今回のエレショーでDVDに続くもうひとつのトピックがデジタル放送だ。デジタル放送はMPEG-2の圧縮信号を電波に乗せて送信する放送で、従来のアナログ放送に比べ絵も音もクオリティーが上がるほか、多チャンネル化、データ配信などの特徴がある。通信衛星(Communication
Satelite:CS)を使ったデジタル放送はすでに始まっているが、放送衛星(Broadcast
Satelite:BS)を使ったデジタル放送が来年12月に始まる(6月にシドニー五輪、夏に沖縄サミットをテスト放送する)。これがいわゆるBSデジタル放送だ。
すでに在京民放キー局がそれぞれ出資した子会社5社、NHK、WOWOW、スターチャンネルの計8社が免許を取得、準備を進めている。デジタル用の後継衛星が現在使われている衛星と同じ軌道に上がるため、現在約1000万世帯(NHKの契約数ベース)に普及しているBS用アンテナがそのまま流用できるのがメリット。ただし、受信には専用のチューナー(デコーダー)が必要になる。これまで海外向け製品(海外ではデジタル放送はすでにポピュラーな存在)は公開されていたが、今回のエレショーでは国内向けのいずれも参考出品ながら初めて各社から展示された。また、主催者展示としてBSデジタル放送をテーマにしたブースも設けられた。
ソニーのBSデジタルチューナーのコンセプトモデル。現行のCSチューナーに比べるとかなり大きめ。WEGAのデザインにあわせてある |
その背面。一番左側にデジタル対応のD3コネクターがある |
対応チューナーを展示したのはソニー、松下電器産業、日立製作所、シャープ。ソニーはデザインコンセプトのモックアップというプレート付きでの展示で、あくまでコンセプトモデルとのことだったが、非常にスタイリッシュなチューナーを出品した。同社の平面テレビ『WEGA』が並ぶ中に置かれていたが、すでに発売されているCSチューナーとはサイズも印象もかなり違うものだ。また接続端子が並ぶ背面の模様も公開されていた。S端子やコンポジット、デジタル放送対応のD3デジタルなどの出力端子が並ぶほか、同社のCSチューナー同様、i.LINK端子、アナログのモジュラージャックを装備する。これらはMDなどのデジタル機器との接続やアップリンク用に使われる。データ放送のデータ部分もi.LINK経由で取り出される模様だ。
松下電器のデジタルチューナー(左)とD-VHSデッキ(右)。チューナーにはHDDが内蔵されるが、容量は数GB程度でテンポラリ的なメディアとして使われる模様 |
松下電器のチューナー、HDDレコーダー、DVDレコーダーのコンセプトモデル。デザインが統一されている |
日立のデジタルチューナー(上)とD-VHSデッキ |
シャープもデザインを合わせたBSチューナーとHDDレコーダーを展示した。同社の携帯端末メディアクルーズでデータ放送を受信するコンセプト |
BSデジタル放送をにらんで、MPEG-2のデジタルストリームをそのまま記録するレコーダーも展示された。現行のVHSと上位互換のD-VHSとHDDをメディアに使うHDDレコーダーの2つだ。
D-VHSはVHSと同じビデオテープを使うタイプですでに日立や日本ビクターなどから発売されているもの。ビクターは毎秒27MBに近いビットレートを確保する高精細モード(D-VHSで規格化はされているが、現行の製品には搭載されていない)を搭載する高精細対応D-VHSを参考出品した。
日本ビクターの高精細モード搭載のD-VHS。下に見えるのは高精細画像を出すための送り出し装置。ハイビジョン放送を劣化なしで記録できる |
一方のHDDレコーダーはAV用のHDDを搭載したもの。ビデオやオーディオの再生に最適化したコマンドを備えたHDDで、BSデジタル放送の複数のチャンネルを同時に扱えるのが特徴。どのメーカーも3チャンネルを同時に処理できる仕様になる模様。たとえば2チャンネルを同時に録画しながら1チャンネルを再生するという使い方が可能になる。こうしたレコーダーはいわゆるホームサーバーとしても使われるが、東芝はチューナーとサーバー機能を内蔵したテレビを展示した。つまりこれ1台でBSデジタル放送をフルに堪能できる。
東芝のホームサーバー機能内蔵デジタルテレビ。27GBのHDDを内蔵する |
主催者展示ブースではBS放送業者が自前のコンテンツを流した |
NHK技術研究所が開発中のホームサーバー。先日の技研公開で展示されたもの |
これらの機器の発売は来年に入ってからの見込み。価格については普及スピードに大きく関わることもあって各メーカーとも思案中だ。