「中国産」を直輸入する面白さ
日本以外にも世界中で展開されているサン牧は、どれも中国のものをほぼ直輸入の形で導入しており、基本要素はどれも同じだ。どこでも同じような使い方がされているが、一部、中国や他の国との違いもある。
たとえば日本と中国ではユーザーの「家」が藁葺き屋根だが、アメリカのFacebookバージョンでは家が若干立派に出来ている。また中国版には「工場メニュー」なるものがあり、たとえば畑で作った「ブルーベリー」と畜産で作った「卵」で「エッグタルト」を作り、売買出来るようになっている。この機能は、今後日本でも取り入れる予定だという。
サン牧の作物や家畜には「パラミツ」や「酒面雁」など、多くの日本人には初めて聞く名前のものが多い。これは中国のものをそのまま導入しているためで、日本で牛の種類がたくさんあるように、中国では鳥の種類がたくさんあるなどの事情を反映した結果だ。
「作物の名前や種類などは日本がリードすることを考えていたが、日本人からすると、すっとんきょうな要素がある方が楽しいかと思ったんです。だから、あえてあまり手を出していません」と小野氏。ただし最近になり、一部で白菜やきゅうりなどの日本向けのアイディアを入れているのだとか。
また、サン牧内の言葉は基本的に中国語の直訳になっており、日本語としてやや不自然なところも目立つ。だが、一風変わった日本語が一部では「サン牧語」と呼ばれて人気なのだという。「一度正確な日本語に訳しなおしたら、ユーザーに『戻してくれ』と言われ、戻したことがあるんです。中国に日本語訳をしているスタッフがいるので、彼のことを『重用するように』と言っています」
中国から日本に進出した理由は「モバイルが鍵」
Rekoo Mediaはこれまで海外拠点を作らなかったにもかかわらず、このタイミングで日本法人を設立した。その理由は一体何なのか小野氏に聞くと、「今後日本法人で行なうことは主に3つです。1つはユーザーサポートの強化、2つ目はFlash Liteを利用したモバイル展開、3つ目はサービス設計やテーマ設定などでの先行です」という。
小野氏いわく「モバイルは鍵」。日本では既にmixiやモバゲータウン、GREEなどでケータイが使われており、課金ハードルが低く、収益性が高い。中国でもモバイル版は一応あるものの、WAPバージョンでユーザーインターフェースが異なっており、Flash Liteは日本が初めての導入となる。今後他の国でもモバイル版を展開する可能性はあるが、まずはケータイで一番普及している国でノウハウを極めたいという考えだ。「日本でのモバイル展開は、今後の世界展開のキーになると思っています」(小野氏)
実は中国サイドでは、「日本には『牧場物語 ハーベストムーン』という農場系のゲームがある」と注目されていた。日本にはその他にも、ペット系の「Nintendogs」のように、中国ですでにソーシャルゲームの題材に使われているネタがたくさんあり、ゲームユーザーも大勢いた。
「中国は『ソーシャル』での経験は多くコストも安いが、ゲームに関する知識や企画力は日本人の方が高い。その面では日本法人がリードしていけるのではないかと考えました」と小野氏は話す。
日本法人は小野氏を含めた2人からのスタート。今後3~5名程度の体制にして、少数精鋭で動いていくという。開発そのものはコストが安くて早い中国にまかせ、ユーザーサポートを強化していく予定だ。ちなみに小野氏はモバイル会社シーエー・モバイルの創業メンバー。今はベンチャーキャピタルとしてRekoo Japanにかかわっているため、初めの仕事は「自分に代わる社長を見つけるのが大事なミッション」なのだという。