4.3kgという軽さで話題のフルサイズ61鍵のシンセサイザー「KROSS」。PCM音源のEDS-i(Enhanced Definition Synthesis - integrated)を内蔵した、コルグお得意のワークステーション型で、シーケンサーからエフェクター、そしてオーディオレコーダーまで、音楽制作に必要な環境をひと通り内蔵している。
他社からも軽量さをウリにするシンセサイザーはいくつか出ているものの、重さと価格で一歩抜きん出た存在。そしてPCとDAWの音楽制作が一般的な現在、携帯できるフル鍵盤付きのワークステーションをリリースする狙いは何なのか。コルグ開発チームに聞いた。
ライバル機種一覧 | ||||
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製品名 | KORG KROSS | Roland JUNO Di | Roland JUNO Gi | YAMAHA MX61 |
重さ | 4.3kg | 5.2kg | 5.7kg | 4.8kg |
電池駆動 | ○ | ○ | ○ | × |
実勢価格 | 6万3000円 | 6万9800円 | 9万9800円 | 6万9800円 |
※ 価格は店頭価格です
軽さは「ライブの時代」のニーズ
―― まず、このスペックで4.3kgはものすごく軽いと思うんですが。
岡崎 弊社のワークステーションで電池駆動は初めてなんですけれども、それならまず軽くしようと。それと取っ手を付けて、モバイル感を出そうというところで、こういったデザイン、形状、重さになっています。ストリートで演奏してもらうことを意識していまして。
中原 ストリートにかぎらず、別に野原でもいいし。移動の際の軽さというのがあるので。
―― 他社からも軽いシンセが出ていますけど、ここに市場があるということなんでしょうか?
川原 圧倒的に女性から多いリクエストは軽さなんですよね。
中原 いまライブの時代ということもあるので、こちらの方に楽しさがあるよというのは、メーカーも主張したいところだと思うんです。これの前身にあたる「X50※1」もいいキーボードなんですが、ちょっと女の子には操作が難しいなと思っていて。実はこういった簡単に使える路線では「PS60※2」であるとか、いろいろな製品を出しているんですが、それがやっとここに来たという感じですね。
―― 最近だと「けいおん!」のキーボードの方※3が、コルグのワークステーションを手で持っていますよね。
中原 はい、力のある方なんでしょう、おそらく。
―― あんな風にキーボードを持つ女の子は絵になるんですが、重量の点で無理なわけですよ。その点、KROSSは鍵盤ハーモニカ感覚ですよね。この取っ手とか。
中原 X50も両側に取っ手を付けていたんですが、「どうせ持つなら真ん中に付ければいいじゃないか」って。シンメトリーはカッコいいじゃないですか。だからデザイナーは「両側のほうがカッコいいのに」って言うんですけどね。
―― カッコいいけど、取っ手が両脇にあると「せーの」で持ち上げるイメージですよね。これだとカバンみたいに「これは一人で持てるものだ」と形が訴えている。
中原 この取っ手の座ぐりを増やすために、ケース側の肉を削っているんですよ。中のコンデンサーとかに当たるので。それやったからって、何ミリも変わらないんですが、少しでも薄く見せたかったのでギリギリまで攻めたんです。
―― あんまり軽いと耐久性も心配ですが。
中原 リブを結構入れていて、上ケースときっちり合わせることで、全体としてシェルのような強い構造体になっています。電車なんかで持ち運びの際に、床にドンと置いたりとか、多少ラフに扱っても大丈夫なようには作ってあります。
岡崎 発売に合わせてケースも出ますよ。ショルダータイプで赤いものが。4.3kgといっても、やはり重いという方はいらっしゃるので、ショルダーのほうがいいだろうということで。
中原 縦にして背中に背負う感じですね。ベースみたいな感じです。ちょうど重さも。
―― もっと重いベースありますからね。しかもエフェクターを持って行くと、もっと重くなる。
中原 KROSSはエフェクターも入ってますから。電池を入れていけばACアダプターも要らないし。
―― 電池の持続時間は4時間ですよね。これはどんな条件ですか?
泉山 単3のアルカリ、もしくはニッケル水素で4時間です。条件が良ければもっと持ちます。
川原 「最低で」4時間なんですよね。大体ワンステージ持つ長さを意識したんです。
―― 最短時間が4時間というのは親切な言い方ですよね。
岡崎 奥ゆかしい社風なので。
※1 X50: 61鍵で4.3kgとKROSSと同じ重さ。ただし電池駆動ではなくワークステーション的な機能もない
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