ソニーがフルサイズのレンズ一体型デジカメ「RX1RⅢ」を発売した。このところライカのフルサイズ「Q3」シリーズや、富士フイルムのAPS-C「X100Ⅵ」に中判サイズ「GFX100RF」。リコーからもAPS-C「GRⅣ」が発表されるなど、レンズ一体型デジカメが熱い。
そのなかで実に9年以上振り(前モデル「RX1RⅡ」は2015年2月の発売)に登場する最新モデルということで期待せずにはいられない。ソニーから試用機を借用できたので実際の操作感や撮り心地をチェックしていこう。
フルサイズの高級感と軽快さが両立
レンズまわりは昔の設計のまま
手にして最初に感じるのはボディーのコンパクトさだ。ライバルのライカ「Q3」シリーズより一回り小柄で、フルサイズ機とは思えないサイズ感だ。
剛性が高く高級感がある造りだが、重量は500gを切る軽さ。そのおかげでグリップは小振りなのに長時間撮り歩いても苦にならなかった。
上面はフラットな形状で、シャッターボタンにはネジ穴が切ってありケーブルレリーズの利用も可能だ。ダイヤル類にも適度なクリック感がある。
ただ右肩のダイヤルは露出補正専用で他の機能を割り当てるとこはできない。最近のαシリーズではでカスタマイズ可能なコマンドダイヤルに変更されていることを考えると操作性の自由度という点では少し惜しい。
レンズ部の絞りリングは1/3EVクリックでクリックフリー機能は非搭載。またシャッター優先やプログラム露出では使わなくなる。フォーカスリングもピント合わせ専用で、露出補正ダイヤルと同様に他の機能を割り当てることはできない。
背面操作系はコンパクトフルサイズミラーレス「α7C」シリーズに近いレイアウトだ。驚いたのは前モデルでは上下チルトの可動式だった液晶画面が固定式に変更された点である。ライカ「Q」シリーズも初代は固定式だったが、「Q2」以降可動式に変更されたのとは逆の進化で、おそらくボディーサイズのスリム化を優先した結果だろうか。このあたりはユーザーによって好みが別れるだろう。
EVFも前モデルのポップアップ式ではなく通常の配置に変更。ポップアップ式はギミック的には楽しかったが、収納が面倒だったので、実用的はこちらのほうがいい。スペックは236万ドットで倍率約0.70倍と控えめだが、特に視認性に不満は感じなかった。
端子類はマイクにHDMIマイクロ、USB Type-Cのみとシンプル。端子カバーはスライド式でキッチリ閉る感じが気持ちいい。
バッテリーは一部のαシリーズと同じ「NP-FW50」を採用し、公称の撮影可能枚数は約300枚。実際に撮影しても満充電からRAW+JPEGで154カット308枚撮影した時点で電池切れと少し物足りなかった。また現状のαシリーズのバッテリーは大容量の「NP-FW100」が主流になっているので、αユーザーからすると併用の面から多少ボディーが大型化しても共通化してくれたほうがありがい。
撮像素子は現行フルサイズでは最高画素数の6100万画素が搭載されたが、レンズは従来機と同じ「ZEISSゾナーT* 35mm F2」のままである。2012年発売の2430万画素だった初代「RX1」から変わらない。最新の高解像度撮像素子と10年以上前のレンズとのマッチングは気になるところだ。
以降掲載する作例は以下の設定で撮影している。JPEGエクストラファイン・ホワイトバランスオート・Dレンジオプティマイザーオート・クリエイティブルックスタンダード。レンズ補正は記載の無い場合は初期設定(周辺光量補正と倍率色収差補正がオート、歪曲収差補正は切)のままだ。
レンズ性能は6100万画素にマッチ
歪曲収差補正は必要ないほど
まずは遠景の定点撮影で絞り値を変えて中心部と周辺部の描写を比較してみた。開放F2ではわずかに甘さもあるが、それでも十分な解像力がある。ひとつ絞ったF2.8ではキレが増しF11程度まではシャープ感が維持される。F16以降は回折の影響があるがそれもごくわずかだ。
周辺部もF2.8あたりまでは多少甘さはあるが、像の乱れはまったく感じられない。6100万画素の高解像度に負けない描写力は正直予想以上だった。
周辺光量低下は絞り開放からほとんど感じられず、試しに周辺光量補正を切にして撮影した写真と比較してみると、完全に補正されているのがわかる。おもしろいのはF16程度まで絞った状態でも補正の効果があること。周辺光量低下は通常ある程度絞ると解消されるが、おそらく設計の時点で周辺光量低下を補正に任せることでレンズの小型化を図ったのかもしれない(個人的予想です)。
なお歪曲収差補正は切になっているが、これもオートに設定して比較してみた。確かに歪みはあるがそれほど気になるほどではない。つまり周辺光量とは逆にレンズ設計の時点で歪曲を解消しているのだ。現在では歪曲収差も補正に頼るのが一般的なので、このあたりには時代の変化が感じられる。
ただ気を付けたいのは逆光時の撮影。今回の試用ではレンズフードを未装着だったせいもあるが、光源がレンズに写り込むシーンではハレーションが起きやすい。レンズフード(別売で2万900円)を装着し、それでも防げない場合は手で光源を遮るなどの工夫をするといいだろう。
高感度は他のソニー6100万画素機と同じ常用最高感度ISO3万2000、拡張感度で10万2400。画質も同様で1万2800程度までは実用上問題ない。
レンズ一体型デジカメでは定番のクロップ機能も搭載する。ベースの焦点距離35mmから倍率約1.5倍の50mm相当(約2900万画素6640×4432ドット)と2倍の70mm相当(約1500万画素4752×3168ドット)の画角で撮影することができる。もちろんRAWで撮影しておけば現像時にクロップの解除が可能だ。
レンズの最短撮影距離は通常時30cm(撮像面より)だが、マクロリングを切り換えることで20cmまで近接が可能。クロップ機能と組み合わせればかなりのクローズアップ撮影ができる。
なおライカ「Q」シリーズにも同様の機能があり、レンズが繰り出すぶん露出倍数がかかりF値が約1EV減少する(「Q3」の場合開放F1.7がF2.8になる)が、本機の場合F値に変化はなかった。
AFは不満はないが
手ブレ補正がないのは残念
その他撮ってみて感じた点を述べていくと、まずAFだが少しレンズ駆動音があるものの、動作は素早くテキパキとピントを合わせてくれる。小型ボディーなので背面液晶で測距点を選択する「タッチパットAF」の操作もしやすい。また街中のスナップでは測距点が追随する「トラッキングAF」が活躍しれくれた。
メカシャッターはレンズシャッターなので静寂で上品な動作音が心地いい。ただ開放F2では上限が1/2000秒に制限され、F4で1/3200秒、F5.6以降で1/4000秒が可能となる。シーンによっては露出オーバーになることもあるが、電子シャッターでは絞り値に関係なく1/8000秒まで使用可能なので、露出によって自動でメカから電子に切り換える機能を搭載してもらえるとありがたかった。
手ブレ補正はボディー、レンズともに搭載されず。高画画素機ということもあり遠景でもシャッタースピード1/30秒で怪しい。なおISO AUTOで撮影すると、低速限界の初期設定は1/125秒なので、このくらいのシャッタースピードが安心ということだろうか。
シャッタースピード1/30秒で撮影。ブレていない確率は20%くらい。なおメカシャッターと電子シャッターでも撮り比べてみたが、特に差は感じなかったので、レンズシャッターは低振動である。絞りF2・シャッタースピード1/30秒・ISO12500。

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