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北九州市、テレワークセンターでITを活性化

2000年09月11日 18時40分更新

文● 正月孝広

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福岡県北九州市。福岡市から新幹線で約20分の距離にある港湾工業都市である。今、九州地方で2番目の規模を誇るこの街は、市をあげてベンチャー支援に取り組むなど、IT産業の街として大きく生まれ変わろうとしている。

交通の要、JR小倉駅周辺では大規模な再開発が行なわれており、景観は大きく変わった。駅舎が新しくなったのはもちろんのこと、周辺にはペデストリアンデッキ(動く歩道など)が整備されった空中回廊が張り巡らされている。

これまで商業マーケットゾーンとして栄えていた南側も、モノレールの路線が延長されるなどして、新たな活気を帯びてきた。そして北側にはリーガロイヤルロイヤルホテル小倉をはじめ、ラフォーレ原宿・小倉、西日本総合展示場など、高層建築が林立するビジネスゾーンとなっている。今回ご紹介するインキュベーター施設“北九州テレワークセンター”(北九州市小倉北区浅野3-8-1 アジア太平洋インポートマートビル内6階)もこちらにある。

AIM(アジア太平洋インポートマート)外観
北九州テレワークセンターのエントランス。右側にすぐ受付・事務所がある。正面奥が開放してあるオープンテレワーク

募集戸数に対し、希望者5倍以上競争率と人気

北九州テレワークセンターは、郵政省の電気通信格差是正事業として北九州市が整備したもので、2000年の4月20日にオープンしたばかりの新しいオフィスである。情報通信設備(バックボーン6Mbps)を提供し、24時間稼働の活動拠点として、中小企業や、ベンチャーの育成を積極的に支援している。

センター内はいくつかのテーマスペースに分かれている。“オープンテレワーク”、“スモールオフィス”、“サテライトオフィス”の3つである。

“オープンテレワーク”はエントランスの正面に位置してるフリースペースで、広く市民に開放されている。ネットワークに繋がったPCはもちろんのこと、情報コンセントが備えてあるテーブルなどもあり、打ち合せなどには十分の設備が整っている。

オープンテレワークにある、情報コンセントが設置されたテーブル。市民が自由に利用できる

“スモールオフィス”は、主に個人やベンチャー向けのスペースとして、区画整理されているもので、現在22室が運用されている。実際に機材や資料、テーブルなどを入れると、あとは2、3名でいっぱいになってしまうブースではあるが、初期投資の安さや設備の充実さを考えると、個人では十分であろう。

 
スモールオフィス。ガラスでしきられておりブラインドが設置してある。ブースのレイアウトには個性が光る

“サテライトオフィス”は12室。主に中小企業の入居者が多い。福岡市に本店があるが北九州市にも支店が欲しい。出張で訪れる社員の、デスクワークの場所を確保したいなど、この企業クラスでの需要も多い。

サテライトオフィスのなかのひとつ。十分なスペースが確保され作業効率、住居環境はとてもよさそう

他にも、テレビ会議システムが備えてある会議室や、全ての机にパソコンが揃えてあるセミナールームなど、数多くの設備がある。特にこのセミナールームは、講師からも受講者からも、「パソコンが常設してあるので、ネットワークのセミナーなどでは非常に使い勝手がいい」と好感を得ている。

セミナールーム。プロジェクター設備などは当然常設してあるが、各テーブルにはPCが用意されており、何も持ち込まずすぐにネットワークセミナーができる

北九州テレワークセンターでは7月に入居者の募集を新たに行なった。最終的には募集戸数に対し、5倍以上競争率となるなど、期待の大きさが実感できる。中には東京など大都市からの応募者も多数もあったという。

TAO・北九州ギガビットラボなどの先端研究機関も入居

北九州テレワークセンターがあるAIM(アジア太平洋インポートマートには、次世代の通信、ギガビットネットワークの研究をしているTAO・北九州ギガビットラボも入居している。ここでは施設を大学や企業に開放し、高精細画像の送受信実験環境に関する研究などが行なわれている。

この秋より、九州工業大学が北九州テレワークセンター内に入居。飯塚キャンパスにある情報工学部とギガビットネットワークで接続し、バーチャルユニバシティーの研究なども開始されるという。こちらも注目の活動である。

北九州テレワークセンター所長、平野富士男氏は「地方都市では、マルチメディア系に限らず、優秀な人材はすぐに都会に出ていく傾向にあります。しかし、十分な環境を整備し、積極的に支援していることを伝えることによって、Uターン組みを迎えることができます」という。実際に最近はそのようなUターン組みアクションを肌で感じているそうだ。

北九州テレワークセンター所長、平野富士男氏
 

また今後の活動について平野氏は「ここは行政の支援施設だが、これからは民間でもこのようなオフィスが多く登場し、つながりをもって地域としての支援体制を充実していきたい」と語った。

古くから鉄都として栄えた北九州市は、ITを軸としたソフト産業への転換が行なわれている。その中心となる北九州テレワークセンターの今後の活動に、大きく期待したい。

《正月孝広 masa@catwalk.ne.jp》

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