インテリシンク(株)は31日、クライアント管理機能を搭載した企業向けデータ同期ソフト『Intellisync Mobile Suite』(以下IMS)の新バージョン『Intellisync Mobile Suite 6.4J』(IMS 6.4J)を発表した。価格はメールとPIMの同期が行なえる構成で、1ユーザーあたり1万5750円(50ユーザーからの販売)。システムマネージメント機能を追加した場合は9450円が追加となる。
左から米インテリシンクプロダクトマネジメント担当副社長のビル・ジョーンズ氏、インテリシンク(株)営業、マーケティング担当副社長の井手龍彦、同代表取締役社長の荒井真成氏 |
IMSは、企業内のMicrosoft ExchangeやLotus Notesなどのグループウェアやメールサーバー上のデータをノートパソコンやPDA、携帯電話などと同期し、外出先からの閲覧や編集が行なえるようにできるようにする製品。サーバーとクライアント用の2種類のソフトで構成されている。
今回のバージョンアップでは、携帯電話用のクライアントソフトを新たに追加。サーバーソフトにもモバイル機器で直接クライアントソフトをダウンロードしてセットアップできる“Over The Air(OTA)インストール機能”(従来はパソコン経由)、企業ネットワークのDMZ(DeMilitarized Zone)内に社内LANとインターネットを中継する“セキュア ゲートウェイ”サーバーを設置することで、VPNなどを導入するより安価で比較的安全なアクセス環境を構築できる機能などが追加されている。また、セキュリティー面では“固体認証”の機能も持ち、非登録の携帯電話機からのアクセスを拒否できる。デバイスの登録は自動的に行なわれ、「管理コストゼロで最初にアクセスした携帯電話からのみアクセスを許可できる」という。
Over The Airの設定画面 | セキュア ゲートウェイはDMZ内に配置する。VPNを導入するより手軽に高いセキュリティーを得られるのが特徴 |
携帯電話用のクライアントソフトは、ビジネスFOMA『M1000』、『Vodafone 702NK』、FOMA“900/901i”シリーズ(DoCoMo DoJaクライアント)、Vodafoneの3G携帯電話機(J2MEクライアント)向けの4種類が用意されている。従来のIMSはウェブブラウザーでIMSサーバーにアクセスする方式だったが、専用クライアントを利用することで、アクセスの遅さやつながらないといった問題点を改善できるという。
海外で対応している携帯電話機 | IMSを構成するコンポーネント |
4種類のクライアントのうち、M1000と702NK用のものは“アドインアプリケーション”となっており、ユーザーの同期操作によりメールやPIM情報をダウンロードする“シンク”のほか、メール到着時やPIM情報に変更があった際に自動的にデータを受信し、クライアントに反映する“プッシュ”配信にも対応する。管理機能も強化されており、IMSサーバーの管理画面から端末の構成情報を参照したり、端末の盗難や紛失があった際に遠隔操作で保存されている情報のロックや消去できる機能なども用意されている。サーバー側からクライアントに対してアプリケーションやアップデータを一括配信することも可能。
固体認証の設定画面。端末は初回接続時に自動的に登録される | 紛失したり、盗難にあった端末上のデータはリモートで削除できる |
FOMA 900/901iシリーズとVodafoneの3G携帯電話機用クライアントは“iアプリ”や“Vアプリ”でシンク機能が中心。クライアントを起動していない状態で、データの配信を受けることはできない。盗難時のセキュリティーを保つために、起動時には必ずパスワードを入力する仕組みとなっており、誤ったパスワードを入力した際にはデータが消去されるが、データは社内のサーバーに蓄積されているため、同期によって簡単にデータの復旧を行なえる。アドレスやスケジュールなどのデータは携帯電話機に搭載されたものとは別個に扱われ、メールの送受信もキャリアーではなく、ExchangeやNotesといった社内のメールサーバーを経由したものとなる。
3G向けクライアントは国内で開発した、アドレスやスケジュールは携帯電話機付属のソフトとは別個に管理する | モバイル機器が行なった操作はすべてログに残り、セキュリティーに役立てられる |
北米市場では、カナダResearch In Motion(RIM)社のワイヤレス通信端末『BlackBerry』と同端末のプッシュ配信機能を利用した、企業向けソリューションの導入が活発に進んでいるという。インテリシンクでは、IMS 6.4JでBlackBerry並みのプッシュサービスが提供でき、BlackBerryにはない高レベルな端末管理機能を持つ点を強調していく考えだ。
ジョーンズ氏が示したモバイルデータサービスの市場分析グラフ | Blueberry並みのプッシュ配信機能と、Blueberryにはない端末管理機能をアピールしていく意向 |
発表会に出席した米インテリシンク社のプロダクトマネジメント担当副社長ビル・ジョーンズ(Bill Jones)氏は「モバイルデータサービスは2007年に800億ドルの市場に成長する」とし、その中でインテリシンクは「エンタープライズとメッセージングサービスの提供に注力している」と述べた。また、UNIX版のIMSサーバーの開発も進めており、年内をめどに投入される見込み。
インテリシンク(株)代表取締役社長の荒井真成(あらい まさなり)氏は「ワイヤレスEメールの市場は拡大しており、毎日1000名が登録しているという。しかし、国内では国内では対応した端末がなく、販売チャネルも限られていた」と発言した。しかし、M1000や702MKといった端末が登場したことでこの状況は変わりつつあるという。IMSの販売は4社のパートナーを通じて行なうほか、「エヌ・ティ・ティ・ドコモ(株)(NTTドコモ)やボーダホン(株)の法人営業部の協力を受け、積極的に取り組んでもらっている」(荒井氏)という。
Intellisync Mobile Suiteサーバーの動作環境は、Pentium III-900MHz、1GBメモリー、1GB HDD以上を搭載したPC/AT互換機で、サーバーソフトはWindows 2000 Server(SP4以降)またはWindows Server 2003に対応。このほかデータベースソフトとして『Microsoft SQL Server 2000』(SP3以降)または『Microsoft Data Engine』、ウェブブラウザーの『Internet Explorer 5.0』以降、『Microsoft Management Console 1.2』、『Internet Information Services (IIS) 5.0』などが必要。
対応するメールサーバーは『Microsoft Exchange Server 5.5/2000/2003』、『Lotus Domino R5/R6/R6.5』、そのほかPOP3/IMAP4対応サーバ。
出荷開始時期は『IntelliSync Mobile Suite サーバ』が8月31日、『Vodafone 702NKクライアント』が9月15日、『DoCoMo M1000 クライアント』『DoCoMo DoJa クライアント』が9月30日、『Vodafone J2ME クライアント』が10月31日。なお、auの携帯電話機向けの『au BREW(EZアプリ) クライアント』も現在開発中で、将来的には投入するという。