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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第222回

禁止広がる、TikTokの危険度

2023年03月13日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 動画投稿アプリTikTokの利用を禁止する動きが広がっている。

 ロイターの報道によれば、米連邦捜査局(FBI)の長官が2023年3月8日、米議会の公聴会で、中国政府はTikTokを使って、アメリカのユーザーデータをコントロールすることが可能だと述べた。

 この動きに先立ち、米連邦議会下院の外交委員会は3月1日に、TikTokの利用を大統領の権限で禁止できる法案を可決している。

 さらに、米国、欧州などの政府はすでに職員に対し、公用のスマートフォンにTikTokのインストールを禁止する措置を打ち出している。こうした動きに同調したかどうかは不明だが、日本政府も、機密情報を扱う公用スマホでのTikTokを含むSNSの利用を禁じている。

 日常的にTikTokを閲覧したり、投稿したりしている人たちにとって、TikTokはどれほどの脅威となりえるのだろうか。

TikTokは、8億3000万人が使っている

 まず、あらためてTikTokについておさらいしておきたい。

 筆者としても、原稿を書く際の必要からインストールして使ってみたことはあるが、ほとんどなじみがない。

 2016年にサービスが始まったTikTokは、数秒~1分程度の短い動画を投稿し、共有できるSNSで、中国のバイトダンス社が運営している。

 さまざまな統計を公開しているSTATISTAの推計によれば、2023年時点のTikTokユーザー数は約8億3430万人にのぼる。

 国別の統計では、日本には2023年1月の時点で2070万人のユーザーがいる。

 若い世代に圧倒的な人気を誇り、10歳~29歳のユーザーが、ユーザー全体の5割程度を占めている。

 世界的には、米国で最も高い人気を得ており、1月の時点で約1億1325万人のユーザーがいる。ただし、こうした国別の統計には中国の数字が出ていない。中国のインターネット規制「グレート・ファイアーウォール」が影響しているのだろう。

 統計から言えることは、TikTokは世界の中でも米国で人気がある中国製アプリということだ。

 TikTokに米政府が神経を尖らせる要因はまず、この点にあるのではないか。

TikTokはなんでも知っている

 安全をテーマとする米国の「safewise」は3月1日、「TikTokは安全か」というタイトルの記事を公開している。

 この記事は以下のように、TikTokの4つの問題点を指摘する。

●詐欺が多発している
●あなたの情報は、あなただけのものではない
●若いTikTokユーザーは脆弱
●TikTokは心の健康によくない

 やはり気になるのは、2番目の情報だろう。他のSNSと同様に、TikTokは膨大な個人情報を収集・蓄積している。

 どんな情報を収集しているかは、プライバシーポリシーに書いてある。日本語版のプライバシーポリシーによれば、TikTokは主に、次のような情報を集めている。

●ユーザー名、パスワード、生年月日、Eメールアドレス
●プロフィール動画
●SNS上に公開した動画
●身体的特徴、声の特性
●動画に含まれている周囲の風景
●閲覧した動画や広告
●収集したデータから関心、性別、年齢等の事項を推測
●位置情報

 TikTokはFacebookと連携しているため、TikTokを利用しているFacebook上の「友だち」の情報は、TikTokも知っている。

 さらに、こうした情報は「サービスを提供するために必要な期間」保有するとしている。法律で禁じられない限り、ずっと保有するつもりだと読み替えていいだろう。

 こうした顧客情報は、シンガポールと米国にあるサーバーに保存しているという。

 公開されている情報から言えるのは、TikTokが、中国国外にいる8億3000万人について、とても多くの情報を把握しているということだ。

TikTokは「安全保障上の脅威」

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