日本オラクルは、7月10日、アプリケーション事業に関する記者説明会を開いた。米オラクルで日本のアプリケーション事業を総括するディック・ウォルベン氏が、2007年度(2006年6月~2007年5月)の事業を振り返るとともに、新年度の事業戦略を語った。
手組み文化からの移行を促し、市場創出を目指す
「日本は、年間14兆5560億円ものIT投資をしている国。だがそのうち、ERPパッケージの市場はわずか1%以下に過ぎない」。米オラクルの日本アプリケーションビジネス担当シニア・バイスプレジデントのディック・ウォルベン氏はこう指摘する。こうした状況を踏まえ、同氏は「日本にはパッケージソフトの市場はまだない」と断言。「これから市場を作っていくのが我々の戦略だ」と力強く宣言した。
先日発表されたとおり(=関連記事)、日本オラクルのアプリケーション事業は好調そのものだ。2007年度(2006年6月~2007年5月)のライセンス売上は60%の伸びを記録し、「商談規模は2倍になった」(ウォルベン氏)という。「特に300万ドル以上の大規模案件がすべて成約につながったのがよかった」とウォルベン氏は振り返る。
だが、冒頭にウォルベン氏が指摘したように、市場そのものが小さい状況では、次の成長を描くことは難しい。ウォルベン氏は「ERPは中堅中小の時代といわれるが、大企業3000社のうち導入されているのは約半分にすぎない」と語り、自社開発からパッケージへの移行を促し、市場を創出していく考えを示した。併せて「自社開発よりも魅力があることを伝えないといけない」として、システムインテグレータに対しての働きかけも強めていく。
Fusionは来年4月か5月に登場?
市場創出にあたって、オラクルが力を入れていくのは“外向き”のアプリケーションだという。「歴史的にみれば、IT投資は経理部門の効率を向上させるといった“内向き”のものだった。だが現在の企業経営者は、CRMやSCMといった“外向き”のアプリケーションを求めている」(ウォルベン氏)。オラクルはCRMのシーベルや、BIのハイペリオンといった、“外向き”のアプリケーションを相次いで買収している。
また、複数のパッケージを組み合わせて使うため、SOA(サービス指向アーキテクチャ)などの技術面にも取り組んでいる。同日には、異種アプリケーションの統合基盤「アプリケーション統合アーキテクチャ(AIA)」を発表。Oracle E-Business Suite(EBS)とSibelの統合利用を実現する「プロセス統合パック」の提供を開始した。
なお、2008年のリリースがアナウンスされている次世代アプリケーション「Oracle Fusion Applications」については、「恐らく期末の来年4月か5月頃の登場になるため、業績上のインパクトはあまり考慮に入れていない」(ウォルベン氏)。「日本企業は事例(実績)重視」(ウォルベン氏)のため、新規顧客にはFusionを、既存顧客には当初、AIAによる既存製品の統合利用を勧める方針だ。
そのほかの施策としては、顧客満足度の向上に取り組む。海外に比べて低い日本のアップグレード状況を向上させるため専任組織「Japan Upgrade Management Office」を設置し、アップグレードを推進。サポートプログラムの積極的な展開や、コンサルタントの増員によるコンサルティングサービスの拡大、パートナービジネス推進部の人材増強などの策を打つ。