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ASCII Power Review 第293回

6100万画素=究極のフルサイズコンデジ「RX1RIII」実写レビュー

2025年08月26日 09時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 ソニーがフルサイズのレンズ一体型デジカメ「RX1RⅢ」を発売した。このところライカのフルサイズ「Q3」シリーズや、富士フイルムのAPS-C「X100Ⅵ」に中判サイズ「GFX100RF」。リコーからもAPS-C「GRⅣ」が発表されるなど、レンズ一体型デジカメが熱い。

 そのなかで実に9年以上振り(前モデル「RX1RⅡ」は2015年2月の発売)に登場する最新モデルということで期待せずにはいられない。ソニーから試用機を借用できたので実際の操作感や撮り心地をチェックしていこう。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

量販店価格は65万8900円。現在いずれの店舗でも品薄中。

フルサイズの高級感と軽快さが両立
レンズまわりは昔の設計のまま
 

 手にして最初に感じるのはボディーのコンパクトさだ。ライバルのライカ「Q3」シリーズより一回り小柄で、フルサイズ機とは思えないサイズ感だ。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

ボディーサイズは113.3×67.9×74.5mm。重量はメディアとバッテリー込みで498g。

 剛性が高く高級感がある造りだが、重量は500gを切る軽さ。そのおかげでグリップは小振りなのに長時間撮り歩いても苦にならなかった。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

上面から見るとボディーもスリム。グリップ部は右側前後のわずかな膨らみのみだが、この軽さならこれで十分だ。

 上面はフラットな形状で、シャッターボタンにはネジ穴が切ってありケーブルレリーズの利用も可能だ。ダイヤル類にも適度なクリック感がある。

 ただ右肩のダイヤルは露出補正専用で他の機能を割り当てるとこはできない。最近のαシリーズではでカスタマイズ可能なコマンドダイヤルに変更されていることを考えると操作性の自由度という点では少し惜しい。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

ネジ穴のシャッターボタンや露出補正ダイヤルなどアナログな操作感。モードダイヤルもシャッタースピードダイヤルに変更すればと思ってしまう。

 レンズ部の絞りリングは1/3EVクリックでクリックフリー機能は非搭載。またシャッター優先やプログラム露出では使わなくなる。フォーカスリングもピント合わせ専用で、露出補正ダイヤルと同様に他の機能を割り当てることはできない。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

レンズのリングは先端がフォーカスング、その後ろがマクロ切り換えリング、一番手前に絞りリングの順で並ぶ。

 背面操作系はコンパクトフルサイズミラーレス「α7C」シリーズに近いレイアウトだ。驚いたのは前モデルでは上下チルトの可動式だった液晶画面が固定式に変更された点である。ライカ「Q」シリーズも初代は固定式だったが、「Q2」以降可動式に変更されたのとは逆の進化で、おそらくボディーサイズのスリム化を優先した結果だろうか。このあたりはユーザーによって好みが別れるだろう。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

背面操作系は少し窮屈だが、ボタン類の突起が微妙に異なる工夫がなされている。液晶が固定式になり、ポップアップ式EVFが廃止されたのが前モデルからの大きな変更点だ。

 EVFも前モデルのポップアップ式ではなく通常の配置に変更。ポップアップ式はギミック的には楽しかったが、収納が面倒だったので、実用的はこちらのほうがいい。スペックは236万ドットで倍率約0.70倍と控えめだが、特に視認性に不満は感じなかった。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

EVFの接眼部は小さめ、視度補正ダイヤルは側面の少し離れた場所に。小型化のための苦労だろうか。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

アイピースも付属するが、サイズ優先ならあえて外して使うのもあり。

 端子類はマイクにHDMIマイクロ、USB Type-Cのみとシンプル。端子カバーはスライド式でキッチリ閉る感じが気持ちいい。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

側面の端子類。USB Type-Cは3.2でPDでの充電給電にも対応。

 バッテリーは一部のαシリーズと同じ「NP-FW50」を採用し、公称の撮影可能枚数は約300枚。実際に撮影しても満充電からRAW+JPEGで154カット308枚撮影した時点で電池切れと少し物足りなかった。また現状のαシリーズのバッテリーは大容量の「NP-FW100」が主流になっているので、αユーザーからすると併用の面から多少ボディーが大型化しても共通化してくれたほうがありがい。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

メディアはUHS-Ⅱ対応のSDで、底面のバッテリーと同室。

 撮像素子は現行フルサイズでは最高画素数の6100万画素が搭載されたが、レンズは従来機と同じ「ZEISSゾナーT* 35mm F2」のままである。2012年発売の2430万画素だった初代「RX1」から変わらない。最新の高解像度撮像素子と10年以上前のレンズとのマッチングは気になるところだ。

 以降掲載する作例は以下の設定で撮影している。JPEGエクストラファイン・ホワイトバランスオート・Dレンジオプティマイザーオート・クリエイティブルックスタンダード。レンズ補正は記載の無い場合は初期設定(周辺光量補正と倍率色収差補正がオート、歪曲収差補正は切)のままだ。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

初期設定のレンズ補正画面。

レンズ性能は6100万画素にマッチ
歪曲収差補正は必要ないほど
 

 まずは遠景の定点撮影で絞り値を変えて中心部と周辺部の描写を比較してみた。開放F2ではわずかに甘さもあるが、それでも十分な解像力がある。ひとつ絞ったF2.8ではキレが増しF11程度まではシャープ感が維持される。F16以降は回折の影響があるがそれもごくわずかだ。

