MVNOが盛り上がっているのは日本だけではない。以前からMVNOモデルが定着している米国で、Googleが「Project Fi」としてモバイルネットワーク事業を開始する。端末を自社ブランド(Motorola製)の「Nexus 6」に限定し、規模を制限してのローンチとなりそうだが、業界にどのような影響を与えるのかが注目される。
SprintとT-Mobileという2社のネットワークを
MVNOとして利用
3月初めのMWCでGoogleのプロダクト担当上級副社長Sundar Pichai氏が「数ヵ月以内に」と語っていたとおり(関連記事)、4月22日にMVNO事業を「Project Fi」として発表した。だがその内容は数十種類ある米国の既存MVNOサービスと大きく異なる点がある――SprintとT-Mobile USAの2社のネットワークを利用するのだ。
このほかGoogleが明らかにしたことは、端末と料金プラン。端末は昨年10月に発表した「Nexus 6」のみ。料金は、月額の20ドル基本プラン(無制限の音声通話とSMS、テザリングが可能)に、月1GB/10ドルのデータ通信の料金が必要。未使用分は繰り越しも可能で、未使用分が次の月にクレジットとして追加される。国際ローミングは約120ヵ国をサポートし、モバイルデータ通信は米国内と同額。通話は1分20セントなどとなる。
無線LANを最大活用するのも大きな特徴
Project Fiの特徴はネットワークと課金だが、ここではネットワークを見てみたい。
前述したとおり、GoogleはSprintとT-Mobile USAの2社と回線利用契約を結んでおり、主要都市ではLTEが利用できる。2キャリアに加え、もう一つの特徴がWi-Fiの活用だ。携帯事業者にとってのWi-Fiは通常、データ通信の補完的な存在と位置付けられるが、Project FiではWi-Fi上での通話やSMSなどを可能にするWi-Fi Callingなどの技術を利用して最大活用する(Project Fiでの米国内でのWi-Fi通話は無料)。どのネットワークを利用するのかについては、最新技術の利用により、最もシグナルが強い最も高速なネットワークを利用できるという。
Project Fiのページからは、Wi-Fiの活用に大きく主眼を置いていることが伺える。「高速かつ信頼性が高いと我々が確認した数百万ものフリーかつオープンなWi-Fiホットスポットに自動的に接続する。これにより高速な接続と安価なコストを支援する」としている。通話については、Wi-Fiを利用した通話を開始し、Wi-Fiの信号が弱くなるとシームレスにLTEなどのモバイルネットワークに接続するとのことだ。
SIMカードは通常1社の通信事業者から発行される。Project FiはSprintとT-Mobile USAの2社が利用できるため、SIMカードはデュアルタイプのIMSI SIMを使っていると予想されている。
SprintやT-Mobile USAとの契約がどのようなものかはわからないが、Wall Street JournalによるとSprintとの話し合いは難航したとか。会長の孫正義氏まで上がっての決断だったと報じている。孫氏、それに同社元CEOのDan Hesse氏も懐疑的だったというが、最終的にGoogleが容量制限を設け、容量を拡大する際は再度協議するということでまずは契約に至ったという。
サポート端末をNexus 6に限定している点は、制限的なローンチで様子を見るという狙いと同様、端末側の実装にも関係ありそうだ。Project Fiはまた、番号が端末に縛り付けられていない点も特徴だ。Googleのメッセージサービス「Google Hangouts」をサポートするPC、iOSを含むモバイル端末などと連携も可能という。
(次ページでは、「今のスマホユーザーは未使用分のデータ通信料をたくさん払っている」)
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