(社)地上デジタル放送推進協会(D-PA)は27日、携帯電話機などの移動体に向けた“1セグメントの地上デジタル放送”のサービス名称を“ワンセグ”と決定。2006年4月1日に正式サービスを開始すると発表した。
地上デジタルの1セグメント放送の正式名称は“ワンセグ”に決定。ロゴも新たに作成された |
地上デジタル放送は6MHzの帯域を13のセグメントに分けて使用しているが、ワンセグはその中の1セグメントのみを使用する。データ処理を簡易とすることで機器の負荷を抑えられるため、低消費電力が要求される携帯電話機やPDAなどでも地上デジタル放送を受信できるようになる。また、12セグメントを利用するテレビ向けの放送よりも、視聴可能な範囲が広いため、カーナビゲーションシステムなどで相補的に使うことも検討されている。
配信イメージ。BML対応ブラウザーでは番組とデータ放送を同時に表示できる。ワイド画面にも対応 |
番組は従来の地上デジタル放送と同じ内容(サイマル放送)で、ドラマやスポーツといったエンターテインメント性の高い番組のほか、交通情報や天気予報、災害情報など屋外でニーズの高い番組をリアルタイムに視聴できる点も魅力だ。
映像コーデックにはH.264を採用しており、MEPG-2やMPEG-4より低いビットレートでも品質の高い映像を配信できる。解像度はアスペクト比4:3の320×240ドット(QVGA)のほか、16:9の320×180ドット(ワイドQVGA)にも対応。
ビットレートは最大約312kbpsだが、これは映像だけでなく音声やデータ放送も含めての数値となり、映像にどれだけのビットレートを割くかはテレビ局各社が決定する。データ放送には“BML”(Broadcast Markup Language)と呼ばれるXMLをベースにしたタグ言語が用いられる。BMLに対応したブラウザーを利用することで、映像とデータ放送を1画面で同時に参照したり、番組内で行なわれたアンケートに答えるといったインタラクティブなサービスも可能だ。
サービス開始時点で参加を表明しているテレビ局は、関東地区では日本放送協会(NHK)、日本テレビ放送網(株)、(株)テレビ朝日、(株)東京放送(TBS)、(株)テレビ東京、(株)フジテレビジョン、テレビ埼玉(株)、千葉テレビ放送(株)の8社。このほか近畿地区と中京地区でもそれぞれ5局が放送を行なう。
サービス開始に合わせてワンセグを視聴できる携帯電話機も発売される予定。発表会場では、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモがパナソニック モバイル コミュニケーションズ(株)が開発した『P901TV』を展示していたほか、ボーダフォン(株)とKDDI(株)も試作機として、それぞれシャープ(株)と三洋電機(株)が開発した端末を紹介していた。
『FOMA P901TV』。内蔵メモリーに30分程度録画できる機能(SDカードには不可)やEPG機能なども持つ。FeliCa機能にも対応したFOMA端末で、筺体に関しては新設計。地上アナログ放送も見られる |
レボルバースタイルで、液晶を反転させることも可能。その場合は側面のボタンで操作する |
電波の強弱も画面で確認できる | リモコン&専用イヤホンも用意。アンテナを兼ねる | カラーはホワイトも選べる |
P901TVは年内の発売を予定しているが、それ以外の製品の発売時期は未定。ただし、端末の完成度を見ると製品化はそう遠くないと感じた。
バッテリー寿命は各社2時間~2時間30分程度を実現できているという。デジタルデータを扱うことで、放送品質が向上するのはもちろん、消費電力も低減できるという点は各社口を揃えて指摘していた。
消費電力の観点では、例えばH.264のデコード処理にどの程度の負荷がかかるかが気になる(パナソニックの説明員によると「負荷は確かにかかる」という)。ちなみに、P901TVではH.264用の回路をプロセッサーに実装しているという。他社のコメントはもらえなかった。
ボーダフォンの試作機(シャープ製) | AUの試作機、三洋電機製のWIN端末 |
またファームアップにより、松下電器産業(株)がすでに発売しているデジタル放送対応のカーナビゲーションシステム『TU-DTV100』(価格8万4000円)でもワンセグ放送の視聴が可能になるとのこと。
すでに販売されている地上デジタル対応カーナビ『TU-DTV100』もファームアップでワンセグに対応する。1セグは12セグの通常放送に比べ、受信エリアが広く相補的に活用するという。1セグのデータ通信には対応しない |