年明けの1月6日~9日に米国ラスベガスで開催されたInternational CES 2015。現地時間の7日に開催された米インテル社の基調講演では、パソコンの新しい利用スタイルが提案された。
印象的なボタン型のデバイス「Curie」や、パソコンに触れずジェスチャーで操作できる「Real Sense」といった印象的なプレゼンテーションとともに提案されたのが、煩雑なネットワークケーブルやパスワードなどから解放された新しいパソコンの利用方法だ。
これを支えるものとして、Intel Securityが取り組んでいるのが“True Key”と呼ばれる技術だ。True Keyは、顔認証や指紋認証、あるいはユーザー自身のスマートフォンを持ち運んでいるかどうか、といった複数の条件から、個人を特定し、パスワード入力なしに、機器やサービスへのログインが可能になるもの。TrueKeyの現在機能限定版はすでに提供中だ。
WindowsマシンやMacintoshはもちろん、iPhone/iPad、Android端末などでも利用でき、すでに米ヒューレット・パッカードやレノボなど複数のメーカーが対応を表明。「McAfee LiveSafe」など、セキュリティーソフトの機能にも盛り込まれる計画だという。
True Keyの目的は端的に言って、パスワードをなくすことだ。パスワードは認証のために十分に普及した方法であるが、管理の煩雑さに加え、実際にはセキュリティー上のリスクもある解決策だ。具体的には、単一のパスワードを流用することによるリスクや、入力したデータの漏洩や盗聴などの危険性があるからだ。
インテルは昨年12月に、無料で利用できるオンライン型のパスワード管理サービス「PasswordBox」を買収した。PasswordBoxは、Chromeなどのブラウザーの機能拡張で動作するもので、セキュリティーが担保されたクラウド上でユーザーの認証情報を管理し、リストバンド型の生体認証デバイス「Nymi」との連携なども考慮されている。
True Keyでは、大事な認証情報をクラウド上のパスワードマネージャーで守り、その起動のために生体認証や、個人を特定できるデバイスを複合的に利用する考え方で提供されるという。
一例として顔認証の活用などがあるが、たとえば自宅の無線LANに接続されている場合は簡略化した顔認証だけでログインできるが、外出先の喫茶店などではよりセキュリティーが重要になるため、顔認証に加えて登録されているウェアラブル端末があるとか、自分自身のスマートフォンが近くにあるなど複数の条件が整った場合だけ認証が通るようにするといった工夫をしているという。
利用方法としては、アプリをインストールし、サーバーと通信。認証情報は複数のデバイスで同期させる。認証情報は、クライアント側に暗号化された状態で保存されており、クラウドと通信することでその鍵が開き、認証が行える仕組みだ。
またその名称が示すように「鍵」の役割を果たすため、セキュリティーカメラによる顔認識とスマートフォンの組み合わせでマンションの鍵が開くなど、将来的にはネットワークや機器への認証だけではなく、現実世界への応用も考えているという。
インテルの基調講演でも、True Keyの技術を用い、多少トラブルはあったものの、顔認証でドアを開くというデモが紹介された。
米国ではプログラムリリースという形で、抽選で選ばれたユーザーに対してサービスを無償提供している段階。国内での提供も考慮されているが、日本の独自のウェブサービスに合わせるなど、ローカライズの要素があるため、詳細はまだ未定だという。
True Keyの開発には、マカフィーのチームも協力している。マカフィーは昨年インテルに買収され、徐々にIntel Securityのブランドへと移行している段階だ。現状ではあくまで「パスワードの要らない社会を作る」というもコンセプトを示している段階だが、パートナー企業とのエコシステムも構築しながら、戦略的なコンセプトとして、新しい仕組みを作っていくことに注力していくという。
