ASCII Power Review 第278回
レンズ描写に高感度特性に手ブレもテストしました
史上最強のコンデジ「GFX100RF」実写レビュー=「中判」センサー内蔵で小型軽量の実力は!?
2025年04月02日 00時01分更新
富士フイルムから発表されたレンズ一体型中判デジカメ「GFX100RF」は、フルサイズ(約36×24mm)より約1,7倍の面積がある43.8×32.9mmの大型撮像素子をコンパクトなボディーに収め、クロップによる「デジタルテレコンバーター」や「マルチアスペクト」など中判サイズを活かした機能も搭載の、カメラマニアが注目する一台だ。
今回発売前に富士フイルムから試用機を借りたので、実写して感じた印象をお伝えしていこう。
中判とは思えないボディサイズ
ダイヤルとレバー操作が楽しい
手にして最初に感じるは、やはり中判デジカメとしては驚異的に小さなボディーだろう。レンズ込みのサイズ感としては一般的なフルサイズ機よりもコンパクトに感じられる。
そして、上面のアナログダイヤル類など、ボディーデザインはAPS-Cレンズ一体型の「X100」シリーズに近い雰囲気だ。
シャッタースピードダイヤルの小窓にISO感度ダイヤルがあり、ダイヤル周りを引き上げて変更するレトロなスタイル。ただ頻繁にISO感度を変更するならコマンドダイヤルに機能を割り当てた方が使いやすかったりもする。
特徴的なのがシャッターボタン周りで、上段に電源スイッチ、中央がコマンドダイヤル、下段には「デジタルテレコンバーター」の切換レバーが一列に並びデザイン的にも美しい。
その横の「コントロールレバー」は、左右に倒したり、中央のボタンやで、各種機能を切り換えられる。ユニークなのはレバーの倒し方を一瞬か長倒しかで異なる機能を割り当てられること。つまりこのレバーだけで5種類もの機能の設定することができる。
背面は「X100」シリーズや「GFX」シリーズと同様に測距点移動をおこなうフォーカスレバーが十字キーを兼ねるシンプルな操作系だ。ただメニューや再生などのボタン配置は微妙に異なり、この辺りはメーカとしての統一感が欲しいところではある。
背面で目立つのが上部中央の「アスペクト変更ダイヤル」だ。一見すると真ん中がボタンになっていて押せそうに見えるが、ただのデザイン。前面の「デジタルテレコン切換レバー」もそうだが、いずれも専用のダイヤルになっていて、他の機能を割り当てることはできない。
「デジタルテレコンバーター」や「マルチアスペクト」を重視しないユーザーからすると、もう少し融通を効かせてくれてもいいような気もする。
ストロボ撮影は全速同調
プロを意識したデュアルスロット
EVFは576万ドットで倍率は0.84倍(35mm換算)とハイスペックだ。背面液晶は通常のGFXより横長の3:2比率の3.15型210万ドットで可動方式は上下チルト式。ただメニュー画面でタッチ操作不可なのは相変わらず。そろそろ改良を願いたいところである。
左側面には各種端子類、右側面はメディアスロットを備える。意外だったのはデュアルスロットが採用されたこと。小型軽量化には当然シングルスロットのほうが有利なはずだが、あえてデュアルを選択したのはバックアップ記録など安全性を重視するプロにも、仕事で使って欲しいというアピールに感じる。
バッテリーは「GFX」シリーズや「X-H2」、「X-T5」と共通の「NP-W235」だ。公称撮影可能枚数は約820枚とかなりのスタミナだが、実際に撮影してみるとRAW+JPEGで300カット600枚撮影した時点でバッテリー残量10%とわすかにスペックを下回る結果だった。
レンズは「35mmF4」でフルサイズ換算では28mm相当の広角レンズ。開放F値は控えめだが、そのぶん全長が短く、コンパクトである。
ただフードやフィルターを装着するには付属のアダプターリングが必要になる。それなら最初から一体化しておけばいいのではとツッコみなくなるのは自分だけだろうか?
メカシャッターは「X100」シリーズと同様にレンズシャッターが採用されている。フォーカルプレーンシャッターと比べ、静寂で振動も少ない上品な動作は撮っていて気持ちいい。
レンズシャッターなので、ストロボは1/4000秒まで同調が可能で、ハイスピードシンクロで活躍してくれる。汎用のクリップオンストロボやシンクロアダプター経由でモノブロック型ストロボを試してみたが、ストロボ側の閃光速度による光量低下はあるが、フォーカルプレーンシャッターのような幕切れはなく全速同調が確認できた。
さすが中判ならではの描写力
手ブレにはご用心
撮像素子はミラーレス機「GFX100Ⅱ/100SⅡ」と同じ1億200万画素と高精細。気になる画質だが、シャープ感より柔らかさが伝わり、それでいて細部はしっかり解像された素材重視の描写だ。そして、明暗差があるシーンでは階調の豊かさを感じられる。開放F4と特段明るいわけではないが、距離感によってはボケが味わえるのも中判デジカメならではの楽しさだ。
遠景で絞り値による描写の違いもチェックしてみた。周辺光量低下は開放F4では少し残るが、F5.6まで絞るとフラットになる。歪曲も厳密にみると少し残していることから、過度な補正をしない設定のようだ。RAW画像をAdobeCameraRawで開き、レンズ補正無しの状態にしてみると光量低下と歪みともに素直なので、気になるなら現像時に補正するといいだろう。
開放F4と一段絞ったF5.6の周辺光量の低下具合を比較。
☆作例はフィルムシミュレーションがスタンダードでJPEGのSUPER FINE、ホワイトバランスオート、その他カメラの初期設定で撮影しています
☆作例はクリックすると実物大表示になります
解像感は中心部では絞り開放F4からF16まで維持され、最小絞りF22でも回折現象の影響は少ない。周辺部は開放F4で像の甘さやF16以上では回折現象の影響があるが、それもごくわずか。レンズ一体型だけあって、非常に優秀な描写だ。
ゴーストが発生するような逆光でも、ハレーションはおこしにくく、最短撮影距離はレンズ前から約20cmまで近寄れる。
高感度の常用最高はISO1万2800と低めだが、拡張で10万2400まで設定できる。感度別でみると6400を超えたあたりから解像感低下はみられるものの、個人的には拡張の2万5600までは許容できる。
手ブレ補正は搭載されず、油断するとブレを量産する。ただ振動の少ないレンズシャッターのおかげか、遠景なら1/60秒なら割と安全圏。しっかり構え慎重に撮影すれば1/30秒でもギリ行けるといった感じだ。
注目の機能としては「デジタルテレコンバーター」と「マルチアスペクト」がある。いずれも画像をクロップして記録される。
「デジタルテレコンバーター」は35mm(クロップ無)から45mm・63mm・80mmの画角で撮影することができる。
35mm(換算28mm):11648×8736ドット(4:3時)=1憶176万画素、素子範囲43.8×32.9mm
45mm(換算36mm):9056×6792ドット=6151万画素、34×25.6mm
63mm(換算50mm):6448×4840ドット=3121万画素、24×18mm
80mm(換算63mm):5120×3840ドット=1966万画素、19×14.5mm
「マルチアスペクト」は4:3、3:2、16:9、65:24、17:6、3:4、1:1、7:6、5:4の9種類の比率が選べる。実はこれらは過去に存在したカメラやフィルムのフォーマットが再現されたもの。何故こんなに多くのアスペクト比が?と思ってしまった自分は、カメラ好きを名乗る資格はないかもしれない。
「デジタルテレコンバーター」と「マルチアスペクト」は併用することも可能。またクロップはJPEG画像にのみ適用されるので、RAW画像を同時記録しておけば、現像時に元の画角に戻すこともできる。
また液晶やEVFに表示する際に、全画面以外に白枠や半透明など切り換えることができる「サラウンドビュー」機能を搭載。往年のレンジファインダー的な見え方はマニア心をくすぐる。
中判の威力を持ち歩けるカメラ
レンズも考えるとお買い得なのだ

この連載の記事
- 第299回 1kg切りなのにバッテリーで30時間超えのAIノートPC「VersaPro UltraLite タイプVY」実機レビュー
- 第298回 6万円台で速度もハプティックペンも気持ちいい=お買得の最新Androidタブレット「Lenovo Yoga Tab」実機レビュー
- 第297回 15型AMOLEDで厚み5mmは最強のゲーミングAndroidマシンだ!!=「Galaxy Tab S11 Ultra」実機レビュー
- 第296回 最強化した1憶画素の超絶ミラーレスカメラ=ハッセルブラッド「X2D II 100C」実写レビュー
- 第295回 本日発売!! 世界初の超広角10倍ズームSigma「20-200mm」実写レビュー=レンズ前2cmまで寄れた!!
- 第294回 RTX50に4KOLED搭載でゲームもお仕事も安心の最強16型ノートPCだ=「Dell 16 Premium」実機レビュー
- 第293回 6100万画素=究極のフルサイズコンデジ「RX1RIII」実写レビュー
- 第292回 次世代のXPSは未来デザインでやはり爆速だった=「Dell 14 Premium」実機レビュー
- 第291回 2億画素カメラを搭載しながら極薄化も実現した2つ折りスマホの完成形「Galaxy Z Fold7」実機レビュー
- 第290回 PCもスマホもゲーム機も繋ぐだけで眼前に巨大画面:ARグラス最上位モデル「Xreal One Pro」実機レビュー
- この連載の一覧へ

























