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T教授の「戦略的衝動買い」 第225回

ソリッドなコンパクトさに惹かれAstell&Kern「AK100」を衝動買い

2013年01月09日 12時00分更新

文● T教授、撮影● T教授

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外観はヘアライン加工
ボリューム調整は152段階で可能

 AK100の外観上の特長はヘアライン仕上げのソリッド感と、唯一突起したアクセント的な回転式のボリュームダイヤルだ。152段階と極めて細かい調整のできるボリューム調整は2.4型のタッチ液晶でも、ボリュームダイヤルのいずれでも操作可能だ。数種類のイヤフォンで試してみたが、極めて微妙な音量コントロールができることがほかのDAPとの大きな差だ。

唯一の出っ張りであるボリュームダイヤルがAK100の大きなデザイン上の特長だ

 AK100の上面と両側面には、前述のボリュームダイヤルのほか、パワースイッチ、イヤフォン端子、OPTICAL入力端子、再生、早送り(次へ)、巻き戻し(戻る)操作ボタン。底面には、microUSBポート、2基のmicroSDHCカードスロットが用意されている。2.4型のタッチ液晶は、DAPのほとんどすべての操作を指先のタッチでクイックに行なうことが可能だ。タッチ液晶は視認度も高く、視野角も広く、反応も良い。またAK100はBluetooth(A2DP)を搭載しており、よりモビリティー度の高いケーブルレス・オーディオも可能だ。

ボリュームの変更は2.4型のタッチ式液晶でも可能だ。152段階の音量変更幅はクレージーなようで実際には使い良い

上面には、パワーオン・オフスイッチ、光入力端子、イヤフォン端子が並ぶ

 AK100の再生対応フォーマットは、WAV、FLAC、APE、MP3、WMA、OGGと豊富だ。そして、WAV、FLACに関しては最大24bit/192kHzのハイレゾ再生が可能だ。ALAC(Apple Lossless)に対応していないことがiPod系ユーザーには不満かもしれないし、流行の先端であるDSD(Direct Stream Digital)フォーマットに対応していないことを気にする人はいるかもしれない。

左側面には、音楽の再生、早送り(次に進む)、巻き戻し(戻る)の操作ボタン

電源をオンにすると、液晶画面が点灯し起動する。microSDカードに音楽を転送すると、データベースの更新が続いて行なわれる

 しかし、DSDは電子ブック以上にまだまだ音源データを配信するダウンロードサイトも極めて少なく、今後、実際にDSDの良さが認知されれば、革新的なDAPの登場は明らかなので、その時に悩んだほうがストレスはないだろう。筆者は、今は基本的に圧縮率は低いが音質劣化のないFLACフォーマットで必要十分だと感じている。とは言え、基本的に音楽CDからリッピングしている限り、勘違いでもない限りオリジナルを超えることがないことは当然の道理だ。

感覚でも操作できるほどUIはできているが、チュートリアルも内蔵されている

チュートリアルの一部

Bluetoothにも対応しているので、ケーブルレス・オーディオも直ぐに楽しめる

 FLACフォーマットへのリッピングには、Windows版のフリーウェアである「dBpoweramp CD Ripper」を使用している。FLACフォーマットの場合、楽曲にもよるがCD1枚当たり、300MB~500MBとMP3などの高圧縮系フォーマットと比較すると10倍近く大きなストレージが必要となる。AK100は、本体に32GBと、それぞれ最大32GBまでのmicroSDHCカードをサポートできる2基のスロットが用意されているので、合計96GBまで(CD1枚500MBとして約200枚分)のFLACファイルを収納可だ。

「dBpoweramp CD Ripper」は標準ファイルとしてFLACでリッピングできるメジャーなフリーソフトだ。ファイル変換後、世界中にいるユーザーのリッピングデータ結果とのパリティチェック処理で精度を検証できる。当然、グローバルで始めてのリッピングでは前提データがないので、「Not in Accurete Ripping……」とかのメッセージが表示されるが不具合ではないので気にすることはない

AK100本体に32GB+32GBmicroSDHCカード×2で合計96GBをFLACファイルエリアとして使える大容量設計。AK100上のメモリーと2つのSDHCカード上のデータはデータベース的には論理的に1つのメモリー空間として扱われる

 リッピング後のFLACファイルのAK100への転送はUSBケーブルでパソコンと接続してAK100を外部のUSBハードディスクイメージとして行なう。操作はドラッグ&ドロップの極めて簡単な操作だ。転送されたFLACデータはAK100の起動時にデータベースとして再構成され、dBpoweramp CD RipperによってWebからコレクションされたCDジャケット画像なども自動的に管理・表示される。2枚のSDHCカードに同一アーティストが分散していてもデータベース上では問題なく同一のアーティストとして扱ってくれる。

