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“Windows NT vs Linux 最新動向”――IDCがプレスカンファレンスを開催

1999年04月16日 00時00分更新

文● 編集部 清水久美子

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 IDC Japan(株)は、米IDC社から上級副社長などを招いてプレスカンファレンスを開催した。現在、IT業界で注目されている事業であるエリクソンとクアルコムのCDMA技術と“Windows vs Linux”への見解、分析、展望などについて講演した。

CDMA技術の統合により、日本の携帯電話産業で先手

 まず、米IDC社のコミュニケーションリサーチ・コンサルティング部門の上級副社長ジジ・ワング(Gigi Wang)氏は、“エリクソン社とクアルコム社の提携:その日本市場への影響”をテーマに講演した。

米IDC社コミュニケーションリサーチ部門のジジ・ワング上級副社長
米IDC社コミュニケーションリサーチ部門のジジ・ワング上級副社長



 ワング氏は、最初に、3月25日にこれまでライバル同士であった、米クアルコム社とスペインのエリクソン社が提携したことを説明した。「提携は、携帯電話など通信システムの1つである“CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重多元接続)方式”という技術に関して行なわれたもの。これまで両社は別々のバージョンをサポートし開発を続けていた。また、CDMAに関する技術の知的所有権はクアルコムが握っており、この使用許可を競合他社に与えようとしなかった。このため無線技術の標準づくりは困難視されてきた。今回の提携で、これらが1つに統合され、新しい携帯電話の世界標準の確立に向けた環境整備が始まる可能性が出てきた」

 「日本では、NTT DoCoMoが次世代データ通信システムとして“W-CDMA”を提唱している。これは、エリクソン社がこれまで開発していた技術を利用したもので、最大で2Mbpsもの通信速度を誇る。実用化は2年後の2001年とされているが、今回の提携でこのめどは確実になりそうだ。」

 「というのは、提携により特許問題が解決したことで、標準技術について、11月までにITU(国際電気通信連合)が最終的な内容を決定できるめどがたったからだ。順調に進めばNTT DoCoMoはサービスを開始できる。また、端末を製造する日本メーカーも、早期に世界市場に参入できる」とし、今後の通信産業における日本の優位性を強調した。

アプリケーションの移殖が活発に――Linuxは第3の波

 米IDC社のワールドワイド・ソフトウェアリサーチ部門の上級副社長トニー・ピカルディ(Tony Picardi)氏は、“Windows NT vs Linux:市場における最新動向”をテーマに講演を行なった。

米IDC社ワールドワイド・ソフトウェアリサーチ部門 トニー・ピカルディ上級副社長
米IDC社ワールドワイド・ソフトウェアリサーチ部門 トニー・ピカルディ上級副社長



 まず、ピカルディ氏は「'98年度、Linuxの成長率は前年と比べて212.5パーセント増となった。2003年までにはサーバーOSとしては他のOSを抜いて第2位、Windows NTと比べて10分の1のシェアを占めると予測される」と、Linuxの急速な成長率に言及した。

 同氏はLinuxの普及の様子を3つの波に分けた。「第1の波は、Linuxがハッカーたちによって広めらたこと、第2の波は大学などの教育機関で受け入れられていったこと。現在はこの次の段階である第3の波といえる。それは、商業的な位置付けになりつつあるということだ。アプリケーションの移殖が始まり、より多くのベンダーがLinuxのサポートを発表している。IDCでもこうしたLinuxビジネスの相談をよく受ける」と語った。「当分の間、Windows NTの牙城を崩すことはないが、Linuxが更に多くベンダーに注目され、重要な位置付けになることは間違いない。多くはNTのサーバー代替OSとして使われるだろう」とした。

 続いて、同氏はマイクロソフトと司法省の話題に移った。「司法省がマイクロソフトに危惧を抱いているのは、同社の独占力に対してだ。既に、クライアント市場における個人向けソフトウェアにおいて75~95パーセントのシェアを握る。シェア率よりもこうした独占力に着目している」

 「司法省はこうした同社の独占状況を阻止するために、マイクロソフトの事業を分社化しようと試みた。それに対して同社は過去2回に渡って、“ポイズン・ピル(毒薬)”という方法で対抗している。“ポイズン・ピル”とは、買収される可能性のある会社が、自分の会社の魅力を落とすため事業を再編制することだ。これは結局マイクロソフトの司法省に対する先制攻撃だといえる」

 「そのほか、マイクロソフトは、公式な場で“Windows NTの戦略的なオープンソース化を検討している”表明した。マイクロソフトにとって、Windows NTのソースコードを公開することは、メリットにもなり得るからだ。これまでよりも信頼性が向上すれば、ユーザーターゲットを広げることができる。また、これまで開発したアプリケーションという資産があるので、NTのソースを公開しても、これらアプリケーションの最適化を行なうことは可能だ」と説明した。「またユーザー側もバージョンアップを強要されることはなくなるし、UNIXのようにNTの信頼性もあがるはずだ」とメリットを説明した。

 最後にピカルディ氏は、日本の講演にちなんで俳句形式でまとめた。

『Marketshare lameny』
“Software,Marketshare,such a sweet security,but the world will die.”

『マーケットシェア哀悼のうた』
“シェア独占 つかの間の 安堵感に浸る”――(「字余りすみません」通訳)

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