家庭用インクジェット複合機が普及してきたこともあってスキャナーを個人で利用する人も増え、ちょっとした書類を知人に送る場合にはファクスで送るよりもスキャンした画像をメールに添付して送ったほうが手軽、という認識も広まってきているようだ。とはいえ、インクジェット複合機はプリンターとフラットベッドスキャナーを組み合わせているだけに本体サイズが大きく、机やパソコンの脇に気軽に置けなかったり、使わない時には荷物の台になっている(スキャンの前に片付けが必要)、といったケースも少なくないだろう。
PFUのドキュメントスキャナー「ScanSnap」シリーズ。左がS510、右はポータブルタイプのS300 |
(株)PFUの「ScanSnapシリーズ」は、ドキュメントスキャンに徹することでコンパクトなボディーと高速な読み取り、ADF(自動給紙装置)による連続給紙などを可能にした製品だ。フラットベッドスキャナーとは違って厚みのある原稿(開いた本など)こそ読み取れないものの、名刺やハガキからA4用紙までのさまざまなサイズに対応し、かつ手軽に電子化できるのが特徴だ。
ScanSnapシリーズには、デスクサイドに設置するタイプの「S510」と、より小型軽量なモバイルタイプの「S300」という大小2モデルがラインナップされているので、まずはそれぞれの機種について見てみよう。
スキャンボタン1つで読み込み開始
ScanSnap S510
S510の給紙トレイを閉じた状態は、横から見て“おむすび”型の断面を持つシンプルなフォルム |
安定して給排紙するためだろうが、コンパクトな本体にもかかわらずトレイは大きく展開する |
S510は側面から見ると三角形をした据え置きタイプのスキャナーで、設置面積は幅27×奥行き13mmと、テンキーのない省スペース型キーボードや小さめのノートパソコンと同程度だ。フロントカバーを上に開くと原稿ガイドとなり、A4用紙で最大50枚をセットできる給紙トレイとなる。さらに前面のカバーを手前に倒すと排紙ガイドとなる。排紙ガイドを開いておけばスキャン済みの原稿は奇麗にスタックされるが、数枚程度の名刺や書類であれば特に開く必要もない。電源ボタンはなく、電源(ACアダプター)を接続して給紙ガイドを開けば連動して電源が入ってスタンバイ状態になる。あとはスキャンボタンを押せばいいだけだ。電源ボタンの横には「e-スキャン」というボタンが用意されており、メインのスキャンボタンとは異なる動作(後述)を設定できるのも特徴だ。
給紙トレイを開けば自動的に電源ONになる。さらに手前に排紙トレイを倒すこともできるが、1~2枚の原稿ならば排紙トレイを閉じた状態でも利用可能だ |
ScanSnapの便利な機能として、両面同時読み取りが可能という点が挙げられる。スキャン原稿を搬送しつつ読み取りセンサーを通過させることで読み取られるわけだが、読み取りセンサーが表と裏に2組備わっており、1度のスキャンで同時に表面と裏面が読み込まれるため、フラットベッドスキャナーのように用紙をいちいち裏返して再度セットするといった手間がなく、非常にシンプルな構造と使い勝手を実現している。
一度のパスで両面をスキャンするため用紙をひっくり返すといった作業が要らず、標準的な書類のスキャンであれば1枚数秒でスキャンされる |
スキャン解像度は裏表ともに最高600dpiで、用紙搬送速度の違いがそのまま読み取り解像度と反比例する仕組みとなっている。解像度がカラー600dpi(モノクロ1200dpi相当)の「エクセレント」(最高品質)では読み取り速度は毎分0.6枚だが、「スーパーファイン」(カラー300dpi)では毎分6枚、「ファイン」(同200dpi)では毎分12枚、「ノーマル」(同150dpi)では毎分18枚といった具合だ。スキャン速度/品質は後述のスキャンユーティリティーで事前に設定しておけるが、e-スキャンボタンによるスキャンに関しては200/300dpiのいずれかとなる。
原稿詰まりを取り除くために、フロント部はワンタッチで開くようになっている。開けるとフロント側と本体側の2つにラインセンサーが備えているのを確認できる |
また、「A3キャリアシート」と呼ばれる透明シートが付属している。これは新聞の切り抜きなどのように、薄くて搬送されにくい原稿などを挟み込んで給紙できるほか、A4よりも大きな原稿については2つ折りにしてスキャンし、裏表をユーティリティーソフトで1枚に合成するという機能が用意されている。
ACアダプターも比較的小さめで、デスクサイドに設置したときにじゃまになりにくい |
USBバスパワーで電源が取れない場所でも活躍!
ScanSnap S300
給紙トレイを閉じればシンプルな横長形状のS300。本棚の空きスペースなど、ちょっとしたところにしまっておき、使うときだけ取り出すのも簡単だ |
本体が小さいぶんトレイは大きく展開し、ガイドはA4用紙の上端までサポートする |
ポータブルタイプのS300は、横幅こそS510と同程度だが奥行き10cm、高さ約7cmというコンパクトモデルだ。ちょっとしたノートパソコンと一緒にも持ち歩けるサイズに納まっている。上面カバーを斜め後ろに倒すと給紙トレイとなるのはS510と同様だが、給紙容量は約10枚で、排紙トレイは省略されている。また、操作系もスキャンボタンが1つあるだけのシンプルなものだ。
スキャン解像度はS510と同様に最高600dpiだが、スキャン速度はやや遅く、エクセレントで毎分0.5枚、ノーマル150dpiでは毎分8枚となっている。
給紙トレイは展開後に3段階までガイドを展開できる。排紙トレイは備えていないが、10枚程度の原稿であれば特に問題はない | スキャン速度はS510よりやや遅い程度ながら、数枚単位でのスキャンならばほとんどストレスを感じない |
携帯しやすいコンパクト機だけあって、USB端子からの給電(USBバスパワー)でも動作するのが特徴だ。パソコンとの接続(データ転送)用のUSBケーブルとは別に、一方がDCプラグ形状になっている給電専用のUSBケーブルが付属している。このためパソコン側にはUSB端子が2つ必要となるが、よほど超小型のモバイルノートでもないかぎり問題はないだろう。
S510と同様にラインセンサーはフロントカバー側と本体側の両面に備わっており、1パスで両面のスキャンが可能だ |
なお、USBバスパワー動作時にはエクセレント以外のスキャン速度が上記の半分(ノーマルで毎分4枚など)になる。電源が取れる場所で使う場合には、付属のACアダプターを使った方がよさそうだ。
持ち運びを考慮してACアダプターも小さめ。付属のUSB給電ケーブルを使えば、電源が取れない屋外や出先などモバイルでの利用も可能だ |
次ページでは使い勝手の良さを実現するスキャンユーティリティーソフト「ScanSnap Organizer」を解説するとともに、実際のスキャン時間を計ってみる。