今から30年前の1982年に満を持してソニーから発売された、据置型CDプレーヤー「CDP-101」は、当時の学卒初任給ではまだまだ足りない16万8000円という高額商品だった。大阪日本橋のなじみのお店にずっと前に予約して、発売日に自宅に持ち帰った筆者は、そのCDプレーヤーと、その日にお店にあった3枚のCD(コンパクト・ディスク)を喜々として持ち帰った。
それまでのアナログレコードの取り扱いの面倒さや再生ノイズ、時間とともに劣化するアナログ・マテリアルに対して、CDはまさに“魔法の光る円盤”だった。CD登場の当初から、実はアナログの方が音が良いとか、それにまつわるノスタルジー的な都市伝説も多くささやかれたが、あれから30年。当時としては圧倒的な16bit/44.1KHzのデータ処理容量も色あせ、IT技術が進んだ現在では、CDに入るデータ量を大きく超えた高音質音源をネットワークを介してユーザーに簡単に届けることができる時代になった。
普及したCDレベルの音源品質をより多くの人がアウトドアで楽しむDAP(Digital Audio Player)の世界標準は、誰もが知っているAppleのiPodシリーズだ。30年前に比べて人類の聴覚がどれだけ良くなったのかどうか筆者には知るよしもないが、世の中のトレンドは、定義は不明確だが音質的により良い音を求めて、再びさまよい始めた。
2001年にその初代機が発売されたiPodは、すでに何世代もモデルチェンジを重ね、筆者も愛用している最新のiPod nanoは16GBのメモリーを搭載してなんと1万2800円だ。市場が拡大し、普及が進むと、いつの時代も同じだが、誰もが持っているありふれた標準機ではなく、より個性的なモノやより高音質へのアプローチをしている商品にも自然と注目が集まる。
売れ筋の商品を避けて、めったに他人とかぶらない商品を選択することは、商品の技術的安定性や総合的な品質を考えれば、価格的な負担やさまざまなリスクをともなう危険性も大きい。しかし、あまのじゃくな筆者は、他人とは滅多にかぶらないDAPである「Colorfly C4」という個性的なハードウェアをここしばらく愛用している。
Colorfly C4はDAPとしてはかなり巨大なサイズだ。音質的にはとても気に入っているが、とにかく大きくて重い。鞄を持たず手ぶらで気楽に出かけるときにはまず持ち出すことを躊躇するサイズだ。そういう時に時々使っていたのが新しいiPod nanoだったが、どうしてもハイレゾ音源に対応できるコンパクトなDAPを欲しくなりだしていた。
一番最初に候補に上がったのはThe Altmann Micro Machines社の「Tera Player」(実売約11万7000円)だったが、軽く予算オーバーでパス。そんな時、アイリバー社が発売開始したAstell&Kern「AK100」の現物と秋葉原の「eイヤホン」で出会った。AK100は、ネットワーク時代のハイレゾ音源の世界を背景に、個性的で高音質を目指した新しいコンパクトサイズのDAPだ。
高級志向を目指す商品らしくマットでブラックなパッケージを開くと、ソリッドでコンパクトな割にはズッシリ感のある122gのブラッキーな本体が出てくる。標準イヤフォンは付属せず、充電とデータ転送用のmicroUSBケーブルと、携帯用のポシェット、数曲のハイレゾ音源が収録されたmicroSDカード、液晶保護シール、マニュアル類が付属する。
一般的なDACはそのほとんどすべてが標準的なイヤフォンを標準同梱しているが、AK100は、ユーザーが愛用のイヤフォンを使用することを前提にして、実質的な販売価格を低く抑えている。今回、筆者はイヤフォンとして、日常愛用している「AKG3003」や、最近購入した「AKG K374」、昔から使っている「Shure E500PTH」など、数種類を使って試してみた。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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