AK100へのFLACファイルの転送はパソコンとUSBケーブル接続でDrag&Drop。画像ではAK100本体のメモリーがドライブI、1枚目のSDHCスロットに入ったmicroSDHCカードがドライブJとなっている

普通にFLACファイルをAK100に転送すると、PC内部のイメージ通りに、FLACファイルはアーティスト名でフォルダーとなり、内部にアルバム名のフォルダーができる

アクティブに音楽を楽しむなら、積極的にグラフィック・イコライザーをいじってみるのも良いだろう

 AK100もほかのDAPと同様に使用するイヤフォンの性格で音の表情を大きく変えるが、基本的にソリッドでメリハリのあるクリアな優等生的な音質だと感じた。筆者は、一般人より極めて聴覚の優れたオーディオ評論家ではないので、音の良し悪しの判断はできないが、Colorfly C4でも使用しているイヤフォンであるAKG3003やK374を通して出てくる音は感性的には極めて好きな音だった。

省電力モードが効き始めるまで、通常の音楽プレイバック時はこういう感じに表示されれる。最上段左に現在のmicroSDHCスロットの埋まり具合、その右下には、現在再生中の音源のプロパティーが表示される。現在は、オマケで付いてきた24bit/192KHzのソースのプロパティーを表示中

より詳細を見ると、このようにFLACファイルの詳細プロパティーが表示される。ハイレゾ音源の24bit/192KHzだと、なんと1曲は約140MBにもなってしまうことが理解できる。これは16bit/44.1KHzの圧縮MP3ファイルの約30倍、非圧縮のWAVファイルの約4倍近い感覚だ

 イヤフォンの選択だけでは我慢できないユーザーには、AK100に内蔵のグラフィックイコライザーが有効だろう。タッチ液晶に表示された現在の低域から高域までの音域イメージを指先でなぞるだけで、自由自在に低域から高域までを変化させることができる。オリジナル音源重視の“フラット至上主義”のユーザーには関係ないが、積極的に音をいじって楽しみたいユーザーには極めて面白いアイデアだ。

ハイレゾ音楽のダウンロードサイトは近頃増えてきたとは言え、まだまだソースは限られており、価格もCD登場のころの価格やそれ以上だ

ビットレートやサンプリングレートが高いから音質が良いかどうもかも、当然怪しくて人柱覚悟の対応が求められるだろう。もちろん、音楽は感性なので、他人の推薦が当たるときも、まったく外れるときもあることを忘れてはならない

 市販のCDリッピングだけでも、それなりに高音質でモバイルオーディオを楽しむことのできるAK100だが、AK100を入手したらネットから無料・有料でダウンロードできるハイレゾ音源にもチャレンジしてみたい。筆者はネット上のe-onkyoから数枚の過去のアルバムをダウンロードして聴いてみたが、高価なハイレゾ音源なら何でも素晴らしい……とは決して言えないが、素晴らしい再生効果を期待できるアルバムも少なくはない。

アルバム全部を一気にダウンロードするサイトもあるかもしれないが、e-onkyoは、楽曲を1曲ずつダウンロードする。ブロードバンド回線が普及したからこそ存在するビジネスだ

 “オーディオ”と異なり、所詮“音楽”は、第一に“演奏”、第二に“自分”、第三に“音質”ということが大事なのかもしれない。AK100を購入してみていろいろ分かったことがある。普通の人より遥かに聴力が優れているオーディオ評論家の詩人のような細やかな表現の「良い音」という評価に、まず惑わされることがなくなった。そして、自分自身の耳で「好きな音楽」、「好きな音」を中心に求めて行くことの大切さや楽しさが少しだけわかってきた。オーディオはロジカルな比較世界かも知れないが、音楽は極めて私的な感性の世界なのだ。

でっかいColorfly C4からAstell&Kern AK100にメインのモバイル・ミュージック・プレーヤーを代えてからは、シャツの胸ポケットにも入るようになったが、アウトドアでは、周囲の注目度は圧倒的に低下した。(^_^

■関連サイト

T教授

今回の衝動買い

アイテム:アイリバー Astell&Kern AK100 Digital Audio Player
価格:秋葉原 eイヤホンにて4万9800円で購入

T教授

 日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
 T教授も関わるhttp://www.facebook.com/KOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。

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