 周辺部もF2.8あたりまでは多少甘さはあるが、像の乱れはまったく感じられない。6100万画素の高解像度に負けない描写力は正直予想以上だった。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

上記の写真赤枠の中心部と周辺部を拡大して比較。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

中心部の拡大

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

周辺部の拡大

 周辺光量低下は絞り開放からほとんど感じられず、試しに周辺光量補正を切にして撮影した写真と比較してみると、完全に補正されているのがわかる。おもしろいのはF16程度まで絞った状態でも補正の効果があること。周辺光量低下は通常ある程度絞ると解消されるが、おそらく設計の時点で周辺光量低下を補正に任せることでレンズの小型化を図ったのかもしれない(個人的予想です)。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

絞りF2で周辺光量補正オートと切を比較。かなりの光量低下があるが、しっかり補正されている。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

周辺光量補正切り

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

絞りF16で周辺光量補正オートと切を比較。こうして比べるとF16でも周辺光量が低下しているのがわかる。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

周辺光量補正切り

 なお歪曲収差補正は切になっているが、これもオートに設定して比較してみた。確かに歪みはあるがそれほど気になるほどではない。つまり周辺光量とは逆にレンズ設計の時点で歪曲を解消しているのだ。現在では歪曲収差も補正に頼るのが一般的なので、このあたりには時代の変化が感じられる。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

歪曲収差補正のオートと切を比較。歪みが目立ちやすい景色で試してみたが、それほど歪みはないように思う。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

歪曲収差補正切り

 ただ気を付けたいのは逆光時の撮影。今回の試用ではレンズフードを未装着だったせいもあるが、光源がレンズに写り込むシーンではハレーションが起きやすい。レンズフード(別売で2万900円)を装着し、それでも防げない場合は手で光源を遮るなどの工夫をするといいだろう。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

逆光でハレーションを起こしてしまった例

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

レンズに写り込む光源を手で遮って対処した。画面左上に少し手が写ってしまったのは御愛嬌。

 高感度は他のソニー6100万画素機と同じ常用最高感度ISO3万2000、拡張感度で10万2400。画質も同様で1万2800程度までは実用上問題ない。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO3200・6400・12800・32000・以下拡張感度51200・102400・高感度ノイズ低減標準。

 レンズ一体型デジカメでは定番のクロップ機能も搭載する。ベースの焦点距離35mmから倍率約1.5倍の50mm相当(約2900万画素6640×4432ドット)と2倍の70mm相当(約1500万画素4752×3168ドット)の画角で撮影することができる。もちろんRAWで撮影しておけば現像時にクロップの解除が可能だ。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

クロップ撮影の画角を比較。クロップ切・35mm・絞りF8・シャッタースピード1/160秒・ISO100。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

クロップ50mm相当。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

クロップ70mm相当。

 レンズの最短撮影距離は通常時30cm(撮像面より)だが、マクロリングを切り換えることで20cmまで近接が可能。クロップ機能と組み合わせればかなりのクローズアップ撮影ができる。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

マクロモードのほぼ最短撮影距離20cm近くで撮影。さらにクロップするとこでアップに。絞りF8・シャッタースピード1/160秒・ISO100。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

クロップ50mm相当。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

クロップ70mm相当。

 なおライカ「Q」シリーズにも同様の機能があり、レンズが繰り出すぶん露出倍数がかかりF値が約1EV減少する(「Q3」の場合開放F1.7がF2.8になる)が、本機の場合F値に変化はなかった。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

マクロリングを切り換えると少しレンズが繰り出すが、露出倍数はかからない。

AFは不満はないが
手ブレ補正がないのは残念
 

 その他撮ってみて感じた点を述べていくと、まずAFだが少しレンズ駆動音があるものの、動作は素早くテキパキとピントを合わせてくれる。小型ボディーなので背面液晶で測距点を選択する「タッチパットAF」の操作もしやすい。また街中のスナップでは測距点が追随する「トラッキングAF」が活躍しれくれた。

 メカシャッターはレンズシャッターなので静寂で上品な動作音が心地いい。ただ開放F2では上限が1/2000秒に制限され、F4で1/3200秒、F5.6以降で1/4000秒が可能となる。シーンによっては露出オーバーになることもあるが、電子シャッターでは絞り値に関係なく1/8000秒まで使用可能なので、露出によって自動でメカから電子に切り換える機能を搭載してもらえるとありがたかった。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

シャッター方式のメカと電子の切換はメニューから選択する。せめてボタン一つで即座に切換などの機能があればよかった。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

電子シャッターに設定していたのを忘れ動体歪みが発生した一枚。メカシャッターなら歪まなかっただけに悔やまれる。絞りF5.6・シャッタースピード1/320秒・ISO100。

 手ブレ補正はボディー、レンズともに搭載されず。高画画素機ということもあり遠景でもシャッタースピード1/30秒で怪しい。なおISO AUTOで撮影すると、低速限界の初期設定は1/125秒なので、このくらいのシャッタースピードが安心ということだろうか。

SONY「RX1RⅢ」実機レビュー

シャッタースピード1/30秒で撮影。ブレていない確率は20%くらい。なおメカシャッターと電子シャッターでも撮り比べてみたが、特に差は感じなかったので、レンズシャッターは低振動である。絞りF2・シャッタースピード1/30秒・ISO12500。

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