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Dell Computer(以下Dell)がLinuxに本腰をいれはじめたようである。もともと、Dellは、顧客から要望があれば、Linuxをインストールしたマシンを出荷していたし、Linuxプレインストールしたノートパソコンなども出荷していた。しかし、IBMやHPに比べると、「Linuxもあります」的なところがあって、ある意味、流行に載っただけという印象があった。
Dellは、まだ頑なにAMDのCPUを採用しようとはしないし、宣伝などでもLinuxが目立つようなことはなかった。
今年8月にSan Joseで開かれたLinuxWorldで、会長のMichael Dellが基調講演を行なったが、内容的には、うちもLinuxに力を入れてますって感じで、それほどの熱を感じなかったのだが、かなりWintel寄りのDellが基調講演を引き受けたのは、こうしたLinuxへの傾斜のシグナルだったのかもしれない(だったら、もう少しはっきり言えばいいのに……)。
さて、Dellは、GNOMEの開発元であるHelix Codeと契約を結び、デスクトップマシンにGNOMEを載せるらしい(原稿執筆時点ではウワサなのだが)。Helixと契約結ぶというのは、DellがそのGNOMEのサポートを行なうということになる。また、Eazelとも提携し、同社のGUIシェルを扱うらしい。Eazelは、WindowsでいうExplorerのようなファイル管理やシステム管理機能を統合したNautilusというシェルを開発し、また、このNautilusを通してオンラインストレージなどのサービスも提供している。
これが、単なるスタイルだけで終わるのか、それとも、DellがよりLinuxに傾斜していくのかは不明だが、サーバではなく、デスクトップやノートというところが、少々気になる部分。というのは、サーバ分野は、Linux(やUnix系OS)にとって、いまやかなり安全な領域でもある。Windows 2000のリリースが遅れ、実際登場したあとも、従来のNTに比べてサーバマシンとして格段の違いがあるようにも思えないとユーザーも思っているからだ。
しかし、デスクトップ領域は、完全にWindowsつまりMicrosoftが支配している領域である。米国では、かなりの開発者がGTK+を使って、さまざまなアプリケーションの開発をすすめており、いくつものオフィス系ソフトも登場している。しかし、企業のデスクトップといえば、黙っていてもWindowsにOfficeというのが現状である。ここにLinuxを提供するのは、かなり難しい部分でもある。もっとも、Dellは、プリインストールした製品を店頭に並べて売っているわけではなく、直販であり、顧客から要望があれば、製品を組み立てて出荷するだけなので、こうした製品を企画したからといって、結果が悪くとも後で在庫のヤマを抱えるというわけではない。あくまでもユーザーの選択肢の1つとして用意するというだけだ。
それでも、Microsoftと司法省の裁判が始まる前であれば、これは「冒険的」な試みとなっただろう。しかし、裁判以来、Microsoftには、他社の戦略に口出しをできるような状態ではなく、ある意味、DellのMicrosoftばなれとして単なるポーズで終わる可能性もある。
しかし、Dellのメニューとして購入できるというのは、Dellユーザーのみならず、広くユーザーに安心感を与えることは確か。これが調子いいなんて話が出ると、追従する大手メーカーも出てくるだろう。
今年は、各社とも、少なくともサーバ分野では、Linuxを扱ったわけだが、これは、コンピュータ全体のシェアからすると小さい部分だし、大多数のクライアントマシンには影響のない部分だ(サーバがLinuxだろうとWindows 2000だろうとWebページとしては違いはない)。
来年は、デスクトップ分野でのLinuxに注目が集まるのは確かだが、さて、実際にユーザーが増えるのかどうか。Linuxの傾斜が原因とはいえないものの、Linuxでは会社を救えなかったCorelのような例もあるし、反対にAOLとゲートウェイの「Gateway Connected Touch Pac」(CrusoeでMobile Linuxを使っている)といった例もある。少なくとも、インターネットアプライアンスを含めたデスクトップ領域でLinuxが騒がしくなることは間違いないようだが……。
(塩田紳二)