でGoogleのサービスを利用する例として、スペイン語を話せない人がスペインに来て、スマートフォンから「Google Translate」のリアルタイム音声翻訳を使って、自分の言語でタクシーに乗って行く先を告げたり、マーケットで買い物をする様子をビデオで見せた。
「(ユーザーは)平均すると毎月1000万時間をモバイルに費やしている。(米国の年末商戦の)ブラックフライデーでは取引の40%がモバイルで行なわれた」と語る。
人々の生活に欠かせないモバイルを独占するのが、Googleが2008年に開始したAndroidだ。先にIDCが発表した最新の市場データでは、Androidのシェアは81%と報告されている。「10台に8台がAndroidだ」。
しかしAndroidは、スマートフォンとタブレットにとどまらないセグメントに向けて拡大している。時計、TV、自動車、VRヘッドセットなどのジャンルを挙げながら、「VRは、Androidを土台として利用するセグメントとして重要なものになる」と述べた。この分野でGoogleはAR技術のMagic Leapを買収しているが、具体的な計画については触れなかった。
なお、会期中にファーウェイ、LGなどが最新のスマートウォッチを披露しており、Androidの最大のライバルであるAppleはMWCの後に「Apple Watch」の発表会がウワサされている。
スマートウォッチ分野でのAppleとの競合についてピチャイ氏はモデレーターの質問に答える形で、「2015年はウェアラブルにとって大きな一年になるだろう。たくさんのユースケースがあり、Appleは自分たちのやり方で素晴らしいことをするだろう」とした。ウェアラブル全体については、「コンセプトからユーザーの生活に入ってくる」と起爆が近づいていることを予言した。
世界の40億人はまだネットワークに接続していない
そんな人たちの取り組みを語る
通信サービスについては、「インターネット接続が当たり前ではない地域がたくさんある」と世界地図を見せ、「まだ世界の40億人はネットワークへのアクセスがない」と述べた。ここでの取り組みとして、ピチャイ氏は「Google Fiber」「Project Loon」「Project Titan」の3つを紹介した。
Google Fiberは光ファイバーを敷設するもので、テキサス州オースティンなど複数の都市で実験中だ。Project Loonは4年前にスタートしたプロジェクトで、機能を搭載した気球を浮かべることでアクセスを提供するというものだ。「過疎地にインターネット接続を提供できる」とする。
2年前には3G接続で、気球を浮かべる時間も最長で3日だったが、現在はLTEになり、期間も6ヵ月を実現したとのことだ。Vodafone、Telefonica、Telstraのオペレーター3社と大規模なテストを開始したところという。
Project Titanは飛行機を利用してネットアクセスを提供するプロジェクトで、Loonを補完するものとなる。その進捗については、「Loonの2年前の段階」とピチャイ氏は述べ、多くを語らなかった。そして、「長期的な目でみると、人々はインターネット接続に対価を払うようになり、我々のサービスを利用するユーザーが増えることになる」とGoogleが投資する理由を語った。
なお、ネットアクセスの普及については、Facebookも業界団体のInternet.orgを中心に取り組んでいる。協力する可能性について聞かれるとピチャイ氏は、「1社でできる作業ではない」「Facebookと喜んで協業する」としながらも、2社の取り組みは異なり、「補完の関係」になるとした。
ちなみにこの日の夕方に基調講演に登壇したFacebookのMark Zuckerberg氏も、別のモデレーターからGoogleとの協力について聞かれたが、「もっと協業したい」と述べるにとどめ、積極的な姿勢は見せなかった。
(次ページでは、「GoogleにとってのMVNO事業はNexus端末のようなもの?」)
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