FLASH時代からニコニコ時代へ
―― そのポエ山さんが“職人”として復活したのは2009年、ニコニコ動画に投稿した初音ミクのPVでした。あれはどうして初音ミクだったんですか?
ポエ山 あれは、四次元Pさんという人から声をかけられて。
―― スカウトだったんですか。
ポエ山 もちろん初音ミクのことは知っていたんですけど、まあ、そういうのもあるな、くらいに見ていたんです。四次元Pさんとは昔からの仕事仲間で、ぼくが集英社で「ジョジョの奇妙な冒険」のプロモーションアニメをつくっていたことがあって、そのアニメをけっこう評価してもらっていたんです。それで、一緒にやってみようと。
―― 当たり前ですけど、ボカロPVは初めてですか。
ポエ山 はい。それまでボカロのPVを見ていて、静止画を動かして歌詞を出すだけというのが多くて、それが不満だったんです。髪の毛が空中で静止してるのはおかしいとか。
―― はははは! たしかに。
ポエ山 いざ投稿してみたら、思いのほか「ポエ山キタ!」みたいなのがあって。正直ぜんぜん反響があると思ってなかったです。分かってなかったんです、ボカロ業界のことが。
―― 業界ですか。動画ではポエ山さんの名前は伏せられてたんですか?
ポエ山 作者の名前を出さずにいこうということだったんですけど、公式ページに小っちゃく「poeyama」と書いてあって、それを見つけられて。仕事ばかりにシフトしていたので、ニコ動に投稿するのも初めてでしたし、そういう反応が久しぶりでうれしかったです。
―― 7年ぶりの反応ですね。もうそのときにはゴノレゴの呪縛が解けていたわけですか。
ポエ山 そうですね。ニコ動という形で別の反響もあったので、それはそれで気持ち良いなというか、面白いなと。
―― FLASH時代とニコ動、違いは感じました?
ポエ山 コアにあるノリ、バカなことをやってウケたい、笑いをとりたい、一部の人にしか分からなくてもいい、という感じはニコ動でも変わってないかと。FLASH時代に比べると、ニコ動のコメントってダイレクトですけど、意外とひどいコメントがないですよね。炎上する動画はありますけど、面白い動画には瞬発的に「wwww」とか書いてくれる。2ちゃんだと語り出すというか、そういうところがあったので。
―― 作る側としてはラクになったんでしょうか。
ポエ山 まあ、良くも悪くも。
―― その後、自分自身でもボカロPとして活動もされてるんですよね。
ポエ山 はい。ポエ山でやるのは恥ずかしいので、別名義でやってるんですけど